マギ 六十億年生きた女   作:支倉貢

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魔導士の誕生

人間達はまるでアリのように大地に穴を掘って壕を作り、そこに避難していた。しかし、そこにはオークという異種族が勢力を拡大しており、人間達は住む場所を奪われ逃げてきたのだ。

降参しても、弱肉強食のこの世界では無駄。弱い種族は強い種族により、殲滅されるのみ。

 

ついに見つかった人間達は、オークの餌にされるのみ。捕まった人間達は泣き喚いて、助けを求めていた。しかし、彼らを救う者など誰もいない。

 

かくいう僕もそうだった。

僕はこの光景を、宙に浮いて見ていた。

 

神から直接生み出された僕は、元々魔法が使える。

そんな特権を貰っているからか、知的生命体達の僕を見る目は険しくて、まさに敵を見るそれ。まあ、それでも全然構わないのだけれど。

 

これが弱い者の末路だ、と僕は思っていた。力のない者は何も守れないし、ただ搾取されるのみ。そうして、たくさんの種族が消えていった。

 

だから、今回もきっとそうだと……そう、思っていた。

 

でも。

 

空が裂かれ、穴が開く。僕は思わず目を見開いて空を仰いだ。

穴から、"彼"が現れたのだ。僕を生み出した、"彼"が。

 

「貴方は……」

 

彼はオーク達を消し去ると、その手で人間を一撫でする。人間達は全てを理解したのか、ボロボロと涙を零していた。

彼らはただ、目の前の真実を与えられたに過ぎない。彼が創造主である、ということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「創造主?」

「そう、この世界の創造主がソロモンであるように……アルマトランにも、創造主がいたんだ」

 

シンドバッドの問いに答えつつ、さらに続ける。

 

「人々は彼を、『(イラー)』と呼んで崇めた。でも本来、創造主は自分の作った世界に直接舞い降りて、干渉なんかしないんだ。なんでも『(イラー)』曰く、数多の種族が争い、世界は滅びの危機に瀕している。それを救うためには、唯一の種族が圧倒的な力を持ち、その他の種族を治め、世界を一つにしなくちゃならない、ってな」

「「「!!!」」」

 

僕の言葉を聞いた煌の面々は鋭く反応する。……まぁ、煌帝国の祖である白徳が言ってたのと同じだからな。引っかかりを感じるのも無理はない。

 

「ま、それで世界を治めるために(イラー)に抜擢された唯一の種族こそが、人間だったのさ」

「人間?アルマトラン最弱のはずの人間が、何故?」

「…………さぁ?どうなんだろうね」

「……おい」

 

ニタリと笑って誤魔化そうとした僕に、シンドバッドが突っかかる。

 

「お前、今日は何もかも話すんじゃなかったのか?その素振りだと、また何か隠してるんだろう」

「いや、その理由に関しては僕も本当に知らねえよ」

「そうなのか?」

「ああ。僕はアルマトランに降り立つ時、人間になっちまったからな」

「⁇」

 

あー、何か余計な事を言っちまったな。

シンドバッドやムー、他の連中はみんなキョトンとした顔だけど、紅炎だけは目がギラギラしてる。ヤダボクコワイ。

 

「えーと……ま、後でおいおい出てくると思うけど……。僕は元々、人間として生まれたんじゃないんだ。(イラー)が間接的に干渉を行うために、僕をアルマトランに落とした……みたいな?」

「つまり……アルトは神の使いってことか?」

「かなり大袈裟な言い方だけど……まぁ、それが一番近いかな」

 

アリババがわかりやすく要約してくれた。ありがとう。

僕の出生について話すと長くなるからな。ま、でも多分ソロモン達には話してるし。そこらへんで出てくるだろ。

さてと、話を戻そう。

 

「んで、だ。(イラー)は世界を治めさせるため、人間達に己の絶対の力の一部、圧倒的な奇跡の力を与えた。それこそが、魔法だ」

「「「!!」」」

「「「魔法!!」」」

「そう。これが、アルマトランに魔法使いが生まれた瞬間だ。絶滅の危機から救われた人間達は、(イラー)にとても感激して、こう誓った。魔法の力で、与えられた使命を果たそう。理想郷(アルマトラン)を作ろう、ってな」

 

それから今度は、古くから迷宮(ダンジョン)の壁などに描かれてきた壁画を映し出す。

 

「魔導士達は知恵を絞り、異種族同士の争いを諌めた。こうして、世界を平和に導いていった」

「やけにあっさり言うものだな。そう簡単に上手くいくものなのか?」

「バカか紅炎。そんな簡単にいったら世の中もっと楽に決まってんだろ」

 

溜息を吐いて、映像を眺める。そうだ。そんな簡単にいっていたら、あんな惨劇だって起こらなかったのに。

 

「『アルマトラン』の種族達は、価値観も言葉も生態もぜーんぶバラバラ。だから、その全員が納得し、それに従属できるような法律がどうしても作れなかったんだよ。この混乱した世界は結局、800年間も続き……その後、世界を一つにする王が現れた」

 

ボーッと話しながら眺めていた映像が、切り替わる。王宮から街を見下ろし、喝采を浴びるあの男の背中が映った。

 

「彼の名は『ソロモン』。『アルマトラン』史上最強と呼ばれた、奇跡の魔導士だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで空を割るような、大歓声。そこにはソロモンと、各種族の長達が並んでいた。

 

「王の中の王、『ソロモン王』よ。ついに世界は一つになろうとしております。貴方様のご偉功で……私達はこの日をどれだけ待ち望んだことか……………………」

 

そう言いながら感涙したアモンは、ポロポロと涙を零す。

最終的にはザガンの服で涙と鼻水を拭いていた。ドンマイ、ザガン。

 

しかし、長い間生きてきたアモンにとって、このような事は信じられないくらいに嬉しいのだろう。

争いばかりを重ねていた異種族達(かれら)が、このように手を取り合い生きていこうとするなど。

 

ザガンもレラージュもバルバトスもパイモンも、アシュタロスもフェニクスもゼパルも、アガレスもヴィネアも……みんなみんな、幸せそうに笑っていた。

しかし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……全てが輝かしい世界なんて、存在しない。光があるところには、必ず闇がある」

「え…………?」

 

ボソリと呟いた僕の言葉に、アリババが反応する。気持ち悪いくらいに口角を上げた僕は、目を細めて続けた。

 

「…………そしてこの輝かしい王国は、この後一夜にして滅んでしまった。その時何が起こったのか……お前らに見てほしい。それじゃあ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー昔話の、はじまりはじまり。

 

 

 

 

 

 

 

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