ライブはA-RISEのステージから始まった。
μ'sの時もそうだったが、映像では何度も観たことがあっても、生で観ると迫力が全然違う。
素人目に見ても洗練されているのがわかるパフォーマンスには、あっという間に会場全体が引き込まれた。
「すごい……」
誰の口から漏れた言葉かはわからないが、それは会場全体の感想を代弁しているかのようだった。
そしてパフォーマンスが終わった瞬間、会場内は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
「「「ありがとうございました!!」」」
深々と頭を下げる3人に、音ノ木坂の制服を着た女子生徒も惜しみない拍手を送っていた。
「八幡、凄かったね!」
「……ああ」
俺はステージを去っていくA-RISEの背中を見ながら、次ステージに上がるμ'sの……彼女の事を考えていた。
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「よ~し、せっかくあんなすごい人達と一緒のステージに立てるんだから、全力を出し切ろう!!1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「7!」
「8!」
「9!」
「μ's!ミュージック……」
『スタート!!!』
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μ'sのメンバーがステージに立つと、こちらもA-RISEに負けないくらいの歓声が響いた。隣にいる小町も「穂乃果さ~ん!!」と力いっぱい叫んでいるし、高坂父に至っては、ペンライトを指の間に挟んでいて、今にもオタ芸を披露しそうだ。
俺も拍手をしながらステージに集中すると、穂乃果と目が合った。
特別ステージに近いわけではないし、普段なら気のせいと思うくらいだが、不思議な確信があった。
彼女は……純粋な瞳で、力強く微笑んでいた。
その真っ直ぐさに、胸が高鳴るのを感じる。
やがて、曲が始まった。
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何故だかわからないが、寒くもないのに鳥肌がたっていた。
μ'sのライブはこれまでに何度か生で観たことがある。
その中でも、今回のライブはこれまでで最高だったと断言できた。
専門的なことはわかりはしないが、俺はこのライブで、心が奮えるという経験に、人生で初めて出会った気がする。
それほどまでに心を奪われていた。そして……
『ありがとうございました!!!』
その言葉と共に、会場内がA-RISEに負けないくらいの拍手と歓声で沸き上がる。
あまりの熱量にポカンとしながらステージを見ていると、さっきと同じように穂乃果と目が合う。
つられるようにじっと目を凝らして見てみると、彼女の唇が動いているように見えた。
『ありがとう』
こんな偶然に意味を付け足すのは馬鹿げていると思いながらも、俺は彼女と同じはずの言葉を口にした。
『ありがとう』
そのやり取りに呼応するかのように、最高のメロディーの余韻が、胸の中にほんのりと温かな灯を点した。