東方生還記録   作:エゾ末

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10話 兄と違う性悪妹

 

 

 編入から1ヶ月が経った。色々と大変だったけど今となってはいい思い出……と、余裕ぶってはいるが実のところを言うと全然余裕じゃない。

 

 

「明日から体力テストと能力テストと筆記があるからなぁー。しっかり体作っとけよ。あと勉強も忘れんなー」

 

 

 そう、テストである。やばいな、体力と筆記はなんとなしにできるけど能力テストて……いまだに開花してないよ。なんだよ神、能力付け忘れてんじゃないのか? あるんならいい加減開花しろや。

 

 

 能力者はこの国でも希少らしいが、Aクラスの皆の大半は何かしらの能力を持っているとのこと。持っていないのはおれと何人かの女子だけである。正直気まずい。だっていまだにおれ、女子からの評判悪いし。

 因みに何人かの女子の中に依姫は一応入っている。なぜかというと依姫は能力を持ってはいるけど、まだ使いこなせていないらしいからだ。

 それで一回家を半壊させたことがあるとか。……どんな化け物級の能力なんだ。おれもそんな能力ほしい。

 

 

「はあ……なあ小野塚。能力持っていない奴は何を受けるんだ?」

 

「ん? なんだ、生斗は能力を持ってないのか。俺の妹と同じだな」

 

「え、お前に妹がいるのか?」

 

 

 なんだかゴリゴリな予感……

 

 

「知らなかったのか? 出席簿に書いてあるだろ。

 小野塚影女って、それが俺の妹の名前だ」

 

「ほう、知らなかった」

 

「とりあえずさっきの質問についてだが……確か能力持っていない訓練生は霊力操作のテストっていってたぞ」

 

「おおそうか、あんがとよ」

 

 小野塚の妹か、あいつの妹ってだけでゴツいイメージしか沸かない。これが偏見だってことはわかってるんだけど……。まあ、そんなの会ってみないと分からないしな!

 取り敢えず明日の試験勉強をしよう。

 

 それから数分後、おれはベッドの上で熟睡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして次の日のテスト。筆記(三教科)に続き体力テストが終わって昼飯を挟んだあと、霊力操作の試験場へ向かっていた。

 

 んーと、小野塚が言うには、黒髪でサイドテール、あとつり目って言ってたよな。

 それで綿月体長と同じぐらいのマッチョだったら悪寒がとまらなくなるな。

 そして、ついに小野塚の言っていた特徴に全て合致する人物を見つけた。

 そいつは依姫と話しながら歩いており、おれの想像を遥かに越えている人物だった。

 

 

「ゴツくない……だと」

 

 

 そう、ゴツくなかったのだ。

 ……つーかここの国の人って美男美女が多すぎやしませんかね?

 はい、お察しの通りかなりの美少女でした。顔は人形のように小さく整っていて黒髪のサイドテール、目は小野塚(兄)に似た凛々しい目をしている。身長は結構小さい。小野塚(兄)に身長を全部取られたか。かわいそうに……

 

 

「ねえ、あんたが依姫の言ってた友達?」

 

「え? ああ、そうだけど」

 

 

 うおっと!? こっちからコンタクトをとるつもりはなかったのに相手から近づいてきたぞ。じろじろ見ているのがバレたか。女って自分に向けられる視線に敏感だって聞くし……つーか依姫はどこへ行ったんだ? いつの間にかいなくなってる……

 正直初めての人と話す話題なんて殆んどないぞ。男なら下心全開トークで盛り上がるんだが。

 

 

「ふーん、そういえばあの馬鹿とつるんでいたわね、アンタ」

 

「んーと、馬鹿と言うのは歩のことか?」

 

「それ以外に誰がいんのよ! それ以外にあんたと喋る奴なんていないでしょ、このぼっち!」

 

「はあ?」

 

 

 あ、おれこいつ嫌いだ。なんだよ、いきなり人をぼっち呼ばわりしおって。

 なに? おれがお前に何をしたって言うんだ。

 

 

 ……うーん、こういう奴にはお灸を据えたいな。この我儘なお姫様……いや、じゃじゃ馬は人をいきなり罵倒した。

 おそらく、これが初めてではない、と思う。

 どうせこれまでも今のように男子を不快にさせてきたんだろう。

 いや、でもまだ完全にそうと決まったわけじゃない。もう少し様子を見て___

 

 

