捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第15話

「あら?そっちの男の子は穂乃果ちゃんの知り合い?」

「うん、比企谷八幡君っていう変わった名前の男の子。μ'sの大ファンなんだよ!」

 

 大ファンってほどではないのだが……。

 突然の美女二人の登場に、思春期真っ盛りの男子らしく困惑していると、東條さんの方がこちらに一歩踏み込み、親しげな笑顔を見せた。

 

「ほな、挨拶しとかんとね♪もう、知ってるかもしれんけど、ウチは東條希。よろしく、比企谷君」

「……どうも」

「ほら、真姫ちゃんも♪」

「え?私は……」

「真姫ちゃんの曲のファンでもあるんよ。ほら、照れてないで」

「ちょっ、引っ張らないでよ!あ、えーっと、その……応援ありがと」

「ど、どうも……」

 

 東條さんにより、無理矢理俺の前に引きずり出された西木野真姫は、照れているのか、澄ましているのかわからないような仕草で……顔が赤いから照れているのか?いや、危うく勘違いしちゃうとこだったぜ。

 東條さんは、また一歩こちらに踏み込んできた。近い近い近い近い!

 

「可愛い反応やなぁ♪ちなみに、推しメンとかおるん?」

「お、推しメン?」

「君は……エリチとか好きそうやね」

「え?ああ、何というか……」

 

 絢瀬さんは確かに美人だが、はっきり推しメンと断言するには「チカ」あれ、何だ、今の?

 

「もしかして、ウチらの誰か?」

「う゛ぇえええ!?」

「希ちゃん!?」

 

 いきなり何言い出すんだ、この人は……。

 悪戯っぽい目を向けてくる東條さん。

 チラチラとこちらを窺う西木野真姫。

 じぃ~~っとこちらを穴が空くぐらい、ていうか点穴を見切るくらいに見つめてくる高坂。

 三者三葉、もとい三者三様の視線に晒され、俺は最適解をすぐに導き出した。

 

「A-RISEの優木あんじゅ」

「「「…………」」」

 

 この時の三人の固まった表情を、俺はしばらく忘れることが出来なかった。

 

 *******

 

 その日の夜。

 

「もしもし」

「あ、比企谷君!今日は偶然だったね!」

「……まあな。最後、怖かったけどな」

「あれは比企谷君が悪いよ!せっかくμ'sの大ファンって紹介したのに!」

「その大ファンってのが盛りすぎなんだよ。ちょっと楽曲聴いて、動画に高評価してるだけじゃねえか」

「大ファンじゃん!優木あんじゅさんが美人なのはわかるけど、せめてあの三人から選んでよ!」

「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ……」

「ポイズン♪……じゃないよ!また誤魔化そうとしてる~!」

「お前、ノリの良さだけは無駄に振りきってるよな……」

「い、いきなり褒められると……なんか照れちゃうな」

「乙女チックなリアクションしてるところ、申し訳ないが褒めてない」

「むぅ~~……あ、う、海未ちゃん?片付けを手伝いなさい?わ、わかったから!比企谷君、それじゃ!」

 

 突然かかってきた電話は突然途切れて、あとは耳が疼くくらいの静寂がやってくるだけだった。

 ……そういや、水着姿見てねえ。いや、別にいいんだけどね。


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