眷族、金属器使いによる総攻撃。止めどない攻撃に、ついに依り代の防壁にヒビが入った。
しかし、もうあと少し。力が足りない。防壁を破らない限り、奴に攻撃は効かないのだ。
その時、一閃の光が防壁を突き破った。銀色のそいつは、あの無敵の硬度を誇る魔装。
「ムー‼︎イグナティウス‼︎ネルヴァ……は、どうでもいいや」
だってそうだ。ネルヴァは魔装すらできないボンボン。
今すぐに帰れと言いたいところだったが、今は少しの力でも欲しい。仕方なく無視することにした。
アリババ達先に戦ってた連中も、魔装をしようとするが、もう限界だ。
僕は地面に降りて、白瑛や紅玉に
一体何だ、と思う間もなく、金属器使い達が一斉攻撃を開始した。
それは、全員による渾身の極大魔法を、一気に放つこと。
八芒星を描き、同時に極大魔法を放つ。
大地は砕け、衝撃波で海は波立つ。
全力の魔法は、依り代に直撃した。
全員が降りてきて、粉々になった依り代を見上げた。
しかし……
「!!!」
ギュルルルルルッ
黒いルフが集まり……依り代が再び成形された。
「どっ、どうすりゃいいんだよ!!??」
極大魔法をあんな大勢で放ったというのに……依り代は、倒せない。ムーが、悔しさに地面を殴りつけた。
「くそっっ!!!!シェヘラザード様の最後の
「⁉︎最後の……?……おい、どういうことだ、ムー」
思わず、声が震えた。まさか、さっきの光は、昔シェヘラザードが言っていた、最後の超律魔法……?
「俺やお前達が再び極大魔法を撃てたのは、あのお方の恩恵だ。そのせいでも今はもう……………………」
そんな……。僕は思わず絶句した。
それと同時に、怒りが込み上げてくる。情けない。無性に自分に腹が立った。大切な友一人救えず、何もできる術はない。
何が六十億年生きた、だ。何もできねえただの役立たずじゃねえか……!
モガメット……すまねえ。こんなことになったのは、お前の闇に気がつかず、目を逸らしちまった僕のせいだ。
だから、せめて……最後に、六十億年も無駄に生きた僕から、お前に説教をさせてくれ。きっと、お前に届けるから。
「アルトッ⁉︎」
フワ、と浮遊魔法で飛び、依り代に立ち向かっていく。僕を捕らえようとする手を
抵抗する依り代の
いくらでも来いよ……所詮僕は化け物だ。てめーらのちっぽけな
「聞け……!モガメット!」
体の中で、血管が切れる音がした。
痛い。苦しい。口の中に、血が込み上げて思わず吐き出す。
「アルト!!!」
「げほっ!くっ……聞け、モガメットッ……お前は……本当に、この、ままで……いいの、か……⁉︎」
依り代の手が、僕を覆う。ルフが奪われて、皮膚が溶け出しても、僕は訴え続ける。
「お前があれ引きずり降ろしたら……お前の守りたかったもん、全部消えるんだぞ……⁉︎魔導士でもそうじゃなくても関係ねぇ……お前は、本当にそれでいいのか⁉︎最後に、もう一度……よく、考えろ……‼︎」
ぐしゃ、と。体がぐちゃぐちゃに潰された。依り代の手の中で僕は完全に溶かされ、跡形も無くなった。
「なっ……ア……アルトォォォォォォォォ!!!!」
絶望の叫びが、木霊する。誰もが、信じられない気持ちで依り代を見つめた。
あのルジク・ヴィ・アルストラトスが。
不老不死の女が。
今、目の前で死んだ。
そんな中で、たった一人、違う目で依り代を見つめる男がいた。
彼はユナン。この中で最も彼女をよく知る彼は、アルトが死んだとは思えなかった。
きっと彼女は、あの依り代の中に飛び込んでいったのだと。ユナンはそう思っていた。
変化は、すぐに訪れる。依り代が頭を抱え、動きが止まったのだ。
「アルト……もしかして、君かい?」
「えっ⁉︎アルトお姉さんが、依り代を止めてくれたのかい?」
ユナンを見上げて、アラジンが尋ねる。
「きっとアルトが、依り代の核となった人物のルフに語りかけたんだ。でも安心して。彼女は死なないよ。少し依り代のルフの中に入っただけさ」
「それって……」
「ソロモンの知恵」と、少し似ている……?これがアルト特有の力なのかはわからないが、アラジンは彼女が依り代を止めたのだと判断した。
その時、彼の耳に聞き覚えのある声が入った。
『何ボーッとしてんだ、アラジン!』
「⁉︎ア、アルトお姉さん?」
頭の中に、直接声が聞こえてくる。それは何故か、アラジンだけに感じ取られた。
「ど、どうやって僕とお話ししているんだい?」
『その説明は後!とにかく、急いで「ソロモンの知恵」でこっちに来い!』
「えっ?ア、アルトお姉さん!」
要件だけ伝えて、アルトの声は途絶える。アラジンは、モガメットのルフに会えば、きっと何かがわかると確信した。
「どうしたんだ、アラジン?さっき、アルトって……」
「……アルトお姉さんは、死んでない。一時的に体をルフに還しただけなんだ。アルトお姉さんが、あの中で待ってる。……行ってくるよ」
モガメットのルフに会いに。そう言って、アラジンは依り代に歩み寄った。
その時、彼の手を掴む人物が一人。
「待って、アラジンくん」
「ヤムさん……?」
「私も連れていって……!」
「可能なら頼む……。マタル・モガメットはヤムライハの養父だ」
シンドバッドからも重ねて頼まれ、アラジンは頷いた。そしてついに、彼だけに託された特別な魔法を使う。
「いくよヤムさん‼︎『ソロモンの知恵』!!!!」
アラジンとヤムライハの意識が、アルトの待つモガメットのルフの中に入っていった。