捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第102話

 ラブライブ最終予選から数日後……。

 

「八幡く~ん!」

「……おう」

 

 穂乃果が小走りで駆け寄ってきて……こける。

 俺は慌てて受け止め、その華奢な身体を支えた。

 

「あはは……ごめぇ~ん……」

「ったく、気をつけろっての」

「実は抱きつかれて嬉しかったくせに~」

「アホか……それより……」

 

 まあ、否定しきれないのは事実なのだが。実際彼女からふわりと漂う甘い香りが、今一番心に安らぎを与えてくれるのは間違いないわけで……。

 俺は照れ隠しに、今日もしっかりセットされたほのまげをいじりながら、彼女に言うべき言葉を改めて口にした。

 

「……決勝進出おめでとう」

「うんっ、ありがと!」

「それと……きょ、今日の服……似合ってる」

「ヴぇえええ!?」

「おいっ、いきなりキャラ変すんな。何がおかしいんだよ……」

「だ、だって……八幡君が自然に着てる服を褒めてくれるなんて……!」

「いや、前も褒めただろうが。何なら髪型だって褒めるっての」

「えっ?」

「あー、今日も……」

「…………」

「……いいな。その……ほのまげ」

「全然褒められた気がしないよっ!」

「そうか?」

「そうだよっ」

「と、とりあえず、そろそろ行くか」

「あっ、また誤魔化した!待ってよ~!」

 

 彼女は思いきり左腕にしがみついてきた。その際、柔らかな感触が押しつけられ、落ち着かない気分になる。だって男の子なんだもん!

 すると、彼女は頬を赤らめながら、またにこりと笑った。

 

「今日はこうでしょ?」

「……あ、ああ」

 

 日に日に見慣れていくはずのこの笑顔も、反則さは相変わらずで、抗うことなどできるはずもなかった。

 

 *******

 

「わ~、クリスマスにデスティニーランドに来るの初めてだよ~!あっ、パンさん!」

「お前、パンさん好きだったのか」

「うんっ、お母さんも好きだよ」

 

 雪ノ下、意外なところに同士はいたぞ……。

 というわけで、俺と穂乃果はクリスマスのデスティニーランドに行くという中々のチャレンジを行っている。いや、チャレンジは俺にとっては、だが。

 ちなみに、家デートの案はあっさり廃案となりました。

 

「わぁ、イルミネーションもクリスマスっぽくなってるよ♪」

「……おぉ」

 

 穂乃果の声につられ、辺りを見回すと、思わず感嘆の声が漏れた。

 色とりどりのまばゆい灯りが、幻想的な世界観を演出し、誰もがそれに見とれている。生まれて初めて見るクリスマスの光景が、そこにはあった。

 歩きながらその光景の一部に加わると、隣を歩く彼女の瞳は、より一層輝いた。

 

「綺麗……」

「ああ……」

 

 俺は途中から、その横顔しか見ていなかった。

 それはあまりにも綺麗すぎて……。

 油断していたら、呼吸するのも忘れてしまいそうなくらい、胸の奥を締めつけた。


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