真・恋姫†無双 魏在住の死神代行   作:ぐぎゅる

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ありがたいことです。


第5話

 

 

 

 協力者(一護視点)

 

 

 俺は城壁の上から忙しく動き回る多くの兵を眺めていた。

 結局、俺は華琳ーー曹操に協力する事にした。実際に盗賊を見ているのは俺を入れても少ない。僅かな手掛かりを逃したくない華琳の思惑に乗った形だ。

 因みに、その時に真名について聞いて更に曹操の真名を呼ぶ事を許された。

 理由としては俺の名前に真名がなく、真名にあたる「一護」を俺が名乗っていたから、だと言う。

 確かに、真名にあたるのは黒崎よりも一護だろうと俺も思う。だが、それにしては真名を呼ぶ事を許すのが早くないか、と言ったら。

 

『貴方は私が真名を名乗った者に真名を呼ぶ事を許さない、器の小さい人物に見えるのかしら⁇』

 

 何とも誇り高い女である。

 因みに、側にいた部下二人の真名も呼ぶ事を許された。まぁ、どちらかと言えば華琳の命令なのだが、拒否権は無かった。

 聴取的なものが終わった後、寝床となる部屋に案内された。

 ワンルームより少し広い部屋に机に椅子、ちょっとした天蓋のついたベッドと最低限の家具があり、暮らすには十分だ。

 さて、華琳の下に世話になり始めて一週間経った今。

 

「…やる事が無い」

 

 この世界に連れてこられた翌日、華琳から呼び出され「早速協力して貰おうかしら」と言われた。

 聞けば、近い内に盗賊を討伐する為に出兵するらしい。そこで、俺が見た盗賊がいないかを確認する為ついて来い、という事だった。

 勿論、協力すると言ったから二つ返事でOKしたのだが、準備に時間が掛かっているのか華琳に返事してから六日が経った。

 

「いつまでやってんだよ…」

 

 この六日、俺は尸魂界や空座町に戻る手段やその情報が無いかを探したが全く見つからなかった。

 どうやら、俺をここに連れてきた奴に直接聞かないとダメなようだ。

 

「黒崎、貴様‼︎ こんな所で何をサボっているか‼︎」

 

 ボンヤリと考え込んでいるとうるさい怒鳴り声が聞こえてくる。

 視線を横に移せば、黒髪のデコッパチーー春蘭がいた。

 

「…何だ、春蘭かよ」

「何だとは何だ貴様」

「別に。つーか、そんな怒鳴るなよ。事実やる事が無いんだからよ」

 

 そんな事を言うと、また怒る春蘭。

 因みに、名前は夏侯惇元譲。華琳の部下の中では一番偉いーーのだが。

 

「で、何か用かよ」

「ん⁇ 別に何も無いが⁇」

「…何しに来たんだよ」

 

 何で華琳の次に偉い奴がこんな所をウロウロしてんだよ。

 つか、何で三国志の時代にサボるって言葉があるんだよ。元はフランス語のサボタージュなんだが…。

 

「にしてもよ、出兵するって聞いたのが六日前だぞ。まだなのかよ⁇」

「仕方無かろう、出兵にしても準備が掛かるからな」

「…そういうもんか」

「ところで、大剣を背負ってるからには、戦えるのだろう⁇」

「ああ。戦闘経験もあるしな」

 

 虚や破面、滅却師とかだけどな。

 

「ほう…ならばいずれ刃を交えてみたいものだな」

「また今度な。……そういや、華琳ってやっぱ強いのか⁇」

 

 前から気になっていた、華琳の強さについて聞いてみた。腕っぷし一つであの地位に就いたわけじゃ無いだろうが、あの小さな体にどれ程の強さを秘めているのか、気になったのだ。

 

「そうだな…力は私の方が上だが、決して非力ではない。力・技・心が高い水準にあるから、私が戦って勝てるかは分からん」

「あら、随分と珍しい組み合わせね」

 

 春蘭が来た方からとは逆の方から秋蘭を連れた華琳が現れた。

 華琳の後ろに控える秋蘭の名前は夏侯淵妙才。春蘭の妹だ。

 

「二人で何を話していたんだ、姉者」

「こ奴が華琳様は強いのかと聞くからな。華琳様の強さについて語り始めていたところだ」

「そうか。ところで姉者、華琳様より仰せつかった全軍の準備報告はどうした⁇」

 

 秋蘭の問いかけに、春蘭は「あっ」と拙い事を思い出した表情になった。

 …本当に華琳の次に偉いんだろうか、こいつは。

 

「申し訳ありません、華琳様‼︎ 最後発の部隊が準備中ですが、出発に影響は無いとの事であります‼︎」

「そう、了解したわ。後、これからはすぐに報告するように」

「は、はっ‼︎」

「…で、一護は何故こんなところでサボっているのかしら⁇」

 

 …どうやら、サボるという言葉は普通に使われているようだ。

 

「っても、やる事が無いんだからしかたねーだろ」

「その割には度々城から姿を消していたじゃない。何をしていたのかしら⁇」

「ダメ元で元の世界に帰る方法を探してたんだよ。ま、ダメ元通り見つからなかったけどな」

「そう。…じゃ、貴方にお使いを頼もうかしら」

「お使いって…」

 

 子供じゃねーんだから、と言いそうになるが何とか言葉を飲み込む。

 言ったらこいつは絶対からかってくる。華琳は何となく夜一さんと同じ匂いがするのだ。

 

