捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第114話

「お兄ちゃん!着いたよ!アメリカだよ、アメリカ!」

「おお……」

 

 思わず声が漏れてしまう。まだ空港を出たばかりだが、それでも今自分が見ている景色は、日本のそれとは明らかに違った。その事がこれから起こる何かへの期待と不安を微かに膨らませていた。

 

「ほら、アンタ達さっさと行くわよー」

 

 母ちゃんから呼ばれ、タクシーに乗り込む。小町調べによると、なんとホテルは一緒らしい。もうここまで来たら何も言うまい。

 まあ、とりあえず今からホテルに向かうわけだが、ここに来て穂乃果が何かやらかすことはないだろう。

 例えば、目的地の名前を間違えてメンバーに伝えたりとか……。

 

 *******

 

「海未さん達、無事にたどり着いてよかったね」

「あ、ああ……本当に」

 

 まさか本当にいきなりやらかすとは思わなかった。そして、妄想が現実になるとは思わなかった。

 ホテル内に「今日という今日は許しません!」という怒号が響いた時は、さすがにこっちも焦った。もう仲直りしたみたいだけど。

 

「とりあえず解決したみたいだし、今日はゆっくり家族の時間を過ごそっか」

「……だな」

 

 普段なら絶対に家族四人で出かけたりはしないが、海外にいるせいか、妙に気持ちが開放的になってるのかもしれない。一人で出歩いたら迷子になっちゃうし!

 まあ、たまには荷物持ちでもして、親孝行でもしようと、俺は三人に続いてのろのろと部屋を出た。

 

 *******

 

 ニューヨーク……すごいところだなぁ。こんなところでライブができるなんて……。

 私は携帯のカメラに、また一つ風景を収めた。日本に帰ったら、八幡君にたくさんニューヨークの事を話すために。

 

「まだ気づいてないみたいやね」

「あの変装で気づかないというのもそれはそれで鈍いですね」

「あはは……きっとライブに集中してるんだよ。きっと」

「あっ!あっちのスイーツ美味しそう!行くよ、花陽ちゃん!」

「は、はいっ!」

「あっ、こら!穂乃果!花陽!ニューヨークに来てまでダイエットをするつもりですか!待ちなさい!」

「大丈夫だよ~。ちょっとくらいなら」

「かよちん、ストップにゃ!」

「ひ、一つだけ……」

 

 *******

 

「ふぅ……」

 

 ベンチに座り、ようやく足を休ませる。あっち行ったり、こっち行ったり、あれ食べたり、これ買ったりで、初日からやたら飛ばしてるが、皆元気すぎだろ。トラベラーズハイここに極まれりだ。

 多分ここでは会わないだろうと、眼鏡と帽子を外す。しかし、案外気づかれないもので、すぐ隣を通った時に気づかれなかった時は、少し寂しかったんだが……。

 すると、隣から何故か視線を感じたので目を向ける。

 そこには、いつの間にか銀髪の少女がいて、じっとこちらを見ていた。

 

 

 

 


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