Fleet Collection 業火が燃え広がる世界 作:夜間飛行
深海棲艦によるヨーロッパ同時テロ攻撃が開始された。ヨーロッパ中が大混乱に陥る中ドイツの海軍基地から深海棲艦の総攻撃を受けているという報告が届く。これに対し各国軍は艦隊の派遣を決定した。
ドイツ ヴィルヘルムスハーフェン海軍基地
「クソ!レインゲン中佐が戦死!」
「あのくそったれ戦車野郎に特大のカウンターパンチをお見舞いしてやれ!」
海軍基地ではドイツ海軍及び陸軍の応援部隊が深海棲艦と必至の抵抗を続けていた。
「ちくしょう!艦隊はまだか!?」
「もうそろそろ来るはずです!」
「格納庫、弾薬庫、司令室は何としても死守しろ!」
「了解!」
ドイツ上空 米海軍部隊
「降下開始ポイントまであと3分!」
機内ではすでに多くの艦娘および兵士が降下準備を終えていた。それを確認した旗艦アイオワが全員の前に立ち声を出す。
アイオワ「この場に臆病者はいますか!?」
全員「いるわけがありません!!」
アイオワがボタンを押すとブザー音が鳴り響き後部ハッチが開いていく。そこから強風が機内に吹き込み彼女のヘルメットからはみ出たブロンドの髪が靡く。
アイオワ「Are you ready?
全員「
アイオワ「Go,Go,Go,Go,Go!」
彼女の号令とともに艦娘と兵士が大空へと飛び出す。アイオワは全員が飛び出したのを確認すると上を見上げた。
『
後部ハッチの上にペンキで書かれている言葉だ。このペンキ文字は彼女が出撃前に出撃する艦娘や兵士たちに向けて書いた文字なのだ。まさに海兵隊と艦娘の精神を体現したような言葉である。アイオワはノーフォークにいたのだが2056年2月にノーフォークは深海棲艦の襲撃を受けた。大破状態の彼女は随伴艦の捨て身の援護によって基地を脱出できたが助かったのは彼女だけだった。その後いつ襲われるかもわからない海域を命がけで進み400㎞離れたフィラデルフィアまで奇跡的に脱出することができたのだ。あの時にもっと私に力があったならば。彼女はいつもそのように悔やんでいた。そして今度仲間がやられそうになっていたら私が捨て身ででも助けよう。そのようににも思っていた。もうあんな思いはしたくない。だからみんな死ぬな。生き残れ。そんな願いを込めて彼女は文字を書いたのである。
アイオワ「OK. Let’s go!」
そんな考えを振り払い、彼女は目の前の任務をただ遂行することだけを考えることにした。再度機内を確認すると整備員が声をかける。
整備員「神の御加護を!」
アイオワはそっと微笑み敬礼をした。そして彼女も仲間の後を追った。
日本海軍部隊
一方長門たち日本軍部隊はすでに降下を開始していてそれぞれの部隊に分かれ基地を目指していた。基地はもうすでに見えている。あちこちから真っ黒な煙が立ち上がっていて味方は奮戦しているようだが早くしないと限界を迎えてしまう。だが神はあまりにも非情だった。
陸奥《長門!敵機後方より接近!》
長門《もう少しだというのに!》
長門(この高速移動のなか主砲を撃つのは危険すぎる。そして機銃を撃とうにも照準を合わせるのが難しい。仕方ない)
長門《あそこで振り切るぞ!》
長門は目の前の高層ビル群を示した。
全員《了解!》
ビル群に突入すると姿勢制御や急旋回で敵機を振り切ろうとするが敵もなかなかの手練れでぴったりとついてきた。街は深海棲艦機の襲撃を受けたのだろうか所々建物が崩れ荒廃し人っ子一人いない状態だった。長門たちはそんな街の空を猛スピードで飛びまわっている。敵の攻撃を避けながら飛んでいるとある程度形を保ちながら目の前の通りをふさぐように倒れているビルが目に入った。そしてそのがれきの間にはわずかにすき間が空いている。
長門「全員!針に糸を通せ!」
全員が驚愕した。確かにすき間はあるが問題は高さだ。高さは人が一人立てるぐらいしかない。だがもう後には引き返せない。全員が覚悟を決めすき間へ接近した。小さな穴だがまるで死神が大きく口を開けているように見えた。死神の口へと突入する。一瞬の恐怖感が通り過ぎる。危なかったが全員無事に突破できた。ちなみに敵機はビルを避けようと急上昇するも間にあわずビルに激突した。
