捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第97話

 数時間前……。

 

「ラブソング?」

 

 希ちゃんの提案に皆が首を傾げる。

 そっかぁ……確かにμ'sってラブソングはあんまりないかも。

 考えていると、凛ちゃんが不思議そうに口を開いた。

 

「でも、何でμ'sってラブソングが少ないのかなぁ?」

 

 凛ちゃんも私と同じ事考えてたみたい。

 皆してしばらく悩んでから、自然とあるメンバーに視線が集中する。

 

「な、何ですかっ?皆して……」

『じぃ~~~~~~~っ』

 

 皆からの視線に、海未ちゃんが一歩、二歩と後ずさる。

 すると、いきなりこっちを指差してきた。

 

「そ、そんな目で見られても困ります!それに、恋愛に関してなら穂乃果に聞けばいいでしょう!?恋人がいるのですから!」

「あっ……」

 

 今度は皆の視線が私に集まった。

 

「ほ、穂乃果!アンタ実際どこまで進んでんのよ!?」

「ど、どこまでって?」

「もうさすがにキスくらいはしたん?」

「し、してないよ!まだ付き合い始めたばかりだし、デートだってそんなに……」

「でもこの前比企谷君は泊まっていったのよね?」

「寝たのは別の部屋だもん!」

「へ、へえ、まだまだね」

「何で上から目線なの!?」

「手はいつも繋ぐのかにゃ~!」

「なんか話変わってない!?」

「二人きりの時は何て呼びあってるのかな?」

「別にいつも通りだよ~!」

「穂乃果ちゃぁん……知らないうちに大人になっちゃったんだね」

「なってないよ!?何言ってるの!?」

「穂乃果!あ、貴方……私達の知らないうちに……し、したのですね!?」

「あ~、もう!皆落ち着いて~!!」

 

 *******

 

「……はあ、なるほどね」

「うん。そうなんだ……それで……八幡君は興味あるのかなって……」

「……そりゃあ、ある……けど」

「そ、そっか……」

 

 考えるより先に口が勝手に動いていた。まあ実際のところ、興味ないわけがあるかという話だ。付き合い始めてから、いや、付き合い始める少し前くらいには、勢いだけでいきそうな感覚がなかったわけではない。あの時の衝動は、今も一緒にいる時によく顔を出す。

 そんな事を考えていると、彼女の薄紅色の唇と、たまにペロリと見せるほんのり紅い舌が脳裏に浮かんで、鼓動が高鳴っていくのを感じた。

 

「…………」

「えっと……八幡君?」

「……あ、ああ、悪い。今、変なこと考えてた」

「正直すぎるよ!もう少し遠回しに言おうよ!」

「いや、そっちがいきなり変なこと言い出すからだろ」

「むぅ……そうなんだけどさ。やっぱり希ちゃんの言う通りだよ」

「?」

 

 あの人……一体何を吹き込んだのだろうか。

 沈黙で続きを促すと、穂乃果はもごもごと口を開いた。

 

「は、八幡君は狼だから気をつけろって……」

「…………」

 

 それはボッチと一匹狼をかけているのでしょうか……いや、否定はできないんだけどね?

 ていうか、これ以上この話を続けていたら、次に直接会った時に滅茶苦茶気まずくなる気がする。

 

「……まあ、あんま気にすんなよ。まだ、その……付き合い始めたばかりなんだし」

「……うん、そうだよねっ!いきなりごめんね?」

「いや、大丈夫だ」

「うん。ありがと。じゃあ、また明日。おやすみ」

 

 通話を終えると、何だか顔が火照っている。いきなり変なことを言ってきた彼女のせいなのは明白だった。

 ……やべえ。しばらく眠れそうにないんだけど。

 

 *******

 

 通話を終えると、顔が真っ赤になっているのに気づいた。私、かなり恥ずかしいこと言ってたなぁ……。

 自分で自分の唇をなぞってみると、そこは微かに熱を持っていた。何だろう、この感覚?

 

「いつかは……するのかなぁ?」

 

 その日は、布団に潜り込んでもしばらく寝つけなかった。


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