人間達はまるでアリのように大地に穴を掘って壕を作り、そこに避難していた。しかし、そこにはオークという異種族が勢力を拡大しており、人間達は住む場所を奪われ逃げてきたのだ。
降参しても、弱肉強食のこの世界では無駄。弱い種族は強い種族により、殲滅されるのみ。
ついに見つかった人間達は、オークの餌にされるのみ。捕まった人間達は泣き喚いて、助けを求めていた。しかし、彼らを救う者など誰もいない。
かくいう僕もそうだった。
僕はこの光景を、宙に浮いて見ていた。
神から直接生み出された僕は、元々魔法が使える。
そんな特権を貰っているからか、知的生命体達の僕を見る目は険しくて、まさに敵を見るそれ。まあ、それでも全然構わないのだけれど。
これが弱い者の末路だ、と僕は思っていた。力のない者は何も守れないし、ただ搾取されるのみ。そうして、たくさんの種族が消えていった。
だから、今回もきっとそうだと……そう、思っていた。
でも。
空が裂かれ、穴が開く。僕は思わず目を見開いて空を仰いだ。
穴から、"彼"が現れたのだ。僕を生み出した、"彼"が。
「貴方は……」
彼はオーク達を消し去ると、その手で人間を一撫でする。人間達は全てを理解したのか、ボロボロと涙を零していた。
彼らはただ、目の前の真実を与えられたに過ぎない。彼が創造主である、ということを。
「創造主?」
「そう、この世界の創造主がソロモンであるように……アルマトランにも、創造主がいたんだ」
シンドバッドの問いに答えつつ、さらに続ける。
「人々は彼を、『
「「「!!!」」」
僕の言葉を聞いた煌の面々は鋭く反応する。……まぁ、煌帝国の祖である白徳が言ってたのと同じだからな。引っかかりを感じるのも無理はない。
「ま、それで世界を治めるために
「人間?アルマトラン最弱のはずの人間が、何故?」
「…………さぁ?どうなんだろうね」
「……おい」
ニタリと笑って誤魔化そうとした僕に、シンドバッドが突っかかる。
「お前、今日は何もかも話すんじゃなかったのか?その素振りだと、また何か隠してるんだろう」
「いや、その理由に関しては僕も本当に知らねえよ」
「そうなのか?」
「ああ。僕はアルマトランに降り立つ時、人間になっちまったからな」
「⁇」
あー、何か余計な事を言っちまったな。
シンドバッドやムー、他の連中はみんなキョトンとした顔だけど、紅炎だけは目がギラギラしてる。ヤダボクコワイ。
「えーと……ま、後でおいおい出てくると思うけど……。僕は元々、人間として生まれたんじゃないんだ。
「つまり……アルトは神の使いってことか?」
「かなり大袈裟な言い方だけど……まぁ、それが一番近いかな」
アリババがわかりやすく要約してくれた。ありがとう。
僕の出生について話すと長くなるからな。ま、でも多分ソロモン達には話してるし。そこらへんで出てくるだろ。
さてと、話を戻そう。
「んで、だ。
「「「!!」」」
「「「魔法!!」」」
「そう。これが、アルマトランに魔法使いが生まれた瞬間だ。絶滅の危機から救われた人間達は、
それから今度は、古くから
「魔導士達は知恵を絞り、異種族同士の争いを諌めた。こうして、世界を平和に導いていった」
「やけにあっさり言うものだな。そう簡単に上手くいくものなのか?」
「バカか紅炎。そんな簡単にいったら世の中もっと楽に決まってんだろ」
溜息を吐いて、映像を眺める。そうだ。そんな簡単にいっていたら、あんな惨劇だって起こらなかったのに。
「『アルマトラン』の種族達は、価値観も言葉も生態もぜーんぶバラバラ。だから、その全員が納得し、それに従属できるような法律がどうしても作れなかったんだよ。この混乱した世界は結局、800年間も続き……その後、世界を一つにする王が現れた」
ボーッと話しながら眺めていた映像が、切り替わる。王宮から街を見下ろし、喝采を浴びるあの男の背中が映った。
「彼の名は『ソロモン』。『アルマトラン』史上最強と呼ばれた、奇跡の魔導士だ」
まるで空を割るような、大歓声。そこにはソロモンと、各種族の長達が並んでいた。
「王の中の王、『ソロモン王』よ。ついに世界は一つになろうとしております。貴方様のご偉功で……私達はこの日をどれだけ待ち望んだことか……………………」
そう言いながら感涙したアモンは、ポロポロと涙を零す。
最終的にはザガンの服で涙と鼻水を拭いていた。ドンマイ、ザガン。
しかし、長い間生きてきたアモンにとって、このような事は信じられないくらいに嬉しいのだろう。
争いばかりを重ねていた
ザガンもレラージュもバルバトスもパイモンも、アシュタロスもフェニクスもゼパルも、アガレスもヴィネアも……みんなみんな、幸せそうに笑っていた。
しかし……。
「……全てが輝かしい世界なんて、存在しない。光があるところには、必ず闇がある」
「え…………?」
ボソリと呟いた僕の言葉に、アリババが反応する。気持ち悪いくらいに口角を上げた僕は、目を細めて続けた。
「…………そしてこの輝かしい王国は、この後一夜にして滅んでしまった。その時何が起こったのか……お前らに見てほしい。それじゃあ、」
ーー昔話の、はじまりはじまり。