紅炎とアリババの極大魔法で、何とかイル・イラーを引きずり降ろす柱は断たれた。
しかし、戦いは終わってない。柱を斬ることはできたものの、依り代は斬れてなかったのだから。
兎にも角にも、依り代を潰さねえ限り、安心はできなかった。
「ていうか紅炎、何であの白い炎、消えてねえんだ?極大魔法はとっくに終わったろ」
「アシュタロスの極大魔法の白い炎は、俺が命じぬ限り永遠に消えはせん。このまま放っておけ。防壁が破れなくとも、そこから這い出てきた黒いジンは産まれた途端に灰になる。依り代もやがて
「怖っ!何それお前怖っ!」
だったら最初っから極大魔法撃てよ!とも思った。
でも、戦いが早々に決着することはつまり、僕の自由が奪われることを指している。それはそれで、いいのか悪いのかわからなくなってきた。
紅炎とアリババが、火山から
しかし、空を無数の手が覆い尽くした。
「⁉︎」
手は、依り代から出てきている。その手は火山の火口に我先にと入っていき、やがて火を消してしまった。
その手が依り代に帰ると、今度は黒いジンまでもが依り代に戻っていく。そして、全ての黒いジンを取り込み、依り代は人型になった。
「……何だ、あれ……」
「ご存じないのですか?アルト殿」
「ああ……あんなの、見たことねぇ」
あっちの世界でやり合った時は、少なくともこんなのはいなかった。先程の丸い形よりも随分小さくなったが、油断はできない。
……ていうかあいつ、さっきどうやって火山の火を消したってんだ……?
そいつが手で身体に触れると、覆っていたアシュタロスの白い炎が消えていく。
魔法を無効化してる?いや、あれは炎からルフを奪ってるのか……。
………………………………は?
一瞬、思考回路が停滞した。
ちょっと待て、僕は今何てった?
まさか………………あいつ、イル・イラーと同化してんのか⁉︎
「アルト‼︎」
気づいた時には、僕は奴に向かっていった。拳を握りしめ、ありったけの力魔法を込めてぶん殴る。
間に合わなかった……。くそッ……くそぉっ‼︎
ブワッ‼︎
「っ‼︎」
不意打ちで倒れた依り代が、無数の手を広げて僕を追いかける。
誘い込んだところで、僕の
しかし、その間にも依り代はイル・イラーを引き降ろそうとしていた。
それを阻止しようと、アリババが依り代に斬りかかるが……依り代の手から発される防壁に、傷一つ付けられない。最終的には奴の手が掠り、地面に落ちてしまった。
「アリババくん‼︎」
それに続いて、紅炎も応戦するが、奴の手に捕まる。
一瞬でマズイと察した僕は、風魔法で依り代の手を斬り落とし、紅炎は手の中でそのまま落ちていった。
「っ……‼︎」
やっぱり。手に触れられた紅炎とアリババは、魔装ごと皮膚が引き剥がされていた。
もし魔装無しだったなら、即座に肉も溶かされ、死んでいただろう。あまりに痛々しい姿に、思わず歯を食い縛った。
「ヤロッ……‼︎」
僕が飛び出す前に、凄まじいオーラに思わず立ち竦んだ。
そのオーラが発せられているのは……
「私のお兄様とお友達に…………何してくれんのよっっっこの化け物が!!!!」
「紅玉‼︎」
激しい怒りをもって、紅玉が単身依り代に挑む。
そうだった。紅玉は一度怒らせると、めちゃめちゃ怖いんだった……。いや、ていうか練家一族全員に言えることなんだけどね、うん。
「『
螺旋状の水の刃は、依り代には効かない。ならばと、紅玉は無数の槍を生み出した。
「穴だらけにおなりッッ!!!『
ドドドドドッ‼︎
次々と襲い来る水の槍を手で防いでいく依り代。
しかし、手以外の場所に突き刺さった槍が、依り代を貫通した。
「もう一撃!!!!」
なるほど、やはり手以外の場所を攻撃されると、奴は弱いらしい。紅玉のおかげで勝機が少し見えてきた。
アラジンが砂でウーゴを作り上げる。僕も風魔法を使い、竜巻を起こした。
「いくぜ。『
手を振って、竜巻から鎌鼬を飛び出させる。三体のウーゴも、熱魔法を依り代に飛ばした。
紅玉の攻撃で体勢を崩したところを狙われ、依り代は防戦一方。しかし、ぐんと近づいて、砂からルフを奪って回復しやがった。
「チッ、どうすりゃ……」
「闇雲に動くな。紅明!お前が指揮を執れ!」
「承知しました、転送します。紅覇、紅玉、白瑛殿‼︎」
「「「はい!!!」」」
紅明が転送魔法陣をそれぞれ三人の前に作る。
転送されると同時に、白瑛は極大魔法を放った。
「極大魔法、『
扇の一振りで、巨大な竜巻が依り代を襲う。高く舞い上がったその先には、紅覇が。
「極大魔法、『
ベコッ、と依り代の腹が凹み、海に突き落とされる。その下で待ち構えていたのは、紅玉だ。
「極大魔法、『
巨大な水の刃に貫かれ、依り代に大きな穴が空いた。そして、今度は僕とアラジンの同時攻撃。
「『
「『
全員の連続コンボで、依り代を追い詰めていく。フェニクスの魔法で復活した紅炎とアリババも、それに参加した。
極大魔法を放った上、さらに連発で魔法を使用しなければならない。一瞬も気が抜けないし、休めない。みんな
「『
「『
「『
全員の渾身の魔法を、紅明の作った転送魔法陣に放つ。それが一つにまとまり、依り代に炸裂した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ」
さて……これでどうなるか。かくいう僕も、珍しく肩を弾ませていた。
ここまで
依り代が落ちた海に、突如大きな穴がぽっかり空く。
「‼︎……くそっ」
依り代は、海からルフを奪って、大きくなっていた。