「実は糧食の最終報告書が上がってないのよ。貴方にはそれを取ってきて貰いたいの」

「…本当にお使いだな。分かったよ」

「糧食担当の監督官は厩で馬具の確認をしているはずだ」

「おう、ありがとな」

 

 秋蘭の情報に礼を言って俺は城壁を後にした。後ろから聞こえてきた春蘭の「走れ馬鹿者‼︎」の言葉にはきっちり「うるせぇ‼︎」と返してやった。

 

  ▼

 

 厩。要は馬小屋である。

 よくアニメやドキュメントで見る馬小屋なんだが。

 

「…デケェ、な」

 

 勿論、三国志の時代の馬小屋だから現代の馬小屋に比べたらボロい印象がある。

 たが、目の前の馬小屋はアホみたいにデカく最低でも100頭の馬が繋がれている。

 出兵間近ということもあり、馬よりも人間が慌ただしく、騒がしく動き回っている。

 

「…そういや、監督官が誰か聞いてねぇ」

 

 名前はともかく、見た目ぐらいは聞いておくべきだった。

 まぁ、監督官がいるのは分かっているから、監督官の居場所を聞けばいいか。

 で、周りの連中に聞いたらあっさり見つかった。見つかったんだが、監督官は小さい女の子だった。

 後ろ姿しか見ていないが、背丈は華琳ぐらいしかない。髪の色はフードで分からない。

 つか、この時代にフードってあったのか。しかも猫耳付き。

 とりあえずフード問題を脇に追いやり、監督官(推定)に声を掛けた。

 

「ワリィ、ちょっと良いか⁇」

 

 声掛けとしてはまぁ、マシな方だ。

 オレンジの髪というのはどうにも不良っぽく見られる。今回も出来るだけ優しく言ったつもりだったのだが。

 

「ひっ⁈ ちょっと、いきなり後ろから声を掛けないでよ‼︎」

 

 俺も何度も怯えられた経験者なのでとりあえず声を荒げる事はなかった。

 だが「ひっ⁈」は無いだろう。俺はそんなに怖いだろうか⁇

 

「わ、悪かったよ。糧食担当の監督官ってのはアンタだろ⁇」

「…だったら何よ」

「華琳からのお使いで糧食の最終報告書を貰いに来たんだがーー」

「あっ、あ、貴方っ‼︎ 何で曹操様の真名をっ⁈」

 

 まぁ、事情を知らないならこの反応もやむなしなのだろうか。

 

「あー、色々あってなんか呼んでいいって許可貰った。詳しい話は華琳に聞いてくれ」

「…何でこんな得体も知れない男なんかに曹操様は真名をーー」

 

 なんかブツブツ言いだした監督官(多分)。顔も青ざめている。

 

「おい、大丈夫か…⁇」

「っ…煩いわね‼︎ っていうか、アンタ誰よ」

「今更かよ…。黒崎一護、華琳の協力者だ」

「…そういえばそんなのが居たわね。まぁ、いいわ。アンタが曹操様に真名を許されたのは分かったわ。じゃ、もう曹操様の真名を呼ばないで。曹操様の真名が穢れるから」

 

 ふんす、と鼻息荒く言い切った監督官(恐らく)はずっと俺を睨みつけていた。

 色々言いたい事はあるが、とりあえず用事を済ませないと拙い。特に春蘭あたりが。

 

「つか、早く糧食の最終報告書渡してくれないか⁇ でないと俺が怒鳴られる」

 

 そう言うと、何故か舌打ちしながら報告書を渡してきた。

 俺何かしただろうか、と内心首を傾げながらもその報告書を受け取り俺は厩を後にした。

 

  ▼

 

 一護が尸魂界、空座町から姿を消して一日が経った。

 すでに一護失踪の件は父親の一心に伝えられ、現在一護は旅に出ているという事になっている。

 そして、失踪した一護を発見すべく技術開発局が動き始め、現世側も静かに動き始めていた。

 

「…夜一様、黒崎一護の捜索ならば技術開発局が行っておりますが⁇」

「莫迦者。一つの組織で捜索するよりも複数で捜索した方が見つかりやすいじゃろう。すでに喜助も動いとるようじゃしの」

 

 現世にある駄菓子屋「浦原商店」。その浦原商店にある隠された梯子を下りた先にある、地下空間。通称「勉強部屋」。

 そこにいるのは、二番隊隊長にして隠密機動総司令官・隠密機動第一分隊「刑軍」総括軍団長を務める砕蜂。そして砕蜂と共にいるのは二番隊隊長の前任者の四楓院夜一である。

 何故現世で二番隊隊長が一護を捜索しているのか。偏に夜一と共にいたいが為である。

 

「しかし、ここに黒崎一護がいるのですか⁇」

「さぁの」

「えぇっ⁈」

「まぁ、何か気になる匂いはするがの」

 

 匂いって、それでわかるのか⁇ 砕蜂は疑問を持ちつつも夜一の横を歩く。

 捉えようによっては、二人きりのデートである。黒崎一護の捜索という名目でこのような良い目にあえるとは。

 砕蜂が喜びに打ち拉がれていると。

 

「…なんじゃ、あれは⁇」

 

 夜一の声で現実に引き戻された砕蜂が目にしたのはーー地面から生える光の穴だった。

 

「ぶるるるるるぅぅああぁぁああああっ‼︎」

 

 そして、木霊する咆哮。大気を震わせ夜一と砕蜂の肌に突き刺さる。

 二人が戦闘態勢を取り光の穴を睨みつけ、そこから出てきたのはーー。

 

「ぶるるるぁっはぁぁぁぁぁっ‼︎」

 

 ゴリモリマッチョのパン一おカマだった。


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