ラブライブ最終予選から数日後……。
「八幡く~ん!」
「……おう」
穂乃果が小走りで駆け寄ってきて……こける。
俺は慌てて受け止め、その華奢な身体を支えた。
「あはは……ごめぇ~ん……」
「ったく、気をつけろっての」
「実は抱きつかれて嬉しかったくせに~」
「アホか……それより……」
まあ、否定しきれないのは事実なのだが。実際彼女からふわりと漂う甘い香りが、今一番心に安らぎを与えてくれるのは間違いないわけで……。
俺は照れ隠しに、今日もしっかりセットされたほのまげをいじりながら、彼女に言うべき言葉を改めて口にした。
「……決勝進出おめでとう」
「うんっ、ありがと!」
「それと……きょ、今日の服……似合ってる」
「ヴぇえええ!?」
「おいっ、いきなりキャラ変すんな。何がおかしいんだよ……」
「だ、だって……八幡君が自然に着てる服を褒めてくれるなんて……!」
「いや、前も褒めただろうが。何なら髪型だって褒めるっての」
「えっ?」
「あー、今日も……」
「…………」
「……いいな。その……ほのまげ」
「全然褒められた気がしないよっ!」
「そうか?」
「そうだよっ」
「と、とりあえず、そろそろ行くか」
「あっ、また誤魔化した!待ってよ~!」
彼女は思いきり左腕にしがみついてきた。その際、柔らかな感触が押しつけられ、落ち着かない気分になる。だって男の子なんだもん!
すると、彼女は頬を赤らめながら、またにこりと笑った。
「今日はこうでしょ?」
「……あ、ああ」
日に日に見慣れていくはずのこの笑顔も、反則さは相変わらずで、抗うことなどできるはずもなかった。
*******
「わ~、クリスマスにデスティニーランドに来るの初めてだよ~!あっ、パンさん!」
「お前、パンさん好きだったのか」
「うんっ、お母さんも好きだよ」
雪ノ下、意外なところに同士はいたぞ……。
というわけで、俺と穂乃果はクリスマスのデスティニーランドに行くという中々のチャレンジを行っている。いや、チャレンジは俺にとっては、だが。
ちなみに、家デートの案はあっさり廃案となりました。
「わぁ、イルミネーションもクリスマスっぽくなってるよ♪」
「……おぉ」
穂乃果の声につられ、辺りを見回すと、思わず感嘆の声が漏れた。
色とりどりのまばゆい灯りが、幻想的な世界観を演出し、誰もがそれに見とれている。生まれて初めて見るクリスマスの光景が、そこにはあった。
歩きながらその光景の一部に加わると、隣を歩く彼女の瞳は、より一層輝いた。
「綺麗……」
「ああ……」
俺は途中から、その横顔しか見ていなかった。
それはあまりにも綺麗すぎて……。
油断していたら、呼吸するのも忘れてしまいそうなくらい、胸の奥を締めつけた。