物心つく頃から、俺は銃を握っていた。
安全装置を外し、照準を合わせ、引き金を引く。
何年も何年も、繰り返して来た。
この手が、数えきれない程の人の血で濡れた。
硝煙と銃声、悲鳴と怒号。
俺は、それしか知らなかった。
それだけが、俺の全てだった。
「は...ぁ...」
ずっと駆けてきた戦場に横たわり、俺は小さく息を吐いた。
両手に握った銃...M9はとっくに弾切れになっており、余分なマガジンは残っていない。
それだけじゃない。腹部と大腿部、そして...胸に銃弾を受けている。
心臓を一撃で打ち抜かれてはいないが、致命傷を負っているのは確定のようだ。
これは、多くの人をこの手で殺めてきた自分への罰なのだろう。
そう思うと、思わず自嘲の笑みを浮かべてしまう。
まったく...碌でもない人生だったな。
もし...再び、人としての生を神が許してくださるというのならば
「今度は...自分の意志で生きてみたいな...」
そう呟いて...俺は瞼を閉じた。
「へぇ...面白い子が居たもんだね」
ゆっくりと死を受け入れようとしていたとき、不意に声が聞こえた。
「...誰だ?」
瞼を開け、視線を向けた先に居たのは、小さな子供だった。
自分と同じアジア系特有の肌に、黒い髪。
戦場に居たとは思えない清潔感のある、純白のワンピースを纏った少女は、笑顔を浮かべたまま俺を見ていた。
「今まで見てきたけど...君、随分と面白いね」
「俺が...面白いだと?」
少女の言っている言葉の意味が全く解らない。殺し屋として育てられ、この手を血で濡らしてきた俺が面白いだと?
「うん。君が生まれてからずっと君を見てきたけど...君は何度も死んでも可笑しくない状況に陥ってたよね?そして...それから必ず『君だけは』生き残ってきた」
少女の言葉に、俺は目を見開いた。
彼女のいう言葉には、心当たりがあった。
俺が殺し屋として育てられていた頃や、戦場に立ってから今まで...何度も窮地に陥った事がある。
それも、それら全てが死んでいても不思議じゃない状況だった。
しかし...俺は今まで必ず生き残ってきた。
何時からかは忘れたが、俺と仕事に向かった者は必ず死ぬと噂され、気づいた時には死神と恐れられた。
「何故...それを知っている?」
「さっきも言ったけど、君が生まれた頃からずっと見てきたからね」
俺の呟きに返答すると、少女は笑顔で俺を見た。
「だから...君にはもう一度、人として人生を謳歌してもらおうと思うんだ」
俺に...人としてもう一度人生を謳歌してもらう。
馬鹿な、そんな事が出来る訳がない。仮に出来たとしても、それを可能に出来るのは...。
「私たち神しか居ない」
俺の考えに答えるように、少女は呟いた。
「ただ、普通に人として転生してもらうのはつまらないからね...君には、ある男の子の中で眠っていて貰おうかな。大丈夫、ちゃんと目醒める時期は決めているから」
「待ってくれ、話が急すぎて全く追いつかない。君は何を...「悪いけど、これは決定事項だよ」」
なんとか少女の言葉を整理しようとしたが、彼女の言葉に一蹴されてしまった。
それどころか、少女が俺の額に触れた途端に再び強い眠気に襲われる。
「
藁に捕まる思いで眠気に抗いながら、俺は少女の言葉を聞き続ける...というより、それしか今の俺には出来ず。
「真上遼...それが、私が君に与える新しい名前だよ」
その言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。