秋月《敵機墜落!墜落を確認!》
長門《ようやく振り切れたか。全員無事だな。基地へ向かうぞ!》
基地の沖合へと急ぐ。どんどん高度を下げていき基地の上空を通り過ぎる。敵兵の黒い血と味方の赤い血があちこちに落ちており血の海の中に無数の骸が転がっていた。轟音がしたと思えば敵戦車が吹き飛び無残な残骸を晒す。味方はとうに限界を越えていた。
ドイツ海軍
沖合では激しい海戦が行われていた。味方の航空支援はあるものの徐々に押されていきドイツ海軍はもう壊滅寸前だった。
ビスマルク「プリンツ!こちらの損害は!?」
プリンツ「ティルピッツ姉様、シャルンホルスト姉様、私とリュッツオウが大破・・・ヘッセンとメクレンブルク、グラーフが大破寄りの中破状態です。全艦弾薬、燃料共にギリギリです・・・他はもう・・・いません」
ビスマルク「なんてことだ。我が栄光あるドイツ海軍が・・・!!プリンツ!避けろ!!」
プリンツ「きゃあ!!」
万雷のような砲撃が聞こえ、プリンツの周りに水柱が乱立する。
プリンツ「あ・・・アア・・・ああ・・・」
水柱が消えるとそこには艤装がボロボロになり血まみれで倒れているプリンツがいた。
ビスマルク「プリンツ!!」
プリンツ「・・・お・・・おえ・・あ」
言語不明瞭になっていてかなり危険な状態だった。ビスマルクはタ級を睨み付けた。ビスマルクの艤装は射撃可能な砲塔は2番砲塔だけだった。しかもその2番砲塔も2本あるうちの1本が破壊されていた。
ビスマルク「主砲射撃用意!」
副艦長妖精「ビスマルクさん!この状態では艤装が射撃の衝撃に耐え切れません!」
ビスマルク「構うもんか!私の命の一つや二つぐらい仲間を救えるならくれてやる!」
副艦長妖精「艦長!艦長も止めてください!」
艦長妖精「・・・射撃用意」
副艦長妖精「艦長!!」
ビスマルク「ありがとう・・・艦長」
射撃要員妖精「・・・砲弾装填完了」
ビスマルク「目標正面タ級!Feuer!」
砲弾は打ち出されたものの砲身が耐え切れず衝撃で折れてしまった。その衝撃でビスマルクは大破し航行不能状態に陥ってしまった。砲弾もタ級に命中したが大した効果は得られなかった。タ級はビスマルクを先に葬ろうと全砲門を彼女に向けた。
ビスマルク「ごめんなさいプリンツ・・・先にヴァルハラで待ってるから・・・」
タ級の砲門が火を噴く。キーンという直撃コースにある砲弾独特の甲高い金属音が響き渡る。ビスマルクは今生の別れを覚悟して目を閉じた。だが代わりに聞こえたのは砲弾が空を切る音とはるか後ろで炸裂する音だった。ビスマルクはゆっくり目を開けると両手、両足、水面に映る自分の顔の順番に見て状況を整理しようとした。
タ級「アア・・アアア・・・アア・・・・ア」
声のした方向を見るとタ級が悶え苦しんでいた。左手で抑えた左目から黒い血が溢れ、右手は肘から先がなかった。足も血で真っ黒に染まっていた。
???「ギリギリ間に合ったか」
ビスマルクは声のした方向を見た。
ビスマルク「長門!!」
長門「大丈夫か?手酷くやられたものだな」
ビスマルク「私のことはどうでもいい!早くプリンツを!」
長門「長良と由良はビスマルクとプリンツの曳航を、第六駆逐隊はその護衛を頼む!他はそれぞれ敵を撃破せよ!」
長良・由良・第六「了解!」
長良達はビスマルク、プリンツをつれて戦線を後退した。
長門「さてと・・・私は・・・・」
長門はタ級を見た。その目は日本刀のように鋭く野獣のように血に飢えていた。
長門「目標正面タ級!全砲門斉射!」
最強の41cm砲が吼える。
ハンブルク
加賀たちは渡り廊下にいた。超小型ドローンを飛ばし監禁されているホテル内を調べるためだ。
瑞鶴「ホテルへの侵入に成功。調査を開始するわ」
ドローンが目標の部屋へ進んでいく間に顔認証システムが超高速で敵兵の顔をデータベースに記録していく。
目標の部屋に到達すると換気口から中に入った。そこには敵兵4人と真っ黒なフードを被り、フェイスガードで顔を覆った謎の人物がいた。拳銃を所持しており、目の前にはドイツのラルシュタイン首相の秘書が座っていた。彼はどうやら負傷しているようだった。謎の人物が変声機で喋り始める。
???「人間トイうのハ皆いツか死ぬ。罪のアル者、ない者。要ハいツドう死ヌかそレだケよ」
ラルシュタイン「我々は皆神に生かされている!殺しても何の意味もないぞ!」
???「分カッていマせンネ」
その人物は秘書に拳銃を向け、頭を撃ち抜いた。
???「大キナ意味がアリまス」
加賀「人質が殺されました。突入を開始します」
アトラス指揮官《了解。司令部よりビデオリンクを受信》
霧岡『アトラスの力を見せつけてやれ。これ以上深海棲艦をのさばらせておくわけにはいかない。今がたたく時だ。彼らを救助すれば資金面でのバックアップが期待できるし、この地域への介入が可能になる。まあ気楽にしてればいい』
加賀「お任せください」
霧岡《期待しているぞ》
階段を登っていき突き当たりの鉄製のドアを蹴破った。ドアはグニャリと変形し吹き飛んだ。外ではごく少数ではあるが陸軍による降伏勧告が行われていた。大通りの上の配管に登り目標のホテルへ向かう。飛び降りるにはかなりの高さがあったが、手術のおかげで問題なく着地することができた。そこからさらに階段で降りると目の前に壁が立ちはだかった。建物内部に侵入するには屋上まで登る必要があった。
加賀「全員!マググリップ起動!」
マグクリップは強力な電磁石の手袋で壁を登るなど様々な用途がある。
屋上にたどり着くと侵入地点に行った。
金剛「mute chargeを仕掛けてくだサーイ!」
北上が持ってきたミュートチャージを仕掛けた。起動すると一帯が静寂に包まれる。すると今度は大井が同じような装置を侵入ポイントに仕掛けた。これはレーザー破壊装置である。文字通りレーザーによって遮蔽物を焼き切って破壊する装置だ。起動するとハンドルの部分がせり上がりレーザーが円形状にコンクリートの床に放たれる。ひび割れが起き崩落が始まったその瞬間、加賀たちは穴に飛び込んだ。
勝負は一瞬だった。敵兵は内部に7~8人いたが全員が気づかないままか応戦しようとするも間に合わなかったかで臓腑や脳漿をぶちまけて死亡した。
瑞鶴「人質は100m先よ」
ミュートチャージの効果が切れると瑞鶴はみんなに言った。
加賀「これより目標に向かいます」
アトラス指揮官《了解》
部屋を出てまっすぐ進んだところに目標の部屋がある。加賀たちはそこまで慎重かつ迅速に進んだ。
金剛「Clear.さあ高周波pulseを仕掛けて下サイ」
加賀たちは壁にパネルを置き映し出された映像の敵兵の反応があった影にマーキングした。
金剛「Fire!」
一斉に放たれた銃弾は敵兵を見事にとらえた。加賀たちは部屋に突入すると囚われていた人質の拘束を解いた。倒れている敵兵の顔を順番にのぞき込む加賀。どうやらあの映像に移っていた謎の仮面の人物はとっくに逃げた後だったようだ。加賀は顔を上げあたりを見回した。各国首脳と灰色の男たちは全員無事なようだ。
加賀は異変に気が付いた。各国首脳と灰色の男たちは
ラルシュタイン「人質が連れ去られた!技術者たちだ!奴らの狙いは彼らだ!」
加賀「なんですって!?吹雪さん!アトラスに連絡!すぐにこの建物から出た不審車両を調べて!」
吹雪「もう連絡しました!今データを受信中です!・・・出ました!白のバンです!場所はB447号線を南東方面に逃走中です!今から向かいましょう!」
この時まだ加賀たちは知る由もなかった。この任務が後々世界中を巻き込むとんでもない大事件を引き起こすことになるとは・・・。
『我は死なり。世界の破壊者なり』 ージュリアス・ロバート・オッペンハイマー
次回予告
技術者たちの救助に向かった加賀たち。一方長門たちのいる海域に影が忍び寄る。