数日後、廊下の掲示板に新しい生徒会のメンバーの名前が貼り出されていた。そして、そこには……
生徒会長 比企谷八幡
……やはり自分で何度確認しても、未だに現実とは思えない。
生徒会長に立候補すると宣言したあの日から、雪ノ下と由比ヶ浜は本当によく協力してくれた。
あの二人のおかげで、すぐに推薦人も集まり、応援演説もしてくれたので、選挙に勝つことができた。
……よし、間違いなく現実だ。近くにいる男女が「生徒会長のヒキタニって人知ってる?」「知らな~い」とか言ってるし。おい。
「ヒキタニく~ん、チィッス!」
背後からチャラい声でチャラい挨拶をされるが無視すると、肩を掴まれた。
「ちょっ、ヒキタニくん無視とかヒドくね!?」
振り向けばチャラい奴がいた。
「何か用か?」
てか、お前がデカイ声でヒキタニくんとか呼ぶと、本当にヒキタニだと思われちゃうだろうが。
戸部は何事もなかったかのように俺の隣に並び、ニカッとチャラい笑みを見せた。
「いや、いきなりヒキタニくんが生徒会長になるなんて、朝っぱらから驚きでしょー!」
「……かもな」
一応昨日には発表されていたはずなんだが……まあいい。どうせ戸部だし。
「そういや、ヒキタニくん。修学旅行の時、サンキュー」
「ああ…………は?」
俺は後退り、もう一度戸部を見る。今こいつ……何て言った?
「おい。今さらだが、あれは……」
「いやわかってるから!そうじゃなくて~!ヒキタニくん、あん時……」
「別にお前の為にやったわけじゃない。だからこの話はここで終わりだ」
「まあまあ、そう言わずにさ。俺らもうマブダチじゃん?」
「いや、違うだろ」
「即答とかヒドくね!?まあ、感謝してるのは本当だからさ。ヒキタニくんも俺に頼みがあるなら、どんどん言ってみ?」
「じゃあ、一ついいか?」
「おーう」
「俺の名前はヒキタニじゃなくてヒキガヤだ。それを直すところから始めようか」
「……お、おう」
この日以来、戸部がちょくちょく話しかけてくるようになった。まあ、別にどっちでもいいんだけど。
*******
昼休み。ヒデコ達とお弁当を食べていると、ヒデコがニヤニヤしながら私の肩をたたく。何だろう?なんか企んでいるような……
「ねえ、穂乃果。アンタ比企谷君とはどこまでいったの?」
「ど、どこまで?」
特にまだデートはできていないからどこにも行ってないんだけどなあ…………でも、中々時間が……。
考えていると、フミコとミカも話に入ってきた。
「ダメだよ。そんな言い方じゃ」
「穂乃果にはハッキリ聞かないと」
「?」
ハッキリ?何を?え?
何でか知らないけど、ちょっと真面目っぽい空気が漂いだす。
よくわからない私の顔を見て、ヒデコはやれやれと首を振った。
「そっかぁ……じゃあ、穂乃果……」
「?」
ヒデコは少し頬を紅くしている。な、なになに?何なの?
そのままヒデコは、ゆっくり緊張ぎみに口を開いた。
「ぶっちゃけ……キス、したの?」
「…………え?」
…………キス?