「取り乱してしまってごめんなさい……ちょっと過去がフラッシュバックして、発狂しかけただけだから……」
「そ、そうですか……」
「…………」
何でだろう……。
見た目も性格も何もかも違うはずなのに、この人から独神のオーラを感じる……どちらも容姿だけでいえば、かなり美人な部類に入るだけ余計に……。
ようやく落ち着きを取り戻した綺羅さんは、高坂の肩に手を置いたが、そのどんよりとした瞳に、高坂は割と怖がっていた。
「ね、ねえ、一つだけ聞いていい?」
「……あ、はい。何ですか?」
「あなた達……つ、つ、付き合ってるの?」
「「…………」」
ピタリと沈黙が訪れる。
人波は変わらず流れていくのに、3人を取り巻く空気は確かに変わった……いや、何で固まってんだ、俺は。
「あの、俺らは別に……「はわわわわ……!」おい」
そんなに慌てられると、こっちまで混乱しそうになるだろうが……。
「あの、俺らは全然そんなんじゃ……っ」
足に重みを感じる。
目を向けると、高坂に足を踏まれていた。
「あっ、ごめん!つい……」
つい近づいて足踏んじゃうのかよ、お前は。器用すぎるだろ。
すると、綺羅さんがこちらを指差した。
「あーっ!それ、この前漫画で見たやつに似てるシチュエーションじゃない!私、知ってるわよ!」
「は、はあ……」
いや、んな事言われましても……何つーか……誰かもらってやってくれよぉ……。
「それで……高坂に何か用があったんじゃないんですか?」
このままでは埒が明かないので話を強引に進めると、綺羅さんはこちらに背を向け、深呼吸をし、体を伸ばし、両頬を叩き、ゆっくりと振り返り、最初見せた優雅な笑みを再び向けてきた。
「そうね。高坂さん……今、μ'sはラブライブ予選に使う会場を探しているんでしょう?」
「あ、はいっ」
突然のテンションの変化に戸惑いながら返事する高坂に、綺羅さんははっきり告げる。
「ウチの……UTXの屋上を使わない?」
「え?……い、いいんですか!?あっ、でも皆に聞かなきゃ……」
「返事は後日でいいわ。本当は明日直接訪ねようと思っていたから」
「そうなんですか!?あのっ、何で私達に……」
「ふふっ、そうねえ……」
高坂の質問に、綺羅さんは笑みを深めた。そこにいたのは間違いなく、スクールアイドル・綺羅ツバサだった。
「曲を聴いている内にμ'sに興味が湧いたから、かしらね」
「……ありがとうございます!!」
高坂が嬉しそうに頭を下げる。何故かその様子を見て、こっちまで笑みが零れそうになり、慌てて口元を隠した。
綺羅さんは高坂に対して大きく頷いた後、何故か俺に向き直った。
「あなた……名前は?」
「……比企谷、八幡です」
「そう、比企谷君ね。少し聞きたい事があるのだけど……」
「は、はい」
俺に……聞きたい事?
真剣な眼差しに気圧されそうになるが、何とか足が震えないよう気をつけ、背筋を伸ばす。
彼女は僅かな逡巡を見せてから、さっきより重たそうに口を開いた。
「私……そんなに近寄りがたい?」
「……………………はい」
この後、高坂と二人で彼女を宥めるのに、めっちゃ時間がかかった。