ぼっちは語れない   作:苺ノ恵

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第三話:適材適時

 

 

 

 

 物事において、成功を収めるために最も重要な要素は何か。

 

 それは『タイミング』だ。

 

 例えば、学校の昼休憩。

 

 周りの奴らがお友達同士机を合わせ、弁当の包みを広げ始めているとする。

 

 そんなとき問題となるのが、自分はどのタイミングで席を立つべきかについてだ。

 

 もし、俺みたいなぼっちが早々に弁当を持って席を空けると、リア充共は「アイツまた便所飯かよ~」と笑い話のネタにして、教室での居心地をそれまで以上に悪くする。

 

 …かと言って、自然に教室を出られるよう程よく時間が過ぎるまで席に座ってると、「その席使うんだから、早くどいてくんない?」みたいな目をした女子に、無言のプレッシャーを浴びせ続けられることになる。

 

 八方塞がりにしか見えないこの状況で、俺はとある活路を見出した。

 

 それは、『タイミングを計る』のではなく、『タイミングを図る』ということだ。

 

 簡単に言うと、弁当を広げる場所に困ってんなら、その悩みの種を摘めばいい。

 

 つまり、パンを買って食えばいい。

 

 購買に行ってパンを買うために早く席を立