捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第33話

「ええっ!!!!!??比企谷君が見に来てくれるの!?」

「う、うん……」

 

 比企谷君や小町ちゃんをライブに誘った話をしたら、絵里ちゃんが物凄い勢いで詰め寄ってきた。ど、どうしたのかなぁ……?

 

「くっ、こうしてはいられないわ……!ことり!私の衣装を三割増しセクシーにしてもらえないかしら「エリチ」はい」

「絵里ちゃんがなんかおかしいにゃ……」

「う、うん……目が、怖い……」

 

 絵里ちゃん…………とっても気合いが入ってるんだねっ、さすが生徒会長!私も見習わなきゃ!

 私はことりちゃんの肩を掴んで、はっきり告げた。

 

「じゃあ、ことりちゃん!皆の衣装をセクシー三割増しで!」

「ええ~!?」

「穂乃果、何を言っているのですか!?私は着ませんよ、そんなの!」

「ふんっ、私も着ないわよ!清純派だもの!」

「誰もにこちゃんには期待してないわ」

「なぁんでよっ!」

 

 結局、衣装はそのままでやることになった。

 

「ふふふ……ライブチカ。絶対に視線を釘付けにするチカ」

「え、絵里ちゃん?」

「エリチ……」

「まあ何にせよ、穂乃果……ハラショーよ」

「う、うん……ハラショー……かな?」

 

 ぐっと親指を立てる絵里ちゃんに、苦笑いで返すと、こうしている間も、ライブの日が近づいてきてるという実感が湧いた。絶対にいいものにしなきゃ!

 

「よ~し……皆っ、ファイトだよ!」

 

 *******

 

 ライブ当日、青空を白い雲がふわふわ泳ぎ、少しじめじめさした風が吹き抜ける。たまに雲が太陽にかかり、日差しを遮るので、昨日よりは過ごしやすそうだ。

 

「お兄ちゃん、戸塚さんにしか声かけなかったの?」

「他に声をかけられる奴がいなかったんだよ。てか、戸塚誘うのも結構緊張したんだが……人を誘うって難易度たけぇんだな……」

「……それ、なんか別の緊張なんじゃないの?」

 

 小町のジト目を無視し、行き交う人の流れをぼんやり眺めていると、見間違えるはずのない天使・戸塚の姿を発見した。

 

「八幡!」

「おう」

「あっ、戸塚さん!お久しぶりです~」

「うん。久しぶり、小町ちゃん」

「けぷこん、けぷこん」

 

 戸塚は急いで来たのか、額にはじんわり汗が滲んでいた。お、俺に会うために、そこまで……今日は我が人生最良の日なのか……。

 

「は、八幡?どうして泣いてるの?」

「ああ、気にしないでください。兄なんで」

「まあ、気にすんな。ぼっちあるあるだから」

 

 嘘だけど。

 

「けぷこん、けぷこん」

「じゃあ、そろそろ行くか」

「な、なあ、我のことガチで無視すんの止めてくんない?いや、本当に傷つくんだけど……」

「……幻じゃなかったのか」

 

 さっきから、ただの夏の幻だと思って無視していたのに……。

 

「あはは、本物の材木座君だよ。さっき偶然会ったから、声かけたんだ」

「……そっか、そりゃ運が悪かったな」

「照れるな八幡よ、スクールアイドルのライブで緊張してるかもしれんが、安心するがいい……我が来た」

「いや、むしろ不安しかないんだが……」

 

 こいつの痛々しい中二病のノリを、高坂以外のμ'sメンバーが受けとめてくれる可能性は極めて低い。恐らく「ダレカタスケテェ……」とかなるに違いない。極力他人のふりをしておこう。いや、今の時点で既に赤の他人だが……。

 

「あっ、お兄ちゃん!そろそろ電車来るよ!」

「ん?ああ、じゃ行くか」

 

 もう一度、青い空と白い雲を見上げ、そういえばμ'sの楽曲にも、夏を題材にした曲があったことを思い出す。

 すると、軽快なメロディーと、誰かの爽やかな笑顔が自然と浮かんできた。

 

 *******

 

 電車内では材木座も大人しく……まあ、コートが人目を引いていたが……とにかく、ぼんやりと流れる景色を眺め、時折三人の内の誰かと言葉を交わしていたら、割とすぐに着いた。

 

「さあ、皆の者。我に続くがいい!」

「いや、お前目的地知らねえだろ」

「確か駅から5分くらいの場所だったよね」

「お兄ちゃん、多分あの建物の近くじゃないの?」

 

 小町の指し示す方向を見ると、高坂のメールに書かれていた看板が見えた。この炎天下で歩かされずにすみそうなのはありがたい。

 とりあえず目的地向けて歩き始めると、右側から何かが勢いよくぶつかってきた。

 

「きゃっ!」

「っ!」

 

 突然の衝撃にこけそうになるが、何とか耐える。

 目を向けると、ぶつかってきたのは女子だと気づい……た……。

 

「ご、ごめんなさい、大丈夫?」

「……え?、あ、ああ、はい……」

 

 何やら声をかけられているが、口が上手く開かない。

 そこにいたのは……A-RISE のメンバー、優木あんじゅだった。

 

 *******

 

「あら、今胸騒ぎがしたわ……仕方ないわね。私が比企谷君達を迎えに「エリチ」はい」

「あははっ、でもそろそろだよね。今日のライブ、楽しませなきゃ♪」


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