それでは今回もよろしくお願いします。
「…………」
「お姉ちゃん、どうしたの?さっきからじぃっと掌見てるけど」
「え?そうかな……」
雪穂に言われてはっと気づく。知らない内にまた見てたみたいだ。
そんな私の様子を、雪穂はニヤニヤ笑っている。
「な、何?どうしたの?」
「いや、お姉ちゃんが珍しく乙女な表情をしてたから」
「む~、どういう意味~?」
失礼だよ!私だって青春真っ盛りの女子高生なのに!
すると雪穂は、悪戯っぽい笑顔のまま、こちらにすり寄ってきた。
「だってさ~、お姉ちゃんだよ?高校2年にもなって、浮いた話の一つもないんだよ?乙女な表情なんて、ほとんど見れないよ?」
「うっ……それは……」
何も言い返せない……。
確かにその通りなんだよね……。
興味がないとかじゃなく、興味を持つタイミングがなかったと言いますか……。
それに今はスクールアイドル活動が忙しいし。
「それで、手がどうかしたの?」
「うん……男の子と握手したんだけどね」
「はあ!?」
雪穂が物凄く驚いた声を上げる。
そして、私の肩をガクガク揺さぶってきた。
「う、嘘でしょ!?お姉ちゃんに彼氏!?男装した海未さんやことりさんじゃないよね!?」
「私ってどんなイメージなの?」
少し見てみたいけど、そんなことはしないよ……。
「それに雪穂……今、彼氏って……」
「お父さん!?どうしたの、いきなり!試作品を3つも同時に食べて……!」
「「…………」」
お父さん、そんなにお腹が空いてたのかなぁ?
「と、とりあえず……お姉ちゃんの部屋に行くよ」
「え、何で?」
「何でもいいから行くの!……お父さん、気をしっかり保ってね」
雪穂は何故か小声でお父さんを励ましながら、私の手を引いた。
*******
「なんだ~。最近知り合っただけの人か~。もう、驚かさないでよ!」
「雪穂が勝手に勘違いしたじゃん!」
雪穂は比企谷君を私の彼氏だと勘違いしていたみたいだ。最近出会ったばかりなのに。
しかし、雪穂は何故かうんうんと頷いている。
「でも意外だなぁ。お姉ちゃんが男の人ライブに誘うなんて」
「そうかなぁ」
「そうだよ。だってお姉ちゃん、中学時代のクラスメイトとか、連絡取ってなさそうだもん」
「あれ、そういえば連絡先知らない!」
「まあ、あんなに仲良し3人組でつるんでればね……海未さんが目を光らせていたのもあるけど」
「ん?何か言った?」
「いや、何も。それより、どんな人?」
「ん~……目つきがすっごく悪いの!」
「そ、そうなんだ……」
「あとは……結構冷たいんだよ!この前もお友達をほったらかして一人でどっか行こうとしてたし!」
「……へえ」
「でもね?ライブにはわざわざ千葉から来てくれたんだよ!」
「…………」
「あとは……甘い物が好きで、目つきが悪いんだよ!」
「目つき2回目だよ。どんだけ悪いの……」
「こーんな感じ!」
「うん、全然伝わんない……」
その後、呆れた雪穂は自分の部屋に戻り、私はすぐに寝ようとした。
でも、何故かしばらく寝つけなかった。
読んでくれた方々、ありがとうございます!