もうすぐ悲しいクリスマス♪ hell♬
Single days♪ Single days♪ Single all the days♪
今年もぼっちのクリスマス
………はぁ………。
【カルネアデスの板】
舞台は紀元前2世紀のギリシア。一隻の船が難破し、乗組員は全員海に投げ出された。一人の男が命からがら、壊れた船の板切れにすがりついた。するとそこへもう一人、同じ板につかまろうとする者が現れた。しかし、二人がつかまれば板そのものが沈んでしまうと考えた男は、後から来た者を突き飛ばして水死させてしまった。その後、救助された男は殺人の罪で裁判にかけられたが、罪に問われなかった。(Wikipedia参照)
◇◇◇
俺には霊が見える。
高校生になった今でも、気を抜くと人間と見間違えてしまうことがあるくらい鮮明に。
霊感の強い人間以外が見たら、俺の行動はさぞかし不審に映ることだろう。
俺が霊と人間の差異に気付けるようになったのは小学校高学年の頃だった。
よく周囲から独り言の多い子だと言われたが、当時の俺からしてみれば、なんで皆この人たち(霊)を無視するんだろう?なんで誰も気付かないんだろう?と無知だった俺はずっとそう思っていた。
だが、時が経つにつれ、身体が成長し知識もついてくると、俺はアイツ等のことをいつしか鬱陶しい存在だと感じ始めていた。
何より、他者から受ける好奇の視線が恐ろしかった。
アイツ等との距離を詰めただけ、自分は人間という枠からはみだしていく。
それがどうしようもなく怖かった。
だから俺は拒絶した。
アイツらの存在を否定した。
亜人である自分の運命を呪った。
それ以来、俺がアイツ等の姿を見ることは無かった。
俺は正しいことをしたんだ。
自分が幸せになれないのに誰かを幸せにすることなんてできない。
俺は自分の身を守るだけで精いっぱいなんだよ。
俺は強くなんかない。
強くなんか在れない。
その日俺は、生まれて初めて一人で本を読んだ。
誰にも邪魔されず、静かに、快適に、楽しんで。
俺は一人でいることの素晴らしさを噛み締めた。
でも、どうしてだろうか。
全てが淡泊だった。
まるで味のなくなったガムを噛み続けているような。
そんな空虚な感覚を覚えた。
見慣れたはずの自室はいつもより広く感じた。
◇◇◇
「?」
それがどうしたとでもいいたげな顔の小鳥遊。
俺が断腸の思いで捻りだした返答に対する反応がこれだ。
だが、不思議と心は落ち着いている。
普段なら貧乏ゆすり並みに動揺する俺の思考は珍しく常態だ。
何より、今の小鳥遊の眼は見るに堪えない。
そうして気付けば自然と、考えるよりも先に言葉が零れだしていた。
「簡単に言えば命の取捨選択だ」
救われた者と救われなかった者がいた…ただそれだけの話。
俺の補足に、小鳥遊はお行儀悪く机の上に、お行儀よく座ると感心したように頷く。
…やめて…可愛いとか思っちゃうから。
シリアスは大事なんだよ?
「お医者さんみたいなこと言うんだね」
…でも、その目で言われると今のセリフ軽くホラーだぞ?
過去に病院で何かあったのか勘繰りたくなるレベルで。
「小鳥遊はどちら側の人間だ?」
俺は【雰囲気を大事に】を作戦として、シリアス路線を強制執行する。
【ガンガン行こうぜ】なんて以ての外だ。
「どっち…って?」
「救われたほうか?救われなかったほうか?」
「………よく分かんないけど、救われたほうなんじゃないの?今、こうして生きてるんだし?…それが何?」
「俺にはお前が後者に見える」
「?」
「結果的にお前は助かったし助けられて生かされた。でも、お前は救われなかった。…そんな感じだ」
「…意味が分かんないんだけど」
小鳥遊の眉間に皺が寄る。
…それでも可愛いってどうなってんの君?
