捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第98話

 

 次の日、皆で新曲のアイデアを出したり、色々話し合ったりしながらも、頭の片隅にはずっとキスの事が居座っていた。さっき皆で恋愛映画を見た時も、キスシーンばかりに目がいってしまい、どんな内容だったかがあまり思い出せない。

 うぅ……私、どうしちゃったのかなぁ?このままじゃ八幡君に変な子だって思われちゃう……はっ!もしかしたら、キスくらいで動揺するお子様って思われてるのかも!?

 

『キスくらいで動揺しすぎだろ……ったく、お可愛いことだな』

 

 そうだよ!絶対にそう思われてるよ!なんかキャラ違うけど!

 

「穂乃果ちゃん、どうしたのかなぁ?」

「さっきから一人ではしゃいでるにゃぁ」

「……今はそっとしておきましょう」

「そうやね。ウチらのせいでもあるし……」

 

 *******

 

「ヒッキー?どうしたん?」

「さっきからずっとこんな調子なんですよ~。話しかけても上の空っていうか~」

「…………ああ、悪い。おはよう」

「何で朝の挨拶っ?もう放課後だよ!?」

 

 とりあえず会議を始めながらも、中々集中できずにいた。

 理由は言うまでもなく、したことのないキスシーンがやたらと頭の中に浮かんできて、他の事など手につかないからだ。

 やばい。何がやばいかはわからんがやばい。

 もしかしたら……俺は彼女から、キスくらいで動揺するお子様とか思われているのかもしれない。

 

『八幡君って、高校生にもなってキスくらいで慌てるんだぁ……お可愛いんだね♪』

 

 うわぁ……そんな風に思われてたら、うっかり死んでしまいそうだ……なんかキャラ違うけど。

 

「ヒッキー、今度は一人ではしゃいでるよ」

「うわぁ……」

「ウ、ウチ、何があったか聞いてこよっか?」

「止めておきなさい、相模さん。今アレに近づくべきではないわ」

 

 ……このまま集中力を欠いては、周りに迷惑をかけてしまう。

 ……なら俺がやるべき事は……。

 

 *******

 

「ふぅ……皆、今日はごめんね?」

「大丈夫ですよ。曲作り自体は順調に進んでいるのですから」

「衣装のイメージもかなり固まってきたんだぁ♪穂乃果ちゃんのおかげで♪」

「そ、そうなんだ……あはは」

 

 い、一体どんな衣装になるのかな?ことりちゃんなら大丈夫だけど……。

 

「まあ、せっかく恋人ができたのだもの。少しは浮わついた気持ちにもなるわよ」

「絵里ちゃん……」

 

 優しく頭を撫でてくれる絵里ちゃんの手は温かかった。

 

「あっ、でも……比企谷君が穂乃果にキスするのが恥ずかしいなら、私で練習してくれても構わないから」

「絵里ちゃん?」

 

 タチの悪い冗談を言う絵里ちゃんの笑顔は無駄に温かかった。まったくもう……。

 そこで、ポケットの中のケータイが震えだした。何だろ?ヒデコかな?

 確認すると……なんと八幡君からだった。

 周りに気づかれないようにドキドキしながらメールを開くと、そこに書かれていたのは、ただ一言。

 

「今から行く」

 

 


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