「ねえ、穂乃果ちゃん?」
「どうしたの、希ちゃん?」
ストレッチをしていたら、希ちゃんが話しかけてきた。
その表情には悪戯っぽさが滲んでいて、少し緊張する。も、もしかして……ワシワシしようとしてるのかな?
警戒していると、希ちゃんは予想外の事を口にした。
「穂乃果ちゃんと比企谷君って、付き合ってるん?」
「え?違うけど……」
なぁんだ、そんなことか~。
別にそんなんじゃ……あれ?
「ど、どうしたの、いきなり?」
「ん~?何となく気になっただけ~」
希ちゃんがニヤニヤ笑いながら、ストレッチを続ける。
どうしたんだろう、一体?
私と比企谷君が……。
…………よくわかんないや。
「穂乃果、どうかしたのですか?」
「ねえ、海未ちゃん……あ、海未ちゃんもまだだったね。あはは、ごめんごめん」
「な、何なのですか一体?無性に苛立つ感覚がしたのですが」
「じゃあ、そろそろダンスレッスン始めよう!」
「あ、こら!待ちなさい、穂乃果!」
私は何故かいつもよりがむしゃらに体を動かした。
*******
「あ、もしもし比企谷君?」
「……悪い。今、ゲーム中だから後でな」
「え?……切れちゃった。比企谷君の薄情者~!」
せっかく電話してあげたのに~!
こっちが勝手にしてるだけだけど……。
そこで、雪穂がひょっこり顔を見せた。
「お姉ちゃん、うるさいよ……」
「あっ、雪穂。ごめ~ん、うるさかった?」
「ここ最近多いよ?その……比企谷さんって人と話してる時とか特に……」
「それは比企谷君がおかしな事ばかり言うからだもん!」
「……そ、そうなんだ。まあ、いいけど……ふふっ」
雪穂は何故か、希ちゃんみたいにニヤニヤしながら自分の部屋に戻っていった。
……どうしたんだろう。
*******
昨日の希ちゃんや雪穂の表情を思い出しながら、窓の外を眺めていると、ヒデコとフミコとミカがやって来た。
「おっす、穂乃果!顔暗いよ?」
「具合悪いの?」
「お腹空いてるとか?」
「え?ち、違うけど……」
お腹空いてるって……私が食いしん坊みたいじゃんか!
そこでヒデコが、「ははぁ~ん」と意味ありげに笑った。ま、まさか……。
「もしかして……恋?」
「ああ~、もう恋はいいよ~!」
やっぱり来た!!
もう、皆どうしたの!?そんなに気にすることなの!?
「「「え?」」」
「?」
あれ?3人共、何で固まってるの?
何で震え出すの?
「こ、恋はいいよって……」
「穂乃果ったら……いつの間に……」
「うんざりするほど恋してたなんて……!」
「え?え?」
「「「その話、詳しく!!」」」
「ええ~!?」
ものすごい表情で迫ってくる3人の誤解を解くのに、しばらく時間がかかっちゃった。
うぅ……比企谷君のせいだ……。