捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第80話

 数日後、廊下の掲示板に新しい生徒会のメンバーの名前が貼り出されていた。そして、そこには……

 

 生徒会長 比企谷八幡

 

 ……やはり自分で何度確認しても、未だに現実とは思えない。

 生徒会長に立候補すると宣言したあの日から、雪ノ下と由比ヶ浜は本当によく協力してくれた。

 あの二人のおかげで、すぐに推薦人も集まり、応援演説もしてくれたので、選挙に勝つことができた。

 ……よし、間違いなく現実だ。近くにいる男女が「生徒会長のヒキタニって人知ってる?」「知らな~い」とか言ってるし。おい。

 

「ヒキタニく~ん、チィッス!」

 

 背後からチャラい声でチャラい挨拶をされるが無視すると、肩を掴まれた。

 

「ちょっ、ヒキタニくん無視とかヒドくね!?」

 

 振り向けばチャラい奴がいた。

 

「何か用か?」

 

 てか、お前がデカイ声でヒキタニくんとか呼ぶと、本当にヒキタニだと思われちゃうだろうが。

 戸部は何事もなかったかのように俺の隣に並び、ニカッとチャラい笑みを見せた。

 

「いや、いきなりヒキタニくんが生徒会長になるなんて、朝っぱらから驚きでしょー!」

「……かもな」

 

 一応昨日には発表されていたはずなんだが……まあいい。どうせ戸部だし。

 

「そういや、ヒキタニくん。修学旅行の時、サンキュー」

「ああ…………は?」

 

 俺は後退り、もう一度戸部を見る。今こいつ……何て言った?

 

「おい。今さらだが、あれは……」

「いやわかってるから!そうじゃなくて~!ヒキタニくん、あん時……」

「別にお前の為にやったわけじゃない。だからこの話はここで終わりだ」

「まあまあ、そう言わずにさ。俺らもうマブダチじゃん?」

「いや、違うだろ」

「即答とかヒドくね!?まあ、感謝してるのは本当だからさ。ヒキタニくんも俺に頼みがあるなら、どんどん言ってみ?」

「じゃあ、一ついいか?」

「おーう」

「俺の名前はヒキタニじゃなくてヒキガヤだ。それを直すところから始めようか」

「……お、おう」

 

 この日以来、戸部がちょくちょく話しかけてくるようになった。まあ、別にどっちでもいいんだけど。

 

 *******

 

 昼休み。ヒデコ達とお弁当を食べていると、ヒデコがニヤニヤしながら私の肩をたたく。何だろう?なんか企んでいるような……

 

「ねえ、穂乃果。アンタ比企谷君とはどこまでいったの?」

「ど、どこまで?」

 

 特にまだデートはできていないからどこにも行ってないんだけどなあ…………でも、中々時間が……。

 考えていると、フミコとミカも話に入ってきた。

 

「ダメだよ。そんな言い方じゃ」

「穂乃果にはハッキリ聞かないと」

「?」

 

 ハッキリ?何を?え?

 何でか知らないけど、ちょっと真面目っぽい空気が漂いだす。

 よくわからない私の顔を見て、ヒデコはやれやれと首を振った。

 

「そっかぁ……じゃあ、穂乃果……」

「?」

 

 ヒデコは少し頬を紅くしている。な、なになに?何なの?

 そのままヒデコは、ゆっくり緊張ぎみに口を開いた。

 

「ぶっちゃけ……キス、したの?」

「…………え?」

 

 …………キス? 


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