「海だ~~~~~!!」
「私ならここにいますが?」
「違うよっ!海未ちゃんじゃなくて!」
「あ、ああ、そうですね……しかし、よかったのですか?穂乃果、朝食を抜いてきて」
「うん!だってダイエットしなきゃ!」
「PV撮影は今日するのですが……」
「あれ?」
「はあ……それにしても、一体どういう風の吹き回しですか?あの穂乃果がダイエットなんて……」
「ど、どういう意味?」
「だって、三食の食事と練習後のおやつを何よりの楽しみとしている穂乃果が……」
「ちょっと待ってよ海未ちゃん!それじゃあ私がただの食いしん坊みたいじゃん!私、女の子だよ!スクールアイドルだよ!胸だって海未ちゃんよりあるし!」
「穂乃果、その発言は許されませんよ」
「許されないにゃ」
「許されないにこ」
「まあまあ、皆。落ち着かな」
「そうよ。早く撮影始めるわよ」
「皆、仲良くしなきゃだめだよ!」
「「「くっ……」」」
「はあ……本当、世話が焼ける人達ね」
「あはは……」
「ところで穂乃果、今からなるべく可愛くセクシーなポーズをとるから、あなたの携帯のカメラで撮影してくれないかしら?」
「え?いいけど……何で?」
「そのまま比企谷君に送って欲しいのよ」
「何で!?」
「何でって云われても、夏は……少し大胆になっちゃうのよ」
「そっかぁ……ってわかんないよ!?」
「夏は……少し大胆になっちゃうチカ」
「語尾変えただけじゃん!絵里ちゃん、どうしちゃったの!?」
*******
PV撮影は何事もなく終わり、その出来栄えには皆笑顔を浮かべていた。うん、お腹出てなかったから大丈夫だよね。
沢山の応援してくれてる人に……雪穂やヒデコやフミコやミカや、比企谷君達に見せても、大丈夫だよね……サイトにアップするのは明日だけど、もう一回確認しよっと。
自分の映っている場面をチェックしていると、肩をぽんぽん叩かれた。
「穂乃果ちゃん。今から真姫ちゃんと一緒に買い物に行くけど、穂乃果ちゃんも一緒に行かへん?」
「え?あ……」
「そんなに確認しなくても、可愛く撮れてたから大丈夫。それに、少しくらい気晴らしした方がええよ。カードもそう言うとる」
希ちゃんの穏やかな笑顔を見ていると、本当にそんな気がしてきた。
「うん、わかった!」
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「え~と、これでいいかな?」
「穂乃果?何さり気なくお菓子入れてるのよ……」
「うっ……」
「穂乃果ちゃん?」
「わ、わかったよ~。戻してくるから!」
「まったく……さっきまでダイエットとか言ってたくせに」
「あはは……撮影が終わった~と思ったら緊張が解けちゃって」
やっぱり二人共、しっかり自己管理してるんだなぁ。私も見習わないと……。
お菓子は元の場所に戻すことにした。こういうのを清水の屋根から飛び降りる、あれ?崖かな?まあいっか。とりあえずそういうことだよね!うん!
そっとお菓子を戻そうとすると、視界の端に見覚えのある人を発見した。
慌てて顔を向けると……間違いない!
「比企谷く~ん!」
彼は肩を跳ねさせ、慌ててこっちを振り向いた。