捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

42 / 120
第42話

「え~~~~~っ!?比企谷君が…………

 

  文 化 祭 実 行 委 員 に!?」

 

「絵里ちゃん、驚きすぎだよ!ロングホームルーム中に眠ってたら、勝手に決まっていたんだって」

 

 比企谷君が電話で面倒くさそうに言っていたのを思い出す。その時の表情も簡単に想像できてしまった。でも、何だかんだ言って、真面目にやるんだろうなぁ。

 

「比企谷君、ロングホームルーム中に眠っちゃうなんて。だらしないなあ……」

「穂乃果、貴方がそれを言うのですか?この前も……」

「そ、そうでした……」

「とにかく!これはもう行くしかないわね!!」

「えっ?どこに?」

「総武高校の文化祭に決まってるじゃない!さあ、行くわよ!」

「ちょっ、絵里ちゃん!文化祭はまだ先だよ!3週間後だよ!」

 

 何故か今から千葉に行こうとする絵里ちゃんを止める。あ、あれ?どんどん引きずられていく!力強すぎるよ!

 

「……何故絵里はあんなにテンションが高いのですか?」

「ウチはこっちのエリチも好きよ」

「ふ、二人も見てないで止めてよ!」

 

 でも、比企谷君が文化祭実行委員かぁ……どんな文化祭になるんだろ。

 ……それと絵里ちゃん……どうしちゃったんだろ。比企谷君の話になると、いつも何か違うというか……気のせい、だといいんだけど。あと何だろう、このモヤモヤ……みたいな変な感じ……これも気のせい、かな?

 結局この後、絵里ちゃんを宥めるのにしばらく時間がかかった。

 

 *******

 

「えっ?比企谷君、そんなに頑張ってるの?」

「はい。最近毎日帰りが遅くて……」

 

 比企谷君が文化祭実行委員になってから一週間、久しぶりに小町ちゃんに電話をかけてみたら、そんな話題が出てきた。

 

「そっかぁ、頑張ってるんだねー」

「ええ。だから穂乃果さんからも元気づけてあげてくださいよ~」

「元気づけるかあ……う~ん、私で大丈夫かなあ?」

「もっちろんですよ!お兄ちゃん、捻くれてるけど、そういうのは喜ぶはずですよ!!」

 

 電話越しに小町ちゃんの勢いが伝わってくる。お兄ちゃん思いなんだなぁ。本当にいい子だよ。

 そして、そこまで言われたら、何だかやる気になってきた。

 

「よしっ、わかったよ!じゃあ、私に任せて!」

「ありがとうございますっ♪じゃあ、暇な時でいいんでよろしくお願いします!」

 

 暇な時でいいって言ってたけど、こういうのは思い立ったが吉日、だよね!

 私は小町ちゃんとの電話を終えると、すぐに比企谷君に電話をかけた。

 比企谷君は割とすぐに出てくれた。

 

「……どした?」

「比企谷君っ、ファイトだよ!」

「は?お、おう……」

 

 あれ?ちょっと引いてる気がする……いきなりすぎたかな?いや、ちゃんと元気づけないと!スクールアイドルとして!

 

「ファイトだよ!」

「よくわからんが……まあ、とりあえず……ありがとな」

「えっと、元気でた?」

「……まあ、少しくらいは。てか、どうしたんだよ。いきなり」

「気にしない気にしない!とりあえず元気でたなら安心だよ♪これで私も安心して明日から合宿に行けるかな」

「合宿?」

「明日からね、真姫ちゃん家の別荘で合宿なの。新曲作りに集中しなきゃいけないから」

「そっか…………応援しとく」

「おおっ、比企谷君が捻デレた!」

「捻デレとか言うんじゃねえよ……まあ、うっかり電車寝過ごしたりすんなって事だ」

「えー!?応援ってそっちの!?そっちは大丈夫だよっ、私生徒会長だし」

「あんま関係ない気がするんだが……2学期に入ってからの寝坊の数は?」

「えーっと……3回、かな?」

「まだ2学期始まって……」

「比企谷君、ファイトだよ!」

「……おう、お前もな」

「うんっ、おやすみ!」

「ああ……じゃあな」

 

 スマホを枕元に置き、ベッドに寝転がる。ふぅ……うっかり寝坊の話なんてしちゃったよ。まったく、比企谷君は……。

 でも、小町ちゃんの言う通り……比企谷君、本当に疲れた声してたなぁ。きっと頑張ってるんだよね。私も頑張らないと。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。