夏休み最終日。
特にやることもなく、いや、あえて何もせずに過ごした。何もしないという贅沢。そうか、ボッチとはこんなにも優雅だったのか……。
そんな優雅なひとときを邪魔するように携帯が震えだす。
「はい、もしもし」
「大変!大変だよ、比企谷君!」
「どした?あんま大変じゃなさそうだが……」
「何で決めつけるの?まだわかんないじゃん!」
「本当に大変なら俺のところに電話なんてしないだろ」
「確かにそうだけど!」
「そ、そうか……いや、言ったの俺だけど」
「とにかく聞いてよ!もう夏休みが最終日なんだよ!2ヶ月足りないんだよ!」
「……それは大変だな。話を聞こう」
「変わり身はやいよ!と、とにかく、夏休み最終日なんだよ!それで海未ちゃんに2ヶ月足りないって言ったら、怒られちゃった……」
「容易に想像できるな……正座させられて説教されてそうだ」
「違うもん!筋トレを倍に増やされただけだよ!」
「……より悲惨じゃねえか……つーか、何で俺に電話したんだ?お前の主張には全面的に同意なんだが……」
「だって小町ちゃんが言ってたよ?比企谷君が『2ヶ月足りないー』って言ってたって」
「え?今の俺の物真似?まったく似てないんだけど……」
「そうかなぁ、結構捻くれてた言い方になってた気がするんだけど」
「捻くれた言い方ってなんだよ……てかお前夏休みの課題終わったのか?」
「うん!今さっき終わったんだぁ♪」
「……まあ、宿題終わったんならいいんじゃねえの?お疲れさん」
「ありがと♪あっ、そういえば林間学校はどうだった?小町ちゃんは楽しかったって言ってたけど」
「…………ああ、まあ、ぼちぼちだ」
「ん?どうかしたの?」
「いや、それよか次のライブの予定は決まってんのか?」
「まだだよ。えっ、なになに?そんなに待ってくれてるの?」
「……何となく聞いてみただけだ。別にA-RISEとの共演がいつになるかが気になったわけじゃないし……」
「そこ目的でしょ!自分からばらしてるじゃん!もうっ」
「いや何つーか、あれだ……当日行けるかはわからんが、チケットぐらいは買う」
「ふ~ん、じゃあ当日行けるかわからないとか言わずに絶対来て欲しいなぁ」
「……善処する」
「ふふっ、ありがと♪やっぱり応援してくれる人がいるっていいなぁ。じゃあ、今度お礼に比企谷君を応援してあげるよ!」
「い、いや、遠慮しておきます……」
「何で敬語なの……?でも、決めた!私、比企谷君応援するよ!」
「何を応援するんだよ……」
「色々!」
「それなら戸塚とか材木座みたいな夢がある奴応援してやれよ……材木座は怪しいけど」
「うん、それはもちろんだよ!でも比企谷君も!」
「……そうか、あ、ありがとな。てか、もう遅いから寝るわ」
「あっ、うん。いきなりごめんね?」
「いや、大丈夫だ。じゃあな」
「うんっ、おやすみ!」
通話が途切れると、嵐が過ぎ去ったかのような静寂が訪れる。
……なんかこの感じも慣れてきた気がする。良くも悪くも。
ふと時計に目をやると、既に8月は終わり、9月が始まっていた。
*******
翌日になり、当たり前だが2学期は始まる。まだ夏の名残のような暑い陽射しに照らされながら、多くの学生はのろのろと学校までの道のりを辿る。
もちろん俺もその中の一人だ。ボッチ通学なのはいつもと変わらないが。
そんな風に思索に耽っているうちに、じわり汗を滲ませながら学校に到着する。
そして、久しぶりに上履きに履き替えていると、背後に人の気配を感じた。
振り向くと、川……何とかさんがそこにいて、こちらに鋭い視線をなげかけている。
まったく反応しないのもあれなので、会釈だけしておく。別に、久々に見た川崎のヤンキーみたいな雰囲気にびびったわけではない。
特に話題があるわけではないので、そのまま教室に向かおうとすると、「ねえ」と声をかけられた。
もう一度振り向くと、さっきの鋭い雰囲気はどこへやら、何やらもじもじと恥じらう純情乙女みたいな表情をしている。
「アンタさ……この前……」
いや、新学期なんだよそのテンション。うっかり何か始まっちゃうのかと思うだろ。高度なツンデレかよ……。
「……いや、ごめん。やっぱ何でもない」
「そ、そうか……」
川崎はスタスタと足早に去っていった。
……何だったんだ、あいつ?
まあ、何はともあれ新学期が始まった。
*******
よーしっ、今日から新学期!
昨日は比企谷君と色々言ったけど、気持ちを切り替えて、ラブライブに向けて頑張ろっ♪
しかし、予想外の出来事が……
「えっ?わ、私が生徒会長?」
「そう。お願いできるかしら」