「え~~~~~っ!?比企谷君が…………
文 化 祭 実 行 委 員 に!?」
「絵里ちゃん、驚きすぎだよ!ロングホームルーム中に眠ってたら、勝手に決まっていたんだって」
比企谷君が電話で面倒くさそうに言っていたのを思い出す。その時の表情も簡単に想像できてしまった。でも、何だかんだ言って、真面目にやるんだろうなぁ。
「比企谷君、ロングホームルーム中に眠っちゃうなんて。だらしないなあ……」
「穂乃果、貴方がそれを言うのですか?この前も……」
「そ、そうでした……」
「とにかく!これはもう行くしかないわね!!」
「えっ?どこに?」
「総武高校の文化祭に決まってるじゃない!さあ、行くわよ!」
「ちょっ、絵里ちゃん!文化祭はまだ先だよ!3週間後だよ!」
何故か今から千葉に行こうとする絵里ちゃんを止める。あ、あれ?どんどん引きずられていく!力強すぎるよ!
「……何故絵里はあんなにテンションが高いのですか?」
「ウチはこっちのエリチも好きよ」
「ふ、二人も見てないで止めてよ!」
でも、比企谷君が文化祭実行委員かぁ……どんな文化祭になるんだろ。
……それと絵里ちゃん……どうしちゃったんだろ。比企谷君の話になると、いつも何か違うというか……気のせい、だといいんだけど。あと何だろう、このモヤモヤ……みたいな変な感じ……これも気のせい、かな?
結局この後、絵里ちゃんを宥めるのにしばらく時間がかかった。
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「えっ?比企谷君、そんなに頑張ってるの?」
「はい。最近毎日帰りが遅くて……」
比企谷君が文化祭実行委員になってから一週間、久しぶりに小町ちゃんに電話をかけてみたら、そんな話題が出てきた。
「そっかぁ、頑張ってるんだねー」
「ええ。だから穂乃果さんからも元気づけてあげてくださいよ~」
「元気づけるかあ……う~ん、私で大丈夫かなあ?」
「もっちろんですよ!お兄ちゃん、捻くれてるけど、そういうのは喜ぶはずですよ!!」
電話越しに小町ちゃんの勢いが伝わってくる。お兄ちゃん思いなんだなぁ。本当にいい子だよ。
そして、そこまで言われたら、何だかやる気になってきた。
「よしっ、わかったよ!じゃあ、私に任せて!」
「ありがとうございますっ♪じゃあ、暇な時でいいんでよろしくお願いします!」
暇な時でいいって言ってたけど、こういうのは思い立ったが吉日、だよね!
私は小町ちゃんとの電話を終えると、すぐに比企谷君に電話をかけた。
比企谷君は割とすぐに出てくれた。
「……どした?」
「比企谷君っ、ファイトだよ!」
「は?お、おう……」
あれ?ちょっと引いてる気がする……いきなりすぎたかな?いや、ちゃんと元気づけないと!スクールアイドルとして!
「ファイトだよ!」
「よくわからんが……まあ、とりあえず……ありがとな」
「えっと、元気でた?」
「……まあ、少しくらいは。てか、どうしたんだよ。いきなり」
「気にしない気にしない!とりあえず元気でたなら安心だよ♪これで私も安心して明日から合宿に行けるかな」
「合宿?」
「明日からね、真姫ちゃん家の別荘で合宿なの。新曲作りに集中しなきゃいけないから」
「そっか…………応援しとく」
「おおっ、比企谷君が捻デレた!」
「捻デレとか言うんじゃねえよ……まあ、うっかり電車寝過ごしたりすんなって事だ」
「えー!?応援ってそっちの!?そっちは大丈夫だよっ、私生徒会長だし」
「あんま関係ない気がするんだが……2学期に入ってからの寝坊の数は?」
「えーっと……3回、かな?」
「まだ2学期始まって……」
「比企谷君、ファイトだよ!」
「……おう、お前もな」
「うんっ、おやすみ!」
「ああ……じゃあな」
スマホを枕元に置き、ベッドに寝転がる。ふぅ……うっかり寝坊の話なんてしちゃったよ。まったく、比企谷君は……。
でも、小町ちゃんの言う通り……比企谷君、本当に疲れた声してたなぁ。きっと頑張ってるんだよね。私も頑張らないと。