家に戻り、順番にシャワーを浴びてからは、ひとまず休憩の時間となった。期待していた方々には悪いが、ラッキースケベなんて起きてないし、き、期待なんて……していない。
「八幡く~ん。アイス食べた~い」
「…………」
「はっ!ち、違うよ!そんなんじゃないよ?ア、アイス食べたいとかイミワカンナイっ」
「……大丈夫か。キャラぶれてるぞ」
少しくらいなら構わないと思うが、本人が頑張っていることだし、ここはぐっと堪える。無事ダイエットが成功したらパフェくらいは奢ってやろう。
「スピリチュアル、スピリチュアル、スピリチュアル、スピリチュアル………」
「…………」
……無事にダイエット……成功するよね?
*******
「八幡君、休みの日にわざわざごめんねぇ?この子ったらすっかり幸せ太りしちゃって」
「そ、そんなに太ってないもん!体重がほんのちょっと増えただけだもんっ!」
「いや、それ同じ意味だから。お姉ちゃん、ファーストライブの衣装入らなかったんでしょ?まったくもう……そんなアイドル聞いたことないよ」
「うっ……」
穂乃果はぎくっとしてから、控えめに味噌汁を啜った。まあ仕方ない。どれも事実だし。それより……
「…………」
高坂父の視線が遠慮なしに突き刺さり、どうにも落ち着かない……ていうか怖い。もしかして、俺を饅頭の具にしようとしているのだろうか。いや、まさかね……。
現在、俺は高坂家で昼食をご馳走になっていた。秋穂さんの手料理は美味しいのだが、高坂父のオーラがバシバシ飛んできて、ゆっくり味わう余裕がない。
「ほらお父さん。そんな顔しないの。八幡君が困ってるじゃない」
「そうだよ。将来お姉ちゃんと結婚したら、ほむらの跡取りになるかもしれないんだし」
「けっ、けっ、けっ、結婚!?」
穂乃果が顔を紅くしながら声をあげる。ちなみに、俺も間違いなく顔を紅くしているだろう。しかし、結婚……俺達が今後どうなるかはわからないし、結婚なんて先の話すぎて現実味はないが、それでも妄想はしてしまう。
「結婚……えへへ……なんか照れるなぁ。ねっ、八幡君♪」
「……これ美味しいですね」
「あ~、誤魔化した~……って八幡君、顔真っ赤だよ?」
「い、いや、それお前もだから……てか、そこツッコむの本当にやめて?」
恥ずかしいだけじゃなく、命に関わりそうだから、って……あれ?
こっそりと高坂父を窺うと、何やら無表情で固まっている。瞬き一つしない。さらに、ひたすら渋い……もしかしてこれって……。
「お父さん?もしも~し。お父さん?あれ?お母さんっ、お父さんが固まったまま動かないよ!」
「ああ、娘のウェディングドレス姿想像して気絶してるだけだから気にしなくていいわよ」
いいのかよ。ほっとくのかよ。
とりあえず……まだきちんと認めてもらうには時間がかかりそうだった。