「お待たせしました~!」
「わぁ~~♪」
「……マジか」
出てきたケーキは、間違いなく俺一人では食べきれない大きさだった。
こいつ、デートとは言ったものの、これを食べてみたかっただけじゃなかろうか……まあ幸せそうだからいいけど。
穂乃果はフォークでケーキを取り、そのまま口に頬張……らずに、こちらに向けてきた。
「は、はい、えと……あーん」
「…………」
ハチマンはこんらんしている!
えっ、これって……アレですよね?食べろってことですよね?
こちらに向けられたケーキをじっと眺めていると、穂乃果はさらにそれを近づけてきた。
「ほら、は、早く食べないと、私が食べちゃうんだから!」
「あ、ああ……」
あまり考えても仕方ないので、とりあえずケーキを口に含んでみる。
すると、想像していたのより濃厚な甘さが口の中に広がった。それがケーキそのものの甘さなのかを疑ってしまうくらいに。
「どう?美味しい?」
「……まさか、お前が最初の一口を譲るとは思わなかった」
「そこ!?しかも味の感想じゃない!まったく、八幡君は素直じゃないんだから……」
そう言いながら、穂乃果もケーキを食べ始める。いや、さすがにいきなりは恥ずかしいと言いますか……。
俺は切り分けたケーキを食べながら、彼女の紅く染まった頬を眺めていた。
*******
一時間後、何とかケーキを食べきり、俺達は店を後にした。
「ふぅ、お腹いっぱいになっちゃった!」
「あ、ああ、てかこれ……晩飯は入りそうもないな」
「そうかなぁ?白米は別腹って花陽ちゃんが言ってたから大丈夫だよ、きっと!」
「いや、初耳なんだが……」
穂乃果以外にも変なフラグ立ててる奴がいるとは……μ's、大丈夫か?いやいや、信じよう。きっとこれはただの成長期。二人は運動しまくってるから大丈夫!
かぶりを振って不安を追い払うと、穂乃果がチラチラこっちを見ているのに気づいた。
俺はすぐにその意味に気づいた。
「……ほら」
緊張気味に手を差し出すと、彼女はにっこり笑みを浮かべた。
「うんっ♪」
再び繋がれた手のひらの感触は、さっきより馴染んでいた。
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そのまま穂乃果に言うとおりにしばらく歩くと、公園に到着した。中央に池があるかなり広い公園で、ジョギングをしたり、シートを広げて弁当を摘まんだり、遊具で遊んだり、色んな人がそれぞれの休日を過ごしていた。
「へえ、こんな場所あったんだな」
「うんっ、たまにここで皆一緒にジョギングするんだよ♪」
「えっ?今からジョギングすんの?」
「あはは、しないよ。ほら、こっちこっち」
穂乃果は空いたベンチに座り、笑顔で手招きした。ゆっくり話をしたいとか、そういうことだろうか。
すると、彼女は自分の膝をポンポン叩いた……は?
「えっと……や、休んでいいよ?」
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「あれは……高坂さんと比企谷君?な、何を……」