捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第82話

 俺が生徒会に入り、奉仕部を辞めたわけだが、奉仕部のメンバーとよく顔を合わせる。その理由は……

 

「あっ、ヒッキー。やっはろー」

「こんにちは」

「……おう。今日も来てたのか」

「せんぱーい、遅いですよー」

「いや、お前らが早すぎるだけだろ……」

 

 誤解される前に言っておくが、別に奉仕部メンバーが生徒会に入ったわけではない。ちょくちょく顔を出して、色々手伝ってくれているだけだ。

 さらに、奉仕部には新しいメンバーが加入した。一人は一色で、もう一人は……

 

「…………」

「何だよ……相模」

「別に……」

 

 そう、もう一人の新メンバーとは、あの相模である。もう一度言う。あの相模である。

 大事なことでもないのに二回言ってしまったが、驚いたのは確かだ。WANDSのボーカルが代わった時くらいの驚きだろうか。

 生徒会の他のメンバーも、色々と濃い助っ人達に何ともいえない表情を見せていた。言いたい事があれば言っていいんだよ!

 そんな中、副会長が俺の肩をこっそり叩き、話しかけてきた。

 

「会長……そろそろ平塚先生から頼まれたイベントの会議始めようか」

「……そうだな」

 

 とりあえず……こんな感じで、新生徒会は賑やかなスタートを迎えていた。

 そんな感慨に耽っていると、ポケットで携帯が震え出す。多分……いや、間違いなく穂乃果だろう。

 確認してみると、やはりあいつからだった。さて、用件は……

 

『明後日デートしよ♪』

 

「…………」

「比企谷君、いきなりにやけるのは止めなさい」 

 

 *******

 

 というわけで俺は今、小町コーデの服に身を包み、秋葉原の駅前にいる。

 あいつとは何度か出かけたことがあるので忘れそうになるが、これはれっきとした初デートである。てか、これって俺から誘うべきだったのでは……いや、今考えるのはよそう。

 

「八幡く~ん!」

 

 聞き慣れた声に顔を上げると、普段とは少し雰囲気の違う穂乃果が見えた。彼女は寝坊したのだろうか、少し慌てた表情で息を弾ませている。

 

「はぁ、はぁ、よしっ、ギリギリセーわわっ!」

「っ!」

 

 到着するなりこけそうになる彼女を慌てて支える。

 すると、思いきり抱きしめる形になり、甘い香りが弾け、鼻腔をくすぐった。

 

「だ、大丈夫か?」

「うん、平気……ありがと」

「…………」

「…………」

 

 自然とそのまま見つめ合う。正直、周りに人がいなければ、勢いでもっと強く抱きしめていたかもしれない。

 やがて、腕に甘い体温や柔らかさが馴染んだ頃に、彼女の方から口を開いた。

 

「えと……じゃあ行こっか」

「……ああ」

 

 穂乃果が腕の中から離れ、歩き出してからも、しばらくその体温は腕に絡みついていた。


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