マギ 六十億年生きた女   作:支倉貢

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アクティア王国

はぁ、ようやく辿り着いたぞ、アクティア王国。

 

助かった。これで煌の連中も、こっちには手が出せない。決めた。もう二度と煌には行かねえ……!

 

さてと、時間も勿体無いから、さっさとマグノシュタットへ行こう。確か、陸路で国境付近まで連れてってくれる馬車があったよな?

よし、それに乗るか。歩くのちょっと疲れたし。

 

基本僕の旅は徒歩だ。たまに馬車や船を使うけど、陸路は基本徒歩。

天山越えは流石に無理だから馬車使うよ。

 

え?飛べばいい?転送魔法陣を使えばいい?

馬鹿野郎、そんなの全然面白くねーだろうが!旅ってのはその道中を楽しむものなんだぜ?その道先での出会った美味しい食べ物こそが、旅の醍醐味だろう。

 

ま、そういうことで……さて、どこかに馬車はないかな………………ん?

 

あ、あった。馬車。

ちょうどいいや。アレに乗ろう。

 

馬車はちょうどアクティアの舗装道路を移動しているところだった。傭兵が周りにたくさんいるのを見たところ、盗賊対策だろう。

何せアクティアとマグノシュタットの国境付近には、最近魔法道具を持った盗賊どもがうじゃうじゃいる。

まぁその対策を立てるのが自然と言っちゃ自然なんだろうが……乗せてもらえないかなぁ……。

 

「なっ⁉︎き、貴様ぁ!旦那様の乗る馬車の上で何をしている!」

 

やぁ、バレちった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬車を引くおじさんに怒られてしまったため、仕方なく降りる。

地に足がついた瞬間、無数の槍が向けられた。あはは、ヤダ怖ーい。

 

「そんな怒るなよ。ハゲるぜ」

「誰がハゲるかっ!何者だ貴様!」

「ルジク・ヴィ・アルストラトス。長いからアルトと呼びたまえ」

「名前を聞いているんじゃない‼︎」

 

あっれぇ?何者だって訊かれたから答えたのに。

もっとこう……何者だ!と訊かれたら!答えてあげるが世の情け……みたいな感じがよかったのかな?

 

うーん、どっちにしろ掴みは失敗してしまったみたいだ。

残念。乗せてもらえないかな。

 

「別にその中にいる人を狙ったわけじゃない。ちょっとマグノシュタットへ行く足として使ってやってもいいと思ってね。ってことだ。乗せてくれ」

「乗せるか!どんだけ上から目線なんだ!」

「ここまで傭兵雇っといて屋根の上に乗る僕に気づかないとは、世も末だねぇ」

「この女ッ……‼︎」

 

あ、やべ。これは本気で怒らせちったかも。

まぁいいや。向こうの堪忍袋の緒が切れるのが早すぎるだけだ。

 

ヒュンッ

 

風を切る音と共に、槍が僕に突き立てられた。それを、体を逸らして躱す。おっと危ない危ない。

ありゃりゃ、余計なこと言っちゃったかな?運転手だけでなく傭兵まで怒らせちゃったみたいだ。

うーん。僕ったら本当、人付き合いが苦手だよなぁ。

 

「ごめんごめん。怒らせるつもりはなかったんだ。本当のこと言っただけだろう?生憎僕は嘘が嫌いでね」

 

この世界の真実を隠してるくせによく言うーーと心の中で毒づく。

人のこと言えないね。人のことって言っても自分自身のことだけど。

 

「あのさ、僕マグノシュタットに行きたいだけなんだ。この馬車、アクティアを北上するってことは、マグノシュタットに行くつもりなんだろ?僕も乗せてくれよ。荷台でも屋根の上でも構わないからさ」

「ふざけるな!お前みたいな卑しい女など乗せられるか。お前なんかが乗るような車じゃないんだよ。超高級なんだ。今でも偉い方が乗っている、わかったらさっさと帰れ!」

「ええ?こんないたいけな少女を路地に捨て置くと言うのかい?おじさん外道だね、悪魔だね、鬼だね」

「知るか‼︎」

 

きゃー、怒られちゃった〜。

うーむ、やる事なす事全てマイナスに向かってる気がする。

どうしたものかねぇ……。考え込んでると、馬車の窓から、ひょこっと可愛い顔が現れた。

 

……げっ‼︎

 

「なぁに〜うるっさいなぁ……って、あれ?アルト?」

 

あ、あの赤髪の年齢詐欺のガキは……煌帝国第三皇子、練紅覇!

最っ悪!煌に行かないって決めた瞬間にコレ⁉︎運がいいのか悪いのかわからなくなってきたんだけど!

 

いや……待てよ。そもそも煌に行かないってのは、フリだったのか?全てこれに繋げるためのフラグだったのか?

ふざけんな運命!僕はお前を恨むぞ堕転しちゃうぞ!

 

あ、僕元々堕転してるんだった。

いやでも……堕転してるっていうか、なんていうか……ちょっと違うかなぁ?

 

「アルトぉ〜〜!」

 

猫撫で声で、紅覇が駆け寄ってくる。僕にぎゅーっと抱きついて、スリスリと甘えてきた。紅覇はチビだから、僕の顎の下くらいに紅覇の頭が見える。かっ、可愛いだなんてこれっぽっちも思ってないんだからねっ(ツンデレ風)!

ってことだ。これっぽっちも可愛くねえ。気持ち悪いから離れろ。

 

「やめろ。触るな寄るなクソガキが」

「えぇ〜〜?でもその割には引き剥がせてないけど?素直じゃないね〜」

「うるせえ、僕はか弱いんだ。バカでかい剣振り回せるお前とは違うんだよ。消えろ」

 

肩にまわされた手を引き離そうと紅覇を押し出すが、べったりくっつく紅覇はしつこい。うぜえ‼︎ホントうぜえ‼︎

ってことで魔法発動。浮遊魔法で浮かされた紅覇を少し離れた場所に落とす。

尻餅をついた紅覇は腰を上げ、むすっと頬を膨らませる。

 

「何するんだよぉ!」

「当然の結果だ。おじさん、やっぱやめるわ。マグノシュタットへは歩いて行く。お前の車には乗らん」

「え?アルトもマグノシュタットに行くの?」

 

可愛く見上げてくる紅覇。

おい、何で腕にしがみつく。暑いんだよバカ‼︎

 

「僕もマグノシュタットに行くんだぁ。ねぇ、一緒に行こうよ」

「マグノシュタットに?……あぁ、なるほど、会談という名の脅迫を突きつけてくるワケか」

「人聞きの悪いこと言わないでよ」

「事実だろ」

 

今煌帝国は、大陸平定に躍起になっている。バルバッドを手中に収めた次は、魔法大国マグノシュタットってことか……。

 

確かに、マグノシュタットの魔法技術や研究は、他国と比べて群を抜いている。

ひとえに、ムスタシム王国時代より魔導研究を重ねていた結果だとも言えるが、その高い技術を狙い、西はレーム、東は煌と二つの帝国に板挟みになっているのが現在のマグノシュタットの状況だ。

かわいそうに。とんだ三角関係だな。僕なら願い下げだ。

 

「ねぇ、一緒に行こっ?」

「……飯奢ってくれるならな」

「やったぁ‼︎」

 

ま、遠くまで歩いて行かなきゃいけないなんてお断りだ。僕は自分の体も大切にする旅をしている。

 

仕方ない、紅覇だけでもよしとして、さっさと馬車に乗るか。

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