捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第59話

 ライブ当日。会場であるUTX学園屋上は、ざわざわと賑わっていて、これから始まるライブへの期待が滲み出ていた。

 校舎に設置されている巨大モニターでも、二組のライブを生中継で放送するということもあり、モニター前には意外と人混みができていて、中々会場に入れなかった。

 座席に腰を下ろし、ほっと一息つくと、辺りをキョロキョロ見ていた戸塚が呟く。

 

「す、すごいね、八幡……この前よりも人が多いよ」

「あ、ああ……」

 

 隣に座っている小町も、同じように辺りを見回して、「はえー」とか「ほえー」とか感心している。

 

「うわぁ……こんなに人気なんだね。お兄ちゃん、色々と大変だけど頑張ってね」

「何がだよ……」

「けーちゃん、だいじょうぶ?」

「うんっ、へーきだよ!はやくみゅーずみたい!」

「お兄さん……な、なんか女子多くないですか?」

「落ち着け、お前既に顔赤いぞ」

 

 今回は、川崎姉弟も一緒にライブを観ることになった。大志ははやくも緊張気味なのが、思春期発揮しすぎてヤバい。 

 

「なあ、八幡……我の心配は?」

「あー、お疲れ」

 

 忘れていたが、ちゃっかり材木座も来ている。どっちでもいいけど……なんて思いながらも、女子比率が高すぎるので、ぶっちゃけ少し心強い。おい、マジか。材木座が心強いとか……。

 

「あっ、比企谷さんだ!」

「っ?」

 

 突然大きな声で呼ばれ、肩をびくつかせながら振り向くと、そこにいたのは高坂妹と高坂母だった。さらに……

 

「ほら、お父さん。この子がこの前ウチに来てくれた比企谷君よ」

「…………」

「ど、どうも……」

 

 腹の底から湧き上がる緊張感。な、何だ、この感じ……とにかく、怖い……目つきがやばいというか、何というか……人の事は言えないけど。

 

「ほら、お父さん。そんな目で見ないの。まったく……ごめんねえ、この人ったら、これまで浮いた話の一つもなかった娘に、初めての彼氏ができたんじゃないかと気が気じゃなくて……」

「は、はあ……」

 

 殺意の波動をビシビシ感じるのですが……。

 すると、その背後からも刺すような視線を感じた。

 目をやると、見覚えのある女子がそこにいた。確かあれは……絢瀬さんの妹だったような……。

 

「亜里沙、何でそんなに隠れてるの?」

「えっ!あ、その……えっと……」

「…………」

 

 高坂一家の陰から出てきた絢瀬妹と目が合う。

 すると、彼女は顔を真っ赤にして、ぴょんっと跳ね上がった。

 

「おっふ」

「亜里沙!?な、何そのリアクション!?」

「…………」

 

 どっかで見たことあるリアクションなんだが……まあいい。誰にでもそういう日はある。

 何だかんだ賑やかに過ごしている内に、開演まで刻一刻と時間は進んでいた。

 

 

 


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