「ていうかアンタなんなのその髪の毛とグラサン。正直全然似合ってないしキモい」

 

 

 あ、駄目だ。こいつは絶対にこれまで幾度となく人を不快にさせてきた極悪犯だ。

 グラサンとおれが似合わないわけないだろうが。

 

 

 

 おれはこれを宣戦布告と受け取ったからな。

 

 

 

「ほうほう、こんなおチビさんにはこの“大人”の魅力が分からないようだな」

 

「な、なんですって! 今私のことを子供扱いしたわね!! このキモグラサン!」

 

 

 よーし、こいつはやっぱり小さいことがコンプレックスなようだな。これからこれを重点的に責めてやる! 生斗さんを怒らせるとどれぐらい怖いか教えてやる。

 

 

「お子ちゃまは悪口のネーミングセンスも子供っぽいんですねぇ~…………なんだとコラこのドチビ、おれは馬鹿にされても構わんがこのグラサンを悪く言うのは聞き捨てならねぇぞ」

 

「はん! なにそれ意味わかんない。なにがグラサンの事を悪く言うなよ、所詮ただの紫外線から目を守るだけの代物でしょ!」

 

「便利だろうが! しかも紫外線カットだけじゃない! 目の形にコンプレックスを持っている人でもかっこよくできるし、日光によって目が開けづらいときでも使える!

 グラサンは目にとってとても優しく、心強い味方なんだよ!」

 

「は? なに急にグラサンについて力説してんのよ! キモ! あんたなんてグラサンと結婚してグラサンと子供でも作っとけば!」

 

「グラサンと結婚できるわけないだろうが! あ、でもグラサンが付喪神になって、それが女の子だったらできる…………痛!!?」

 

「きゃ!?」

 

 

 おふ、急に後ろから木刀で殴られた。

 凄く、凄く痛い……

 折角この女を(口喧嘩で)たたきのめしてやろうと思ってたのに。

 

 

「二人とも! なんで私がいない間に喧嘩してんですか! 熊口さんに至っては訳のわからないことを口走っているし!」

 

「だって依姫ぇ~、このグラサンがぁ~」

 

 

 なっ!? こいつ、泣きやがった…………

 え、なに……これっておれが悪いの? 殆どおれ、悪くないよな? ちびとか言ったけどそれ以外はグラサンのことしかいってないよな?

 

 

「……お、おれは謝らないぞ」

 

 

 これで謝ったら負けな気がする。

 もしかしたら嘘泣きかもしれないし。

 

 

「……熊口さん、まさかこの子の事『チビ』って言いましたか?」

 

「え? ……あ、ああ言ったぞ」

 

「この子、小さいという理由で昔、いじめられていたんですよ?」

 

「はい?」

 

 

 いじめられていた? こいつが? ……いや、この塵ならありえるか。性格ひん曲がってるし。

 

 でも悪いことをしたのかもしれない。過去の精神的な傷とはそう簡単には消せないものだ。……と、前にテレビで見た気がする。

 それを抉るような行為をおれは知らずのうちにしてしまっていたんだな…………

 

 

「うぅ……」ヒッグ…

 

「……」

 

 

 ……グラサンの事を馬鹿にされたことにはいまだに怒りが収まっていないが、ここは謝った方がいいだろう。

 

 

「すまなかった。過去を抉るようなことをして……」

 

 

 

 そういっておれは頭を下げた。

 

 

 すると___

 

 

 

     ボガッッ!!

 

 

「いだ!?」

 

 

 頭を下げた直後、後頭部に衝撃が走った。

 こ、この衝撃は……殴られたのか?

 

 

「はははー! これぐらいで泣くわけないじゃんこの阿呆!」

 

 

 そう言いながら廊下の奥へと走って逃げていく小野塚の妹、影女。

 

 

「……」ビキビキ←血管が浮き出る音

 

「熊口……さん?」

 

 

 

 

 

 ……おれ、あいつ、嫌いだわ……

 

 

 

 

 そのあと、本気で霊力操作のテストを頑張った。

 そしてなんと霊力操作のテストで依姫を抜かして一位になった。

 

 あのときの仕返しにとドヤ顔を影女にしてやるととても悔しそうな顔をしていた。

 

 はっはっはっ! ええ顔じゃええ顔じゃ!!

 

 おっと、いかんいかん。ブラック生斗君が出てしまったか。

 

 自重せねば。

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