【ガンガン行こうぜ】寄りになっている思考を振り払い俺は続ける。
「それを言ったら、俺もお前の言ってることが理解できない。【半分の感情】?…亜人と掛けているのか?洒落が効いてて大変宜しいが、俺が亜人じゃなかったら笑い話にもならないぞ」
「それは大丈夫。だってヒッキー君は亜人だし」
「またそれか…二回目だが、その根拠は?」
小鳥遊は俺を指さすと仄かに笑みを浮かべる。
「今、笑ってるじゃん」
俺は顔を逸らす。
そして、ガラスケースに反射して映し出されている俺の表情は、気持ち悪い笑みをもって俺を迎え入れた。
そのことに、どことなく羞恥を感じた俺は口元を右手で覆い隠し、より目を濁らせて小鳥遊を睨むが、すぐに目を逸らす。
いつの間にか彼女の瞳は、いつもの目に戻っていた。
先ほどまでの表情が嘘のように晴れやかだ。
そんな俺に小鳥遊はいつもの陽気な口調で話し出す。
いつもの…か。
「亜人じゃないと笑えないんでしょ?」
「…お前って実は…バカじゃないのか?」
もしかして、外見はバカでバカ可愛いけど、中身は天才タイプなのか?
「え?うん、私はバカだよ」
はい、この子はただのバカでした。
「否定しろよ」
「?いいえ」
「…話が噛み合っているのか、噛み合っていないのかよく分からんな…」
「そうだね」
「…もういい疲れた」
俺はイチゴミルクを一気に飲み干すと席を立つ。
なにより、今のこいつの目のほうが別の意味で見るに堪えない。
「?どうしたの?」
「ゴミ捨てるついでに、ちょっと家のトイレ行ってくる。ジュースごちそうさん」
こう言えば、会話の途中でも自然に家に帰ることができると〇ちゃんねるで聞いた。
「ああ、そっか。行ってらっしゃーい」
ほら、小鳥遊もこう言って___
「__って、帰る気じゃん!!」
__くれるわけないよな。
知ってた。
本当だぞ?
「私の質問はどうなるのさ!ジュース奢ったんだから教えてよ!教えてくれるまで帰さないから!!」
「私は亜人です。ウィル・オー・ウィスプの亜人です。…じゃ」
「違う!合ってるけど私の期待してたのはそういうことじゃない!!」
ウガ―!!っと頭を抱える小鳥遊。
俺は入る時よりも随分と軽くなった扉を開いて立ち止まる。
「検討違いなことを言っていたら悪いんだが…小鳥遊の悩みを解決する方法なんて俺は知らないし、知ってても恐らくできやしない」
「…え」
「結局のところ、ぼっちは人のことを語れないんだ。他人が語っていいようなものでも無いだろうし…。悪いが他を当たってくれ」
すっと、裾が引かれる。
少し驚いたが、それも数秒ほどで離れる。
「でも!!……でも………」
尻すぼみになっていく縋るような声音に、捨て猫のような尊さを感じた俺は、普段なら言わないようなことを口走ってしまう。
「だが…その…なんだ………話ぐらいなら聞かないこともないから、その…………」
「また…な」
「…うん。またね」
扉を閉める。
廊下を歩き、生物準備室から一教室分離れた場所にある柱に俺は、傾れ掛かる。
言ってしまった…。
どうしてあんなことを…。
ぼっちの俺が、なんで自分から他者と関わろうとしてるんだ?
…くそ、今日の俺はやっぱおかしい。
帰って寝よう。
そうすれば、全部忘れられる。
明日にはいつもの俺に戻れている。
俺らしい、ぼっちの俺に戻るんだ。
そう心に決めて俺は顔を上げる。
そして___
「ああ…その、なんだ………青春だな?」
____高橋がいた。
◇◇◇
俺はその夜、枕に叫んだ。
うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!??
『お兄ちゃんうっさい!!』
嬉しくないほうの壁ドン。
どうやら俺は救われなかったようだ。
………死にたい…。
どうも、Single days 明日香です。
ついにクリスマスですね。
もう今年も終わりに近づいて参りました。
師走の月ということで何かとお忙しいことと存じますが、健康に新年を迎えられるよう、今年を駆け抜けていきましょう。
さて、第十六話いかがでしたでしょうか?
まさか16話書くのに十か月もかかるとは思いもしなかったのですが、取り合えず八幡とひかりちゃんの邂逅は描き切れたので一段落というところです。
ここからは、町さんや高橋先生、雪女の子や佐藤先生、そして小町ちゃんや何故か本作に登場してきた平塚先生も加えて、ぼっちは語れないの物語を加速させていけたらなと思ってます。
次回の更新は二月下旬を予定しております。
(もしかしたら、お正月版スペシャルバージョンを書くかも…?)
意見・感想待ってます。
それではまたの機会に
メリークリスマース!!