うめ地下ダンジョン!~~なぜか梅田の地下街が異世界のダンジョンにつながった件~ 作:忍者小僧
ダンジョン。
つまりは、洞窟。
これも、アニメやゲームでよく見る光景だ。
俺はエロゲ会社に勤めていたころ(以下略)
とにかく、このごつごつとした岩肌。
秋吉台や白浜の鍾乳洞とは違う。
本能的に、これはRPGのダンジョンだと感じる。
灯りも何もないから、真っ暗だ。
だめだ、こんなところ、通ることはできない。
まだ照明がついているだけ地下街のほうがましだ。
しかし、この先はいったい、どうなっているんだ……?
俺は好奇心から、懐中電灯のボタンを押し、ダンジョンの先を照らす。
だめだ。
漆黒の闇が深すぎる。
何も見えない。
逆を言えば、それだけずっと先が長いということだ。
長い長い地下洞窟と接続しているのか?
その時。
かすかにだが、声が聞こえたような気がした。
声?
人間の?
俺は耳を澄ます。
神経を集中する。
「………っ?」
「………っ!」
確かに、聞こえる。
通りの良い声だ。
キーの高い、女性の声のような。
こんな、洞窟の先に、女性?
「………っ!!」
声が、少しずつ、こちらに近づいているような。
どうしよう。
もしも、やばい連中だったらどうする?
そもそも、人間の声のように聞こえるだけで、全く違っていたら?
獣か何かの声が、たまたま人の声のように聞こえただけだったら。
俺は今、ほとんど武器らしいものを持っていない。
遭遇するのは避けたほうがいいだろう。
再び踵を返し、階段を下りることにした。
地下一階を抜けて、地下二階へ。
恐る恐る、通路の向こう側を見る。
先ほどのアメーバーはいない。
少しだけ、安堵の息を漏らす。
さて、どうしようか。
警備員控室に戻ろうにも、地上も地下も通れる道がない。
…………。
ひどくのどが渇いていた。
そういうと、シャッターが開いているんだっけ。
俺は、成城石井の店舗内に入った。
成城石井は、関西に多数あるスーパーマーケットだ。
イカリと並んで、やや高級な印象がある。
ちなみに、俺の実家がある郊外都市には玉手と関西スーパー(通称関スー)しかなかった。
成城石井といえば、ちょっとした憧れなのだ。
「おぉ、かっこいい輸入ミネラルウォーターがある」
俺は謎の緑色のボトルを手にとって、キャップを開ける。
そしてそれを飲み干す。
美味い。
なんだか、人心地ついたような気がする。
これから、どうするかな……。
ぼんやりとそんなことを考えていると、奥の棚で、がたんっ!という音が聞こえた。
「!!!」
俺は飛び上がりそうになる。
なんだ?
なんなんだ!?
奥は……リカーコーナーだ。
続いて、鼻先に、豊饒な甘みのある匂いが届く。
これは……ワイン?
どうする?
確認するか?
ペットボトルが並べられている棚から、リカーコーナーはすぐだ。
まっすぐ歩けば、すぐに様子を確認できる。
どうする?
ペットボトルの棚のギリギリの位置からなら、リカーコーナーの奥深くに入り込まずに、ちらっと見ることはできそうだ。
俺は、警戒棒を握りしめ、リカーコーナーへと歩み寄る。
近づくほど、香りが強くなる。
ワインの匂いであることは間違いない。
ペットボトルの棚のギリギリから、覗き込んだ。
床に赤い水たまりができている。
血ではない。
ワインだ。
ワインセラーから、赤ワインが倒れたようだ。
床に、割れたボトルが転がっていた。
「なんだ、脅かすなよ」
胸をなでおろした瞬間。
もう一つ、ワインが倒れた。
「え!?」
ワインセラーの情報で、何かが動く。
それと目があった。
「さ、猿?」
猿のような生物がそこにいた。
ただし、異様に頭が大きい。
目が飛び出すほどにぎょろりとしていて、頭のてっぺんにツノともコブともつかない突起物がある。
その生物は、気忙しそうに、毛むくじゃらの腕を動かし、ワインの棚をあさっていた。
ワインがもう一つ落ち、割れる。
血のような水たまりが広がる。
さらに甘い匂いが充満する。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」
俺は走り出した。
だめだ!
この地下一階はもうだめだ。
いたるところに。
おかしな生物がいる!
俺は先ほどの階段を上り、地下一階へと逃げこもうとする。
だが。
階段を上りきった先で、何かにぶつかった。
弾力性があった。
やわらかくて、ふにゃっとしていて、でももちもちしていて、いい香りで。
なんだ、これ。
顔をうずめると。
「ひゃんっ!」
女の子の声がした。