捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第56話

「取り乱してしまってごめんなさい……ちょっと過去がフラッシュバックして、発狂しかけただけだから……」

「そ、そうですか……」

「…………」

 

 何でだろう……。

 見た目も性格も何もかも違うはずなのに、この人から独神のオーラを感じる……どちらも容姿だけでいえば、かなり美人な部類に入るだけ余計に……。

 ようやく落ち着きを取り戻した綺羅さんは、高坂の肩に手を置いたが、そのどんよりとした瞳に、高坂は割と怖がっていた。

 

「ね、ねえ、一つだけ聞いていい?」

「……あ、はい。何ですか?」

「あなた達……つ、つ、付き合ってるの?」

「「…………」」

 

 ピタリと沈黙が訪れる。

 人波は変わらず流れていくのに、3人を取り巻く空気は確かに変わった……いや、何で固まってんだ、俺は。

 

「あの、俺らは別に……「はわわわわ……!」おい」

 

 そんなに慌てられると、こっちまで混乱しそうになるだろうが……。

 

「あの、俺らは全然そんなんじゃ……っ」

 

 足に重みを感じる。

 目を向けると、高坂に足を踏まれていた。

 

「あっ、ごめん!つい……」

 

 つい近づいて足踏んじゃうのかよ、お前は。器用すぎるだろ。

 すると、綺羅さんがこちらを指差した。

 

「あーっ!それ、この前漫画で見たやつに似てるシチュエーションじゃない!私、知ってるわよ!」

「は、はあ……」

 

 いや、んな事言われましても……何つーか……誰かもらってやってくれよぉ……。

 

「それで……高坂に何か用があったんじゃないんですか?」

 

 このままでは埒が明かないので話を強引に進めると、綺羅さんはこちらに背を向け、深呼吸をし、体を伸ばし、両頬を叩き、ゆっくりと振り返り、最初見せた優雅な笑みを再び向けてきた。

 

「そうね。高坂さん……今、μ'sはラブライブ予選に使う会場を探しているんでしょう?」

「あ、はいっ」

 

 突然のテンションの変化に戸惑いながら返事する高坂に、綺羅さんははっきり告げる。

 

「ウチの……UTXの屋上を使わない?」

「え?……い、いいんですか!?あっ、でも皆に聞かなきゃ……」

「返事は後日でいいわ。本当は明日直接訪ねようと思っていたから」

「そうなんですか!?あのっ、何で私達に……」

「ふふっ、そうねえ……」

 

 高坂の質問に、綺羅さんは笑みを深めた。そこにいたのは間違いなく、スクールアイドル・綺羅ツバサだった。

 

「曲を聴いている内にμ'sに興味が湧いたから、かしらね」

「……ありがとうございます!!」

 

 高坂が嬉しそうに頭を下げる。何故かその様子を見て、こっちまで笑みが零れそうになり、慌てて口元を隠した。

 綺羅さんは高坂に対して大きく頷いた後、何故か俺に向き直った。

 

「あなた……名前は?」

「……比企谷、八幡です」

「そう、比企谷君ね。少し聞きたい事があるのだけど……」

「は、はい」

 

 俺に……聞きたい事?

 真剣な眼差しに気圧されそうになるが、何とか足が震えないよう気をつけ、背筋を伸ばす。

 彼女は僅かな逡巡を見せてから、さっきより重たそうに口を開いた。

 

「私……そんなに近寄りがたい?」

「……………………はい」

 

 この後、高坂と二人で彼女を宥めるのに、めっちゃ時間がかかった。

 

 

 

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