俺が織斑の家を捨て、海動剣…兄貴の元に身を寄せて、2年の月日が経った。
兄貴について行って最初に解った事は、兄貴は何処の国にも所属していない…所謂無国籍の私設軍「WSO」の戦闘チーム「スカルフォース」に所属する特別中尉という事実だった。
無国籍という事は国に縛られないという意味では楽かもしれないけど…よくよく考えれば、内戦などに参加した場合テロリストとしての扱いを受ける危険がある。
故に、スカルフォースは傭兵という立場で戦場に立ち、食いつないでいるという事だった。
2年の間で、俺はいろいろな人と関わってきた。
兄貴は勿論、グレンファルコン隊の皆やスカーレット姐さん、俺たちの住居兼移動手段である高性能潜水艦「スカーフェイス」のクルー達。
色々な人と関わり、様々な術を知っていった。
刀やナイフの扱い方や格闘技術、簡単な銃の扱い方や整備の方法、サバイバルの技術
そして…人を殺す術と、生き残る為の覚悟など。
生傷は堪えなかったし、特に兄貴と姐さんの2人に教わっていた時なんか、血反吐吐いて生死の境を彷徨った事だってある。
それでも…俺は折れなかった。
スカーフェイスの皆は、俺を見ていてくれた。
織斑千冬の弟としてじゃなく…一人の「一夏」として。
だからこそ、俺は折れる事なくここまで来れた。
自分を貫く為に…生きる為に。
兄貴についてきた当時13だった俺は、今年で15歳になる。
背も伸びて、今では兄貴と頭一つ分しか変わらない。
それだけじゃない。2年の間兄貴を見て育ってきた事もあって、好みや言葉遣いもすっかり兄貴みたいになった。
何時だったか、グレンファルコン隊の皆から「海動が2人に増えた」なんて事も言われた。
それくらい…今の俺と兄貴はそっくりだった。
他にも、変わった事はある。
14の秋から、俺は兄貴の所属するデスカプリース隊に所属する事になったのだ。
コードネームはアモン7。兄貴と連番になった。
と…結構物騒な所に居ながら俺は人生を楽しんでいる。
「おーい、一夏ぁ」
モノローグみたいな考え事をしていると、後ろから声をかけられる。
視線だけを向ければ、そこに居たのはさっき話に出てきたグレンファルコン隊の皆。
しかも全員がステンレスのお盆を持って俺の方を見ている。
…さっきから何をしてるかって?決まってんだろ。
「わーったから、並んで待ってろよ」
「早くしてくれよ?今じゃ此所での一番の楽しみなんだから」
厨房でおっさん達に紛れて料理してんだよ。
「海動」
「あ?」
スカーフェイスの格納庫に居た俺は、後ろから声をかけられた。
其処に居たのは、グレンファルコン隊の隊長…スカーレット・ヒビキだった。
「何を考えてたんだ?」
「別に、テメェには関係ねぇだろ」
「まぁな」
スカーレットの質問に素っ気なく返事を返すと、少し口角を上げてスカーレットは笑った。
「一夏が来てもう2年になるんだな」
その言葉に、俺は昔の事を思い出す。
アイツに会ったのは2年前…第二回モンド・グロッソのあった年だった。
ただの気まぐれであそこに行って、そして…アイツ、一夏に会った。
あの時は、自分の気まぐれを呪ったね。ガキが「俺を連れて行ってくれ!」なんて行って勝手についてきやがったのだから。
だから、稽古という名目で何度もボコッた。
ガキが興味半分で来る場所じゃねぇ。家で大人しくママの乳でも吸ってなってよ。
だが、一夏は折れる事はなかった。
それどころじゃねぇ。俺やスカーレット、他の奴らの技を盗んでどんどん成長していった。
そして…気づいたら、奴は此所の一員になっていた。
初めは全員、どっかの国で捨てようと考えてやがった…だが、一人、また一人と一夏と関わった奴はアイツを認めていった。
俺も、その一人になっていた。
そして、アイツは今や織斑の名を捨て「海動一夏」として生きている。
「……」
考えるのを止めて、俺は目の前に立つ相棒を見上げた。
長年コイツに乗って、俺は戦ってきた。
だが、ここ最近…コイツは本調子を出さねぇ。
「コイツを、一夏に会わせるつもりか?」
今まで黙っていたスカーレットが、相棒を見上げる俺を見て聞いてきた。
「あぁ」
「一夏なら…
スカーレットの言葉に、俺はすぐに答えを返せなかった。
長い間俺を見て育ってきた分、一夏の
それじゃあ、相棒…カイザーの全力は引き出せねぇ。
だが…
「アイツなら、出来るかもしれねぇ」
確証はねぇが、勘がそう告げていた。