マギ 六十億年生きた女   作:支倉貢

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アルマトラン編
たまには昔の話をしようか


マグノシュタットでの戦いから、早いもので約二ヶ月。僕は、レームとマグノシュタットの海峡にある孤島に立っていた。

何故って?会談の会場がここだからさ。僕は一足先に着いて、準備をする、ってワケ。

 

話すって、約束しちまったからな。

"かつての仲間"にさえ話したことのない、僕の昔話。

過去を振り返るタイプじゃないけれど、イル・イラーが出てきてしまった限り、この世界を守るためにも、あいつらには話しておかなくちゃならなかった。

 

過去を知ることで、今を変えることができる。あいつらなら、きっと。

そう信じて、僕は今日語る。

 

岩場に座って、机や豪華な椅子、絨毯を用意し浮遊魔法で次々とセッティングしていく。

はぁ、ここまで準備してやってんだから、あいつらから何か貰わねえと割に合わねえな。今度ごちそうしてもらおう。そうしよう。

 

「準備、手伝おうか?」

 

背後から僕に話しかけてきたのは、ユナン。それを振り返ることもせず、宙に浮く机を眺める。

 

「いや、これくらい僕にやらせろ。お前には充分世話になった」

「気にしないで、僕は当たり前のことをしたまでさ」

「ハハッ、そうか」

 

錬金魔法で作り上げたユナンの飯は、相変わらず不味かった。こう見えても僕は舌が肥えているんだ。

……ま、世話してもらってる身で文句は言えなかったけどな。そんな友人がいるだけで、僕は幸せ者なんだから、感謝しなくちゃならねぇ。

 

チラリと隣に座ったユナンを一瞥すると、何やらニコニコしていた。

いつも微笑を浮かべているのは知ってるが、今日はやけに機嫌が良い。ちょっぴり、悪態をついてみる。

 

「何ニヤニヤしてんだ?ユナン」

「えっ?僕そんな顔してた?」

「無自覚かよ」

「うん」

「何だよそれ。気持ち悪いな」

「……辛辣だね」

「いつものことだろ」

 

僕が毒舌?まさか。

僕よりも饒舌で、その上言葉の全てに毒を盛ってくる奴なんて、この世にたくさんいるぞ。

紅明とかがそれだな。

あの野郎、僕が一を言えば、正論を交えて十を返してきやがる。それもグチグチネチネチと。お前は姑か。

 

「……まぁ、確かに良いことはあるかな」

「それでニヤニヤしてたのか?」

「多分ね」

 

ユナンが、楽しげにニッコリ笑う。

 

「だって、今日はアルトのことを全部知れるんでしょ?長年友達として一緒にいたのに、アルトったら自分のこと何も話してくれないんだもの」

「そうだったか?」

「そう。だから今日、アルトのことを知れるのが、とても嬉しい」

「……そう、か」

 

そう言われると……ちょっと照れくさいかな。なんて。

 

「さてと、アルト!もうすぐアラジンやシンドバッド達が来る。今のうちに演出を考えておこう!」

「おっ!いいなそれ。やっぱとことん盛り上げとかねーとつまんねぇもんな。よし、じゃあーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ついにシンドバッドと紅炎がやってきた。

それぞれ護衛か脅し用に、シンドバッド側はヤンバラの一族を、紅炎はファナリス兵団を仕込んでくる始末。

お前ら話し合いに来たんだろうが。どーしてこういう時でも、いがみ合いを一時中断できねぇかね……。ま、それも人間らしさか。

 

ユナンもアラジンも、そして彼の友人でシェヘラザードの息子、ティトス・アレキウスも現れ。

 

残る登場人物は、僕一人となった。

みんな、僕を探してキョロキョロと辺りを見回す。

 

「バカかお前ら。僕はずっとさっきからここにいるぜ」

 

シンドバッドが僕の声に反応して、机の真ん中に目をやった。

僕がセッティングしたこの机は、横に長いものとなっている。反対側には紅炎が座り、これで相対しているわけだ。

 

その机の、ちょうど真ん中辺り。半分に割ったら、ちょうど線対称になる地点。

そこに、僕は立っていた。

 

「アルト‼︎」

「やぁ、驚きすぎだぜ、シンドバッド」

 

驚愕の色を隠せない表情のシンドバッドに、僕は笑いかける。紅炎も訝しげな視線を僕に向けた。

 

「お前、いつからそこに……」

「さっきからずっといたさ。もちろん、光の屈折魔法を使っていたが」

 

そう。僕は光の屈折を操り、誰からも見えないようにしていた。

ヤムが作った水魔法と酷似しているが……実際、僕のこれはヤムの魔法を真似たものだ。あの程度の魔法式ならば、僕はさらに簡略化して使える。

 

ま、そんなことは置いといて。

 

僕はピョン、と軽く机から飛び降り、アラジン達の元へ歩み寄る。会場に集まった全員を見渡して、言った。

 

「やぁお前ら。今日は僕の昔話に付き合ってくれてありがとう。最初に言っとくが、今日の僕はよく喋るぜ。何せ初めてなもんでな、昔のことを語るっていうのは」

 

全員の顔を今一度しっかりと見てから、指を鳴らす。ポン、という軽快な音と共に、小さな台と血の入ったコップが現れ、地面に置かれた。

 

さぁ、昔の話をしようか。

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