捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第78話

 穂乃果と付き合い始めてから一週間。色んな事が変わり始めていた。

 

「48……49……50……!」

「お兄ちゃん、どしたの?突然筋トレなんて始めて……」

「……まあ、色々な」

 

 別に筋肉は裏切らないとか思ってるわけではないし、高木さんにからかわれたわけではない。雪ノ下さんからは罵倒されているが、それも関係ない。

 色んな事を少しずつ変えていく。それだけの話だ。

 

「ふ~ん、そういえばお兄ちゃん……」

「?」

「何か小町に言い忘れてることない?」

 

 小町は腰に手を当て、ぷんすか怒った表情を見せた。はて、何かやらかしましたっけ?とりあえず思いつくのは……

 

「……冷蔵庫の中のプリン食ったのは悪かった」

「いや、そうじゃなくて……って、あれお兄ちゃんだったの!?」

 

 どうやら藪蛇だったようだ。仕方ない、ここは……

 

「いーち、にー……」

「筋トレの続きをして誤魔化さないの!ちゃんと後で買ってきてよね。飲み物付きで」

「お、おう……」

 

 この子、さりげなく飲み物まで要求してきましたよ?まあ、可愛いから許すけど。せっかくだから、今流行りの抹茶サイダーを買ってきてやろう。喜んでくれるといいなぁ♪

 

「それで、言い忘れた事ってなんだっけ?」

 

 俺の言葉に、小町は「むむむ……」と顔をしかめたが、すぐに諦めたように溜め息を吐き、そっと俺の隣に腰を下ろし、遠慮がちに口を開いた。

 

「……お兄ちゃん、穂乃果さんと付き合い始めたんでしょ?」

「……あ、ああ……まあ、そうだけど」

 

 すぐに小町の不機嫌の理由に思い至り、筋トレをやめ、しっかり向き合う体勢になる。

 

「悪い……まあ、その……言い忘れてた」

「もうっ、小町はお兄ちゃんの妹だから、真っ先におめでとうって言わせてよね!」

「あ、ああ……ありがとな」

 

 優しすぎる言葉に、思わずじんときてしまう。俺は気恥ずかしさのあまり、再び筋トレを始めてしまった。うわ、何これ……滅茶苦茶嬉しいけど、滅茶苦茶恥ずかしい……!

 小町はそんな俺の様子を見て、ケラケラ笑った。

 

「あははっ、何やってんの?……おめでと、お兄ちゃん」

「……ああ」

 

 俺にはその時の小町がいつもより少しだけ大人びて見えた。

 そのことに切なさを覚えながらも、自分が変わることは周りの人間も変わることだと、今さらながら気がついた。

 翌日、また大きな変化が訪れることは、この時知る由もないのだが……。

 

 *******

 

「♪~~」

「穂乃果ちゃん、今日も絶好調だったね」

「うんっ、でもいっぱい動いたらお腹空いちゃった……お昼結構食べたのに」

「幸せなのは良いことですが、幸せ太りはやめてくださいね?貴方はμ'sのリーダーなのですから」

「わ、わかってるよ~……あれ、電話?ちょっとごめんね。……もしもし、八幡君♪えっ、どうしたの?……うん、うん」

「比企谷君に何かあったのかな?」

「何やら不穏な空気が……」

「え……え~~~!?は、は、八幡君が……!!?」


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