高坂に会いに行った翌日。朝になり、お礼のメールと今日から学校に行くという回復メールが来た。
『昨日はありがとう!今日から学校行きます!比企谷君もファイトだよ♪』
メールから伝わってくる彼女の前向きなエネルギーに、危うく消化不良を起こしそうになりながら、俺は柄にもなく屈伸運動をして家を出た……そこまではよかったのだ。
神様というのは悪戯好きなのか、ちょっとSっ気があるのか、悪い事を立て続けに引き起こしたりする。二度あった嫌な事に三度目を付け加えたり、泣きっ面に蜂を仕向けたりする。
体調を崩し、ラブライブ出場を逃した高坂にも……。
*******
次の日の夜、晩飯を食べ終え、後片付けを済ませ、自室に戻ると同時に、狙い澄ましたかのようにスマホが震えだした。
画面を見なくとも、誰からかは何となく予想がついた。まあ、そもそもの選択肢が少ないのだが……。
スマホを手に取ると、予想通りの名前が表示されていた。
「……おう」
「あ……えと……ひ、比企谷く……ん」
通話状態にすると、今度は予想外に暗く沈んだ声が微かに漏れてくる。
俺は反射的に問いかけた。
「……体調崩したのか?」
「違う、よ」
「じゃあ、一体……」
「…………」
風邪がぶり返したのかと思ったが、そうではないようだ。しかし、それで安堵できるような空気じゃなかった。
どう聞いたものか、頭の中で言葉を探している内に、彼女の方から再び口を開いた。
「ご、ごめん!やっぱり何でもない!あはは、じゃあね!おやすみっ」
「は?」
こちらが肩透かしを喰らうような言葉と共に、あっさりと通話は途切れた。
……何だったんだ、あいつ?つーか……
「……わかりやすい嘘吐くんじゃねえよ」
ここでこちらから折り返しても、間違いなく徒労に終わるだろう。不思議な確信があった。
どうしたものかとベッドに寝転がり、天井と睨めっこしている内に、結局そのまま眠りに落ちていった。
*******
「私……何やってるんだろ……」
ことりちゃんに酷いこと言って……皆を傷つけて……最低だ……その上、比企谷君なら優しい言葉をかけてくれるんじゃないかと期待していた。
……私のバカ、私のバカ……私の…………。
*******
次の日、由比ヶ浜に部活を休む旨を伝え、帰りのホームルームをすっぽかし、秋葉原へと向かった。電車の窓から見える風景は変わらないのに、やけにどんよりして見えた。
夕焼けが赤く染める街並みは、そのもの悲しさは、誰かの心に重なって見えた。