うめ地下ダンジョン!~~なぜか梅田の地下街が異世界のダンジョンにつながった件~   作:忍者小僧

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どうも。忍者小僧です。新作を書き始めました。前作が重たかったので、今回は、ライトに楽しく書けたらいいなと思っています。オリジナルものに初挑戦してみます。よろしくお願いいたします。


プロローグ 会社をクビになったよ

 

 

 

大阪府。

最近は神奈川県に抜かれたが、人口において日本第3位の都市。

西日本の経済の中心地であり、古くから上方文化が栄えた古都でもある。

上町台地にかつてあった難波宮は、平安京や平城京よりも古く、日本の歴史の古層であるとも言える。

そんな大阪府の繁華街といえば、キタとミナミ。

キタこと梅田には、迷宮とも呼ばれる地下街がある。

梅田の地下街。

通称「うめちか」である。

ホワイティうめだ、阪急3番街、ディアモール大阪の3つの地下街が互いにつながりあい、さらにそこに4棟の駅前ビル群の地下階層が直結している。

通路の構造は碁盤の目状ではなく、斜めに交差しあう構造が散見され、分岐路も多い。

複雑極まりないこの地下街は、まさしく日本の迷宮にふさわしい。

俺、与謝野真也(よさのしんや)はその地下街で、警備員をしている。

 

といっても、実はまだこの仕事について3ヶ月目だ。

 

これまでは、大学を中退してから10年間、ずっと埼玉県の片田舎にある某エロゲ会社でグラフィッカーとして働いてきた。

いわゆる「塗り担当」だ。

原画マンが描いた線画に、ひたすら色をつけていく仕事である。

地味な作業だ。

ベテランのチーフグラフィッカーが色合いを決め、それに従い塗っていく。

ひたすら、ひたすらに。

 

俺は子供のころからマンガやアニメが好きだった。

特に、かわいい女の子が出てくる作品が好きだった。

それが高じて、見よう見まねで絵を描くようになった。

当時は今ほど、美少女アニメが市民権を得ていなかったから、友達には隠して、家でこそこそと描いていた。

やがて、インターネットが爆発的に広がりだした。

俺も自分のホームページを開通し、そこにパソコンで描いたキャラクターを掲載するようになった。

当時大好きだったTO HEARTのマルチや芹香お嬢様。

KANONの月宮あゆ。

それから、水月の香坂姉妹。

そういったキャラクターを描いては描いては、自分のホームページに載せていた。

ある日、一通のメールが届いた。

それは、とある新興のゲーム会社からだった。

俺のホームページを見て興味を持ってくれたらしかった。

 

「うちで働きませんか?」

 

と書いてあった。

俺は少し悩んだが、大学を辞めた。

そして、そのゲーム会社に就職した。

 

俺は馬鹿だった。

そこに就職したら即座にキャラクターデザインをやらせてもらえると思い込んでいた。

でも、その会社にはすでにメインの原画マンがいた。

同人誌を出していて、そこそこ有名な人だった。

でも、いつかきっと。

俺にも出番がめぐってくるはずだ。

そう信じて、俺は色を塗り続けた。

10年間も。

だが、俺のキャラデザとしての出番は、一度もめぐってこなかった。

 

小さなエロゲ会社で働く日々は厳しい。

納期近くになれば、会社への泊り込みは当たり前だ。

寝袋を持ち込んで、社屋で雑魚寝をする。

スタッフが『逃げる』ことも往々にしてある。

その穴埋めのために、さらに作業が増えていく。

グラフィックの仕事がすべて終わっても、即座に楽になるわけではない。

スタッフ総出での、デバック作業。

デバッガーを雇う金が惜しいのだろう。

俺が働いていた会社は小さな会社だから、開発ラインはひとつしかない。

発売が送れたときは地獄だった。

売られるはずのソフトが売られない=会社に収入が入らない。

社長が「すまん! 発売まで払う給料がない!」と言い出したときは、泣きそうになった。

文句を言うと、「これで許してくれ」と、私物のエロ同人を渡された。

もう返すべき言葉が見つからなかった。

 

そんな風にして、我慢に我慢を重ね、働いてきたのに。

半年前のある日、俺は、社長に呼び出された。

打ち合わせか何かだろうかと思い、軽い気持ちでドアをノックする。

 

「入っていいよ」

 

社長のだみ声が聞こえた。

 

ドアを開けると、40代なのに頭の剥げた男が立っていた。

社長だ。

もともとは漫画家志望で、20年ほど前に一度だけマガジンに短期連載が載ったことがあるらしい。

社長は、俺の顔を見て、申し訳なさそうな顔をした。

瞬間、いやな予感がした。

社長が口を開く。

 

「あのね、与謝野くん。悪いんだけどさ。来週までに荷物、まとめてくれないかな」

「は? どういうことですか?」

「いや、そのね。つまり」

「はっきり、言ってくださいよ」

「辞めて、ってこと」

 

体の芯が、ふにゃふにゃに溶けてしまうような感じがした。

辞めて?

俺が?

10年間ずっと働いてきた、この俺が?

え?

おかしいでしょ。

待遇が悪いとか、過酷な条件に耐えられないとか、文句を言って辞めていった奴らはたくさんいた。

だが俺は、ずっと耐えて、ここで働いてきた。

なのに、「辞めて」、だと!?

 

「ちょ、ちょっと、社長、どういうことですか? 何で急に、そんな」

「あのねぇ。ウチね、お金ないんだよ」

 

ズバリと言い切られる。

 

「それに、与謝野くん、10年この業界でしょ。もう、塗り方が古くってさぁ」

「い、いや、古いなら、今風のをちゃんと勉強しますから!」

「今風のはね、外注で若い子に出したら、パッパッと送られてくるのよ。安いギャラで」

「そ、そんな……」

「ウチもね、そろそろ業態を考えなきゃって思っててねぇ。進行係とディレクターだけ内部で抱えて、ライターやら原画やら塗りやらはその時々の流行に合わせて全部外注にしちゃった方が、荷が軽くなるかなぁってね」

「きゅ、急すぎます! 俺はこれからどうしたら!」

「大丈夫、大丈夫。与謝野くんならやっていけるよ。どこかに拾ってもらえるって。君、塗るの早いじゃない。業界的にそれは強い武器だから。テイストが古いけど(笑)」

 

その日、俺だけではなく、数名の社員が社長室に呼ばれたらしい。

小さな会社の「数名」は、大人数を意味する。

社内整理が敢行されたのだ。

 

ひと月の給料から一週間分を割った量が律儀に手渡され、俺は会社をクビになった。

 

※※※

 

実家は大阪だったから、一度家に帰ることにした。

お金が惜しかったので、新宿から難波への深夜バスに乗った。

 

「くそっ! くそっ!」

 

悔しさで、バスの中では寝られなかった。

 

大阪に帰ってきたところで、どうしたらいいのかわからなかった。

両親は俺を冷ややかな眼で見た。

大学を中退するとき、こっぴどく喧嘩をしたのだ。

家を飛び出したのに、たった10年でこのざまだ。

軽蔑されて当たり前だった。

なんだか、燃えつきかけていた。

30歳だ。

今から、働き口を探しなおすなんて。

ずっとゲーム製作しかやってこなかった。

一般的な会社の常識なんて、何も知らないんだぞ。

 

結局俺は、高校時代の友人が警備会社で働いていたのを思い出し、彼に連絡を取って、とりあえずのバイト生活を始めた。

それが、梅田の地下街の警備員のアルバイトというわけだ。

 

 

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