捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第61話

 ライブ終了後、会場が混雑していたのと、場所がUTXということもあり、俺達はそのまま帰路に着いた。

 そして、帰宅してから色々やることを済ませ、もう寝ようかと思った頃に携帯が震え出した。

 相手が誰なのか、何となく予想をつけながら、そのまま画面を確かめもせずに携帯を耳に押し当てる。

 

「……はい」

「あっ、もしもし八幡君!こんばんは~!今大丈夫?」

「お、おう……てか、テンション高いな……」

「うんっ!すっごくテンション上がってるから、まだちっとも眠くならないんだぁ」

「そっか。まあ、今日はお疲れさん」

「えへへ、ありがと♪」

「結果はいつわかるんだ?」

「明後日。皆で放課後に部室で確認することになってるよ」

「すぐじゃねえか。その割にはあんま緊張してないんだな」

「うん、今はあんまり。思ったよりずっといいライブにできたからかな。でも、発表の日になると緊張しちゃうかも……」

「……そっか」

「ねえ、八幡君」

「?」

「……その……どう、だった?」

「何が?」

「今日のライブに決まってるじゃんっ!わかってて言ってる?」

「ああ、悪い。…………まあ、その……今までで一番よかった」

「……そっかぁ……じゃあ、よかった。てっきり、あんじゅさんばかり見てて、私達の時見てなかったらどうしようって思ったよ~」

「いや、さすがにそこまで失礼な真似はしない。それに……」

「それに?」

「本当によかった……何つーか、感動した」

「っ!……そ、そう?えと……八幡君、感動したの?」

「ああ……お前が2番の出だしで歌詞を間違えたとこ以外はな」

「も、もうっ!そんなところにはすぐ気づくんだから!八幡君のイジワル!」

 

 しばらく他愛のないやりとりをしていると、いつの間にか穂乃果の寝息が聞こえてきたので、「おやすみ」とだけ呟いて、通話を終えた。

 ちなみに、明後日にμ'sの予選突破を知った時は、さらにヤバいテンションだったとだけ付け加えておく。

 

 *******

 

 数日後、μ'sが予選を突破したので、穂乃果と約束していたメロンパンの店に行くことになった。まあ、財布の中身は心許ないが、メロンパンを奢るくらいなら何とかなるだろう。

 秋葉原駅を出ると、彼女の姿はすぐに見つかったのだが……

 

「あっ、来た!八幡く~ん!!」

「っ!?」

 

 ボッチとしてこれまでにメンタルを鍛えてきた俺が、普通に挨拶するよりも、驚きが先に出てしまった。 

 ……そう、いつもと雰囲気の違う服装の穂乃果が、こちらに向かって手を振っていた……綺羅ツバサさんと一緒に。


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