さて、
うん、こうして見ると、やっぱりあんたらって危ない戦闘マニアの一族なんだね……。
だって皇族に金属器使いがこんなにいるって、ものすごい稀だよ?この分だと、金属器の所持数はシンドバッドにも劣らないかな。何これ怖い。
僕は魔装した人と戦ったことはないからな……。
ま、手合わせしたいなんて微塵も思ってないけど。
「アルト殿」
巨大な依り代を前に、僕に話しかけてきたのは紅明。実兄の紅炎とは正反対の、大人しい第二皇子だ。
ホントどうなったらそんな正反対に育つんだよ。教えて、おじいさん。
僕はどちらかというと紅炎より弟の紅明の方が好きだ。ちゃんと話せば通じるし、何より心の負担が少ない。
ギラギラしいのに変わりはないがな!マジ嫌なんだけどお前らのDNA!
「とにかく我々は、あれを倒せばよろしいのですね」
「ああ」
紅明が指さす先には、無数の黒いジン。
あっちもこっちも黒いジン。どいつもこいつも黒いジン。
この数を倒すと考えると、今からげんなりする。頼むから総員即座にくたばってくれ。
そんな事を考えてる間に、黒いジンが襲いかかってくる。僕も拳を握りしめて、敵を潰していった。
紅覇と紅玉達は、この戦い、苦労するだろう。斬撃じゃあ、粉々に斬り刻まないととどめをさせねぇ。
黒いジンはルフに還るとまた依り代に取り込まれて、延々と黒いジンを創出していく。……ホント、ウザい。
「チッ」
まとめて圧迫して潰しても、また依り代に戻ってしまう。
白瑛が風で道をこじ開け、できた道をアリババが依り代に向かって飛んでいった。しかし、依り代の堅固な
「おいアラジン……こいつぁ奴の
「ッ、そうだね……」
「アルト!あいつが力尽きるまで、あとどれくらい黒いジンを作らせればいいの⁉︎」
荒い呼吸で、紅覇が尋ねる。
人間の
その前にカタをつけてーところだが……。
「……こりゃ、一万匹くれぇ作らせねーと、力尽きねえな」
「いっ……一万匹⁉︎」
「ちょっとアルトちゃん、無茶言わないでよぉ‼︎」
「わかってるよ、無茶だってこたぁ」
紅覇と紅玉の声を聞きながら、両腕を広げる。
魔法で一度、依り代の周囲の空間に働きかけ、潰してみた。
「ぎぎ……っ、こ、のっ……‼︎」
パァン!
「ぐあっ!」
「アルト殿!」
ダメだ。奴の防壁に弾かれてしまった。
吹き飛ばされたところを、紅明に抱きとめられる。
「大丈夫ですか?」
「ああ……」
礼を言いつつ、視線は依り代から離さない。
空を覆い尽くす黒いジンの光景は、奇しくもあの時の光景と同じだった。
ムカつく。でも、僕の力にも限界がある。このままじゃ、アリババや紅明達の
ったく……粉々にしねぇと倒せないバケモンを一万匹倒せなんて、どこの無理ゲーだよ。しかもノーコンテニューでクリアするなんて、バグにも程がある。
その時、オレンジ色の影が、僕と紅明の傍らを通り過ぎた。
「紅炎⁉︎」
剣を携えた紅炎が、黒いジンに向かって突進していく。
アシュタロスの剣は、斬った相手を爆発させるという恐ろしいものだ。黒いジンに包まれても、それを爆破させて一気に倒していく。
ここで一度、紅炎は魔装を切り替えた。肩の防具に宿ってるあいつは……アガレスだ。
「大地を穿て、アガレス‼︎」
地面に向けて、蓋を開けるように手を捻る。すると、地面の一部が引き抜かれて円柱が伸びていった。
……おいおい、まさかあいつ……。
僕の予感は的中した。円柱に切り出された地面が最後まで引き抜かれると、噴き出したのはマグマ。
こいつ……無理矢理ここに火山もどきを作って、そっから
相変わらずとんでもねえ野郎だな、お前は……。でも、そんな事をすれば……。
「無茶だよ‼︎そんなの何度も死にかけるのと同じだ、おじさんの身体が辛いはずだよ‼︎止めなきゃ‼︎」
アラジンが彼を案じて叫ぶ。
無駄だ。そんなことしたって、奴は止まらねえ。
だって……。
「どいつも、こいつも、お前もお前も、邪魔だ!!!俺の邪魔をする奴は死ねっっ‼︎お前達は何だ?俺に真実を差し出せるのか?ん?お前達を片付ければ、俺はついに欲しかったものを手に入れることができる。物言わぬ愚図は死ねっっ‼︎とっとと俺にあの女と語らせろ!!!!」
ホラな!やっぱりそうだと思った!
いや、わかってたよ。お前が世界の行く末どうこうなんかより、自分の知識欲の方が大事なんだってことはわかってたよ。
ただ僕が言いたいのは苛烈が過ぎるってことなんだ!
怖い!もしこの戦いが終わって世界が守られたら、絶対に捕まってアルマトランの話をするまでまた監禁される……!
イル・イラー!もうお前降りてきちゃっていいよ!ていうか早く降りてきてくれ!僕の身の安全のために
おい黒いジン!お前ら何あいつに圧されてんだよ!この軟弱者共めがぁ!
「おいアラジン代わってくれ。アルマトランの話する役、僕と交代してくれ」
「僕だって嫌だよ!大体話すって言ったのアルトお姉さんじゃないか!」
「頼む!僕はまだうら若き乙女なんだ!まだまだこれから楽しい人生が僕を待ってるんだ!」
「まだまだこれからって、お姉さん一体いくつなのさ!この世の誰よりも長生きなんでしょ⁉︎」
あ、ホントだ。
六十億のババアがうら若き乙女って……いや、見た目だけだけどさ。でもめっちゃ恥ずかしいな、コレ。
はぁあ、あんな約束しなけりゃよかった。
もうコレ終わったら自殺しようかな。あ、無理だ。僕死なないんだった。
これからお先真っ暗な僕は、当然敵を倒していくというテンションもだだ下がりである。
そんな中、彼奴らは僕を攻撃しようとしたり、捕まえようとする。しかし、僕の
ああ、憂鬱だ。鬱っていう漢字を書くくらい憂鬱だ。
伝わりにくい?じゃあ試しにこの画面を見つめながら、鬱って漢字を書き写してごらん。……ホラ、目が疲れて嫌になってくるだろ?それくらい嫌ってことだよ。
と、その時すごいスピードで飛んできた紅炎が、アリババを攫っていった。あいつと同じ属性の金属器を持っていたために……ああ、お気の毒に。
うわ、
流石紅炎。やる事なす事全てが鬼だ。
そして、空に二つの魔法陣が現れた。どうやら、極大魔法を同時撃ちするらしい。
1型の極大魔法か……果たして、どうなるかな?
「極大魔法、『
紅炎の背後にある魔法陣から、白い炎の竜が飛び出す。
竜は依り代を包み込んで燃やした。防壁から一歩外に出ると、そこは灼熱地獄。うわっ、おっかねぇ。
次に現れたのは、大剣を携えた炎の魔人。アリババが剣を振り下ろすのと同時に、依り代を斬ろうとした。
しかし、案の定防壁に阻まれて、弾かれそうになる。
「くそっ……‼︎極大魔法でも……ダメなのかっ……!!?」
「奴に炎をくれてやれ、アシュタロス!」
紅炎が竜に指示を出し、剣に竜が巻きつく。同系統の魔法を重ねたことで、その相乗効果で剣が大きくなった。
そして……ついに、あの防壁にヒビが入った。
「うおおおおおおおっ!!!」
「どうした?情けない奴だなぁ、もっと力を出せ‼︎」
「うるさいな、わかってるよ‼︎」
アリババの渾身の一撃ーー極大魔法『