やってきたのは、砂漠の国、エリオハプト。
入ったはいいものの……。
「待てぇ女ぁ!」
「止まれえええ!」
エリオハプトの兵士達に、追いかけられる。
うーん……どうしてこうなった?
エリオハプトの国境を越えて、街を散策していた僕は、一番賑わっている商店街に向かった。
エリオハプトのパンは最高なんだよね。硬いけど。
ってことで、僕のお気に入りのパンを購入して、食べ歩いていた。
そしたら、少し商店街を抜けた辺りで、誰かにつけられてる気配を感じた。
んー、流石。僕ってモテモテだなぁ。
少し足早で逃げていると、向こうも僕を逃がすまいと焦ったのか、走ってきた。
あーもう、めんどくせーな……。いくら心の広いアルトさんでも、ストーカーは許さねえぞ?
しゃーねえ、もうちょっとこいつらに付き合ってやるかな……。
で、冒頭に戻る。
はぁ、めんどくさいな。もうヤダよしつこいよもう。
かれこれ五分くらい走ってるけど、体力もないし足の遅い僕はそろそろ限界だ。息が苦しい。誰か助けて。
「待て!ルジク・ヴィ・アルストラトス!」
ん?何で僕の名前を知ってるの?
と、同時に、僕は自分の足に引っかかって、ずべーっと顔からダイブするようにすっ転んでしまった。
そしたらすぐさま、取り押さえられる。あぁ……僕は一体どうなるんだろう……。
「久しいな、アルト」
「久しいな、じゃねーよ。人攫い紛いのことしたクセに」
兵士に捕まった後、連れてこられたのは王宮。
そこの謁見の間からさらに人払いされて、今部屋にいるのは僕とエリオハプト国王、アールマカン・アメン・ラー。
どうやら、僕を攫うように命令したのはこいつらしい。相変わらずはた迷惑な奴だ、まったく。
しかも兵士の話によれば、僕がこの国に来るのを待ち構えていたというのだ。
国境の警備を強化したのは、それが理由か。うーん、今回もバレずに行けたと思ったんだけどな〜。
「相変わらず世界中を巡っているのか。もうそろそろここに腰を落ち着けたらどうだ?」
「ヤダね」
「冷たい奴め」
「冷たくて結構。僕は誰か一人のものにはならない」
僕とアールマカンが会ったのは、今から二十年も前。
初めて会った時から何となくわかってたけど、こいつ僕に惚れてるな。
「お前さ、僕のこと好きだろ?なぁそうだろ」
「お前のことを好き?そんな物好きがいるのか」
「あれ?違うの?」
「少なくともお前を好きになるような男は、相当な物好きかつまみ食いを好む輩だろうな。そんな面白みのない身体では何も楽しめんだろうに」
「あん?」
おいこら。誰の胸がまな板だって⁉︎
アールマカンの失礼な一言にイラつき、チッと舌打ちを立てる。
そんなことを言いに連れてきたのならさっさと解放しろ!僕は忙しいんだ!
出してもらったミルクティーを飲み干して、椅子から腰を上げた。
「じゃ、僕行くから」
「待て、アルト」
「ばいばーい」
アールマカンの制止を無視して、窓の外から飛び降りる。しかし次の一言で、僕の思考は停止した。
「パンを忘れているぞ」
……ん何ィ⁉︎
ピタッと空中で浮遊魔法を使い、フヨフヨ浮いて先程の部屋まで飛んで戻った。
窓から袋を差し出す彼に、指をさす。
「そーいう大事なことは早く言え‼︎このバカ!」
「忘れるお前が阿呆だ」
「ふん!」
悪かったな、阿呆で!
べーっと舌を出して、浮遊魔法を消してそのまま落下した。
さて、次はどこに行こうか。
「……相変わらず可愛い女だ」
見送るアールマカンが、普段閉じている眦を少し下げて微笑んでいたなんて、僕の知ったことじゃないーー。