捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第11話

「…………」

「お姉ちゃん、どうしたの?さっきからじぃっと掌見てるけど」

「え?そうかな……」

 

 雪穂に言われてはっと気づく。知らない内にまた見てたみたいだ。

 そんな私の様子を、雪穂はニヤニヤ笑っている。

 

「な、何?どうしたの?」

「いや、お姉ちゃんが珍しく乙女な表情をしてたから」

「む~、どういう意味~?」

 

 失礼だよ!私だって青春真っ盛りの女子高生なのに!

 すると雪穂は、悪戯っぽい笑顔のまま、こちらにすり寄ってきた。

 

「だってさ~、お姉ちゃんだよ?高校2年にもなって、浮いた話の一つもないんだよ?乙女な表情なんて、ほとんど見れないよ?」

「うっ……それは……」

 

 何も言い返せない……。

 確かにその通りなんだよね……。

 興味がないとかじゃなく、興味を持つタイミングがなかったと言いますか……。

 それに今はスクールアイドル活動が忙しいし。

 

「それで、手がどうかしたの?」

「うん……男の子と握手したんだけどね」

「はあ!?」

 

 雪穂が物凄く驚いた声を上げる。

 そして、私の肩をガクガク揺さぶってきた。

 

「う、嘘でしょ!?お姉ちゃんに彼氏!?男装した海未さんやことりさんじゃないよね!?」

「私ってどんなイメージなの?」

 

 少し見てみたいけど、そんなことはしないよ……。

 

「それに雪穂……今、彼氏って……」

「お父さん!?どうしたの、いきなり!試作品を3つも同時に食べて……!」

「「…………」」

 

 お父さん、そんなにお腹が空いてたのかなぁ?

 

「と、とりあえず……お姉ちゃんの部屋に行くよ」

「え、何で?」

「何でもいいから行くの!……お父さん、気をしっかり保ってね」

 

 雪穂は何故か小声でお父さんを励ましながら、私の手を引いた。

 

 *******

 

「なんだ~。最近知り合っただけの人か~。もう、驚かさないでよ!」

「雪穂が勝手に勘違いしたじゃん!」

 

 雪穂は比企谷君を私の彼氏だと勘違いしていたみたいだ。最近出会ったばかりなのに。

 しかし、雪穂は何故かうんうんと頷いている。

 

「でも意外だなぁ。お姉ちゃんが男の人ライブに誘うなんて」

「そうかなぁ」

「そうだよ。だってお姉ちゃん、中学時代のクラスメイトとか、連絡取ってなさそうだもん」

「あれ、そういえば連絡先知らない!」

「まあ、あんなに仲良し3人組でつるんでればね……海未さんが目を光らせていたのもあるけど」

「ん?何か言った?」

「いや、何も。それより、どんな人?」

「ん~……目つきがすっごく悪いの!」

「そ、そうなんだ……」

「あとは……結構冷たいんだよ!この前もお友達をほったらかして一人でどっか行こうとしてたし!」

「……へえ」

「でもね?ライブにはわざわざ千葉から来てくれたんだよ!」

「…………」

「あとは……甘い物が好きで、目つきが悪いんだよ!」

「目つき2回目だよ。どんだけ悪いの……」

「こーんな感じ!」

「うん、全然伝わんない……」

 

 その後、呆れた雪穂は自分の部屋に戻り、私はすぐに寝ようとした。

 でも、何故かしばらく寝つけなかった。




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