数時間前……。
「ラブソング?」
希ちゃんの提案に皆が首を傾げる。
そっかぁ……確かにμ'sってラブソングはあんまりないかも。
考えていると、凛ちゃんが不思議そうに口を開いた。
「でも、何でμ'sってラブソングが少ないのかなぁ?」
凛ちゃんも私と同じ事考えてたみたい。
皆してしばらく悩んでから、自然とあるメンバーに視線が集中する。
「な、何ですかっ?皆して……」
『じぃ~~~~~~~っ』
皆からの視線に、海未ちゃんが一歩、二歩と後ずさる。
すると、いきなりこっちを指差してきた。
「そ、そんな目で見られても困ります!それに、恋愛に関してなら穂乃果に聞けばいいでしょう!?恋人がいるのですから!」
「あっ……」
今度は皆の視線が私に集まった。
「ほ、穂乃果!アンタ実際どこまで進んでんのよ!?」
「ど、どこまでって?」
「もうさすがにキスくらいはしたん?」
「し、してないよ!まだ付き合い始めたばかりだし、デートだってそんなに……」
「でもこの前比企谷君は泊まっていったのよね?」
「寝たのは別の部屋だもん!」
「へ、へえ、まだまだね」
「何で上から目線なの!?」
「手はいつも繋ぐのかにゃ~!」
「なんか話変わってない!?」
「二人きりの時は何て呼びあってるのかな?」
「別にいつも通りだよ~!」
「穂乃果ちゃぁん……知らないうちに大人になっちゃったんだね」
「なってないよ!?何言ってるの!?」
「穂乃果!あ、貴方……私達の知らないうちに……し、したのですね!?」
「あ~、もう!皆落ち着いて~!!」
*******
「……はあ、なるほどね」
「うん。そうなんだ……それで……八幡君は興味あるのかなって……」
「……そりゃあ、ある……けど」
「そ、そっか……」
考えるより先に口が勝手に動いていた。まあ実際のところ、興味ないわけがあるかという話だ。付き合い始めてから、いや、付き合い始める少し前くらいには、勢いだけでいきそうな感覚がなかったわけではない。あの時の衝動は、今も一緒にいる時によく顔を出す。
そんな事を考えていると、彼女の薄紅色の唇と、たまにペロリと見せるほんのり紅い舌が脳裏に浮かんで、鼓動が高鳴っていくのを感じた。
「…………」
「えっと……八幡君?」
「……あ、ああ、悪い。今、変なこと考えてた」
「正直すぎるよ!もう少し遠回しに言おうよ!」
「いや、そっちがいきなり変なこと言い出すからだろ」
「むぅ……そうなんだけどさ。やっぱり希ちゃんの言う通りだよ」
「?」
あの人……一体何を吹き込んだのだろうか。
沈黙で続きを促すと、穂乃果はもごもごと口を開いた。
「は、八幡君は狼だから気をつけろって……」
「…………」
それはボッチと一匹狼をかけているのでしょうか……いや、否定はできないんだけどね?
ていうか、これ以上この話を続けていたら、次に直接会った時に滅茶苦茶気まずくなる気がする。
「……まあ、あんま気にすんなよ。まだ、その……付き合い始めたばかりなんだし」
「……うん、そうだよねっ!いきなりごめんね?」
「いや、大丈夫だ」
「うん。ありがと。じゃあ、また明日。おやすみ」
通話を終えると、何だか顔が火照っている。いきなり変なことを言ってきた彼女のせいなのは明白だった。
……やべえ。しばらく眠れそうにないんだけど。
*******
通話を終えると、顔が真っ赤になっているのに気づいた。私、かなり恥ずかしいこと言ってたなぁ……。
自分で自分の唇をなぞってみると、そこは微かに熱を持っていた。何だろう、この感覚?
「いつかは……するのかなぁ?」
その日は、布団に潜り込んでもしばらく寝つけなかった。