捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第84話

「お待たせしました~!」

「わぁ~~♪」

「……マジか」

 

 出てきたケーキは、間違いなく俺一人では食べきれない大きさだった。

 こいつ、デートとは言ったものの、これを食べてみたかっただけじゃなかろうか……まあ幸せそうだからいいけど。

 穂乃果はフォークでケーキを取り、そのまま口に頬張……らずに、こちらに向けてきた。

 

「は、はい、えと……あーん」

「…………」

 

 ハチマンはこんらんしている!

 えっ、これって……アレですよね?食べろってことですよね?

 こちらに向けられたケーキをじっと眺めていると、穂乃果はさらにそれを近づけてきた。

 

「ほら、は、早く食べないと、私が食べちゃうんだから!」

「あ、ああ……」

 

 あまり考えても仕方ないので、とりあえずケーキを口に含んでみる。

 すると、想像していたのより濃厚な甘さが口の中に広がった。それがケーキそのものの甘さなのかを疑ってしまうくらいに。

 

「どう?美味しい?」

「……まさか、お前が最初の一口を譲るとは思わなかった」

「そこ!?しかも味の感想じゃない!まったく、八幡君は素直じゃないんだから……」

 

 そう言いながら、穂乃果もケーキを食べ始める。いや、さすがにいきなりは恥ずかしいと言いますか……。

 俺は切り分けたケーキを食べながら、彼女の紅く染まった頬を眺めていた。

 

 *******

 

 一時間後、何とかケーキを食べきり、俺達は店を後にした。

 

「ふぅ、お腹いっぱいになっちゃった!」

「あ、ああ、てかこれ……晩飯は入りそうもないな」

「そうかなぁ?白米は別腹って花陽ちゃんが言ってたから大丈夫だよ、きっと!」

「いや、初耳なんだが……」

 

 穂乃果以外にも変なフラグ立ててる奴がいるとは……μ's、大丈夫か?いやいや、信じよう。きっとこれはただの成長期。二人は運動しまくってるから大丈夫!

 かぶりを振って不安を追い払うと、穂乃果がチラチラこっちを見ているのに気づいた。

 俺はすぐにその意味に気づいた。

 

「……ほら」

 

 緊張気味に手を差し出すと、彼女はにっこり笑みを浮かべた。

 

「うんっ♪」

 

 再び繋がれた手のひらの感触は、さっきより馴染んでいた。

 

 *******

 

 そのまま穂乃果に言うとおりにしばらく歩くと、公園に到着した。中央に池があるかなり広い公園で、ジョギングをしたり、シートを広げて弁当を摘まんだり、遊具で遊んだり、色んな人がそれぞれの休日を過ごしていた。

 

「へえ、こんな場所あったんだな」

「うんっ、たまにここで皆一緒にジョギングするんだよ♪」

「えっ?今からジョギングすんの?」

「あはは、しないよ。ほら、こっちこっち」

 

 穂乃果は空いたベンチに座り、笑顔で手招きした。ゆっくり話をしたいとか、そういうことだろうか。

 すると、彼女は自分の膝をポンポン叩いた……は?

 

「えっと……や、休んでいいよ?」

 

 *******

 

「あれは……高坂さんと比企谷君?な、何を……」

 


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