翌日、ラブライブの公式サイトに、μ'sの新しい動画が上がった。
三人で歌っていた歌を今度は九人で歌っている。そのことが、最初から応援していたわけじゃない俺にも、何故かじんときた。
カメラに向け、最高の笑顔を見せる高坂の目には、最早何の曇りも見えなかった。
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「もうっ!やっぱり比企谷君はイジワルだよ!」
「まだ言っているのですか?」
「あはは……」
私は海未ちゃんとことりちゃんに、比企谷君の事を話していた。昨日まではライブの事で頭がいっぱいだったから忘れてたけど、あのタイミングで優木あんじゅさん推しって言われたのに、まだ何ともいえない気持ちになっていた。ああ、もう!何なんだろう、この感じ……。
「個人の好みに意見しても仕方ないでしょう。A-RISEに追いつくため、まだまだスクールアイドルとして精進しなければならないということです」
「でも比企谷君、絶対に優木あんじゅさんの胸見てるんだよ?私や海未ちゃんの胸じゃ、小っちゃいって思ってるんだよ?」
「なっ!?し、失礼な!私はまだ成長期なだけです!……じゃなくて、今はそんな話ではないでしょう!?」
「あはは……」
またこうして三人で、お昼休みにのんびり話ができるのが嬉しい。もっとこの瞬間を大事にしなきゃ……。
ほんわかした気分になっていると、ヒデコ・フミコ・ミカの三人が笑顔でこっちに近づいてきた。
「いや~、すっかり仲良しさんに戻ったね~」
「うん。やっぱりこっちの方がホッとするね」
「だね~……それはそうと……穂乃果~、よかったね」
「え?何?」
「ほら、え~と……あの、目つき悪い人……名前なんだっけ?」
「比企谷君?」
「そうそう!穂乃果って全然男っ気ないと思ってたのに、意外だったな~。少しは進展してるの?」
「え?進展?」
何の話だろう?この前もこんなやりとりがあったような……。
「ほ、穂乃果!どういう事ですか!?比企谷君とはそのような関係だったのですか!?」
「そ、そうなの?穂乃果ちゃん……進展、してるの?」
二人からぐいぐい詰め寄られて、何の話か思い出した。
も、もう、違うって言ったのに!
「だ、だから!そんなのじゃないよ!比企谷君は私の大ファンなんだよ!」
私の言葉に、海未ちゃんとことりちゃんはポカンとした表情を、残りの三人は苦笑いした。
「大ファンって……自分で言いますか……」
「あはは……自分で言っちゃったね……」
「こりゃあ、長い道のりだね……」
「うん。しばらくは黙って見守ろっか」
「あ、でもでも!お礼はキチンとしたほうがいいんじゃない!?」
「あっ、うん。そうだよね」
比企谷君は別にいいって言ってたけど、わざわざ来てくれたんだもん。何かお礼したいなぁ……。
海未ちゃんとことりちゃんも、笑顔でうんうんと頷いている。さらに、ヒデコが私の隣に座り、いたずらっぽい笑顔で囁いてきた。
「でも、あんまり過激なのはダメよ?なんたって穂乃果は清純なスクールアイドルなんだから」
「そ、そんなことしないよ!」
想像もしてなかったよ!もう……でも、何かしたいな……うん!
よしっ、じゃあさっそく今日の放課後に……
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「……っくしっ!」
「わっ、びっくりしたぁ……ヒッキー、どしたの?風邪?」
「いや、なんか急に……」
「誰か噂してたりして」
「いや、噂されるほど知られてないし、記憶にも残ってないはずなんだが……」
「…………」