マギ 六十億年生きた女   作:支倉貢

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お待たせいたしました。
本当に久しぶりに文章を書きましたので、少し変な点があるかと思いますが、どうぞ目を瞑ってくださると嬉しいです。

やっぱ人間ブランクがあるとダメですね。


アルマトランとは

「そういえば、ジュダルは来ないのか?」

「神官殿は近頃、魔法の鍛錬に熱心だそうで、邪魔できない雰囲気でしてね。我々のみで対応させていただきます」

「そうか」

 

……ま、ジュダルはいい年のくせに精神面はただのガキだからな。こんな会談つまんねーって会場ぶっ壊されたら、たまったもんじゃねぇってんだ。

ユナンが少し、嘆息する。

 

「残念だね、せっかくだからマギ全員で聞きたかったのに」

「別に構やしねえだろ」

「アルトお姉さんって、結構辛辣なんだね?」

「でしょ?アルトってば、昔から人のデリケートな部分にズカズカ入り込んで、自分勝手に荒らしていくんだ。デリカシーないよね」

「お〜ま〜え〜ら〜、僕をバカにして楽しいか?楽しいだろうな、絶対!」

 

何なんだこいつら。

この僕をここまでバカにする奴なんて稀だぞ。稀有だぞ。珍しいぞ。

 

……アラジンは「ソロモンの知恵」でアルマトランの成り立ちから滅亡まで全て見てるから……もちろん、昔の僕を知っているだろう。

ユナンは……まぁ、かれこれ百年以上は付き合ってるからな。この距離感が、むしろ楽っていうか……。

 

だからって遠慮がないのはどうかと思う。

ほら、親しき仲にも礼儀ありって言うだろ!そういうことだ!

 

「おいお前ら、僕が何に対しても許してしまう寛大な心を持っていると思ったら大間違いだぞ。二人まとめて説教してやる。そこになおれ」

「くだらん。さっさと始めんか」

「すいませんすぐに始めます」

 

紅炎の殺気に負けた僕は、ユナンとアラジンへの怒りの心をねじ伏せ、一つ咳払いをした。

 

「まず……そうだな、アルマトランとは何か。それを話そう。アルマトランとは……『ジン』達や『アル・サーメン』、そしてアラジンの生まれ故郷だ」

 

僕がそう告げると、各々反応を示す。会場が少しざわついた。アリババやモルジアナも、アラジンが関わることで一気に興味を持ち出した。

僕はそれが落ち着いた頃を見計らって、続ける。

 

「……まぁ、そのアルマトランは、この世界のどことも繋がりを持たねえ『別の世界』なんだが」

「?『別の世界』⁇」

 

意味がわからない、と言いたげに皆首を傾げる。シンドバッドが口を挟んだ。

 

「アルト、それは別の"星"ということか?俺達はこの世界を一つの"天体"だと考えているのだが」

「ホシ?ホシって、あの夜空の星のことか?」

「テンタイ?何言ってんだあのオッさん?」

 

シンドバッドの質問に、さらに疑問が湧く。

ふむ、まさかこの世界が天体だと気づいている人間がこの世にいたとは。

……まぁ、シンドバッドはかつて七つの海全てを冒険した男。世界をまわっていたこいつなら、それに気づくのも当たり前か。

でも、

 

「残念だな、シンドバッド。まぁでも、お前の見立てに違いはねーよ。別の星は遠いだけで、いつか行けるさ。でも、今回話すアルマトランはそうじゃねェ。そうだな……」

 

パチンと指を鳴らし、手鏡を出現させた。それを高く掲げて、僕と紅炎やシンドバッド達を映し出す。

 

「見てくれ、僕らが映っているだろ。たとえばこの鏡の中にもう一つ世界があったとしても、僕らはどうしたってこの鏡の中には永遠に行き来できない。そんな世界が今もたくさん、バラバラに存在してるんだ」

「「「「…………はぁ〜〜……」」」」

 

鏡を仕舞って説明しても、ほとんどの奴にはピンとこなかったらしい。

うーん、ここにいるバカ共には難しすぎたかな?

ま、いっか。数人わかってくれればいいだろ。

 

「アレ?でも待てよ?永遠に行き来できないなら、どうやってアラジン達はここに来たんだ?」

 

アリババの問いに答える。

 

「それは、この世界の創造主が、こいつらを送り出したからだよ」

「創造主?」

「そうだ。世界が"こう"であることを、創った男がいる。物が地面に落ちること、大地があって空があること、ルフが司る世界の全て。それを創り上げたのが……『ソロモン王』という男さ」

 

目を閉じれば、今でもあいつらのことが思い出される。あの世界が滅びて、早千年経っちまった。

それでも、僕の長すぎる人生の中でも、素晴らしい時間だったと思う。

 

僕は彼らの元で、人を好きになることを知り、恋を知り、大切なものを失った。

それらを経験したことで、僕はこの世界も好きになった。

 

なぁ、ソロモン。お前は僕を責めるか?誰にも話すなって約束したアルマトランの話をしようとしている僕を。

ごめんな。でも、こいつらならきっと大丈夫だと思うんだ。

こいつらは僕が世界を渡り歩いて出会った、とても強い奴らだ。六十億年生きてきたこの僕が言うのだ。

まぁ、僕はお前に何と言われようと無視できる自信があるぜ。

 

さて、前置きはここまでにして。

 

「いくぜ。『遠隔透視魔法』」

 

スッと壺に手を差し出すと、光が空に映像を映し出す。空に現れたスクリーンに全員が注目した。

しかし、そこは真っ暗闇で何もない。

 

「…………何もねーな?」

「うるせーな、黙って見てろ青秀。こっからだよ」

 

僕が青秀に当たると、今度は数多の隕石がぶつかり合い、一つの星を創り上げていった。やがてその星の熱が水蒸気を生み、雨を降らせ、海ができた。

そして海から生命体が生まれ、それらは陸へと上がってきてーー。

 

「アルマトランもお前らの世界と基本的には同じだ。星が生まれ、海が生まれ、生命体が生まれ……そいつらが、長い時間をかけて進化していった。だが」

 

僕は、人差し指を立てる。

 

「ただ、一つだけ違う点があった。それは、人間以外の多くの知的生命体が生まれたってことだ」

「知的生命体?」

「そうだ。お前らよくよく考えてもみろよ。不思議だと思わねえか?何故、この世界には人間以外に一つも存在しないのだろうと。複雑な言語を操り、発達した文明を持つ生命体が……一つも」

「「「……!!?」」」

 

ぷくくっ……混乱してる混乱してる。

ん……ムーは少し違うな。やっぱり、昔一度暗黒大陸を見たからなのか……。まぁ、そんなことはいいとして。

 

「まぁとにかくアルマトランでは、そんな人間と同じような知的生命体がバラバラに、それぞれテリトリーを持って暮らしてたんだ」

 

豚みたいな知的生命体、無数の首を持つ知的生命体、もはや怪物みたいな知的生命体。そいつらが、平和に暮らしてる光景。

あいつらから見たら奇妙な、僕から見たら懐かしい世界。映し出されている知的生命体はどいつもこいつも幸せそうに笑っていやがった。

 

「アルマトランはとんでもなく広いからな、様々な種族が多く暮らしても特に問題はなかった。仲間同士での喧嘩はあっても、みんな幸せに暮らしてたんだ。だけど……」

 

画面が切り替わる。別種族同士が、武器を持ち、血を流して戦う光景だ。

 

「奴らは出会っちまった。どの種族も数が増えると外へ出て行くしかなく、強い種族が弱い種族を滅ぼしていった。時には手を組み、多くは争い……おかげで種族の数は、激減しちまった。皆殺しに遭って、絶滅するものもあった……」

 

僕も話しながら、この時のことを思い出す。

歩いても歩いても、転がるのは骸、骸、骸。死を知らない僕にとって、それは強烈だった。

 

「そんな中で、最弱の種族がいた。脆い体に爪も牙もなく、毎日を必死に生きる、アルマトラン最弱の種族……それが、人間だったんだ」

「人間!!?」

「そうだ。さあ、これから人間がいかにしてアルマトランでトップの座を築いたか……それをお話ししよう」

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