捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第4話

「…………」

「八幡」

「…………」

「八幡ってば!」

「お、おう……どうした?」

 ベストプレイスにて音楽を聴いていたら、戸塚が隣にいる事さえ気がつかなかった。いかん、俺とした事が。こういう小さなすれ違いの積み重ねが愛想を尽かされる原因になるというのに……。

「またμ’sの曲聴いてたの?」

「……ああ、まあな」

 高坂に勧められてから、ネットに上げられているμ’sの楽曲にほんのちょっとだけハマってしまった俺は、空き時間にμ’sの楽曲を聴くようになった。もぎゅっとくる可愛い曲や、可能性を感じる曲など、やけに耳に残るものが多い。別に水着のPVが見たいとかではない。ハチマン、ウソ、ツカナイ。

「新曲、楽しみだね!」

「ああ、そろそろスクールアイドルのサイトに上げられるんじゃないか?」

 次の楽曲を聴きながら、おそらくもう会う可能性は殆どないスクールアイドルの少女の笑顔をぼんやりと思い出した。

 

「それで……何でお前の買い物に付き合わなきゃいけないんだよ……」

「ふむ、仕方あるまい!我は観賞用と保存用に二つ欲しいのだが、一人一つなのだ」

「…………」

「よ、よいではないかよいではないか!後でスタ丼奢ってやるから!な?」

 材木座は少しだけ素に戻っていた。はっきり言って、周りの視線が突き刺さって痛いので止めて欲しい。

「それにほむまんでも買いに行けばよかろう」

「……行かねーよ」

 この前笑顔を向けてくれたのも、店員としての接客と、スクールアイドルとしての宣伝の部分が多い。ここで、『あの子、俺に気があるんじゃね?』なんて勘違いするのは、コンビニの店員が手を添えただけで好きになるのと同レベルだ。もしくは中学時代の俺。

 なので、俺は穂むらには行かない。

 ……μ’sの楽曲は聴くけど。

 

「あ」

「……」

 いきなりの再会。

 駅の改札を通り抜けたところで、行き交う人並みの中に高坂を見つけた。向こうも俺の方を見て、立ち止まっている。

 俺はそのまま立ち去ろうと……

「ちょっと!何で無視するの!?」

 したが、肩を掴まれる。これは少し……いや、かなり意外だ。

「お、ああ、偶然だな。気づかなかった」

「うわぁ、今絶対に気づいてた癖に」

「ほら、あれだ……シャイなんだよ。それに覚えてると思わなかった」

 俺ぐらいになると、シャイすぎてシャイニーしてしまうまである。多分、使い方間違ってるけど。

「君みたいな目つき悪い人忘れないよ!」

「おい」

「あはは、ごめんごめん。そういえば、名前聞いてなかったね。私、高坂穂乃果!」

「……比企谷八幡だ」

 

「さあ、到着したぞ八幡よ!……あれ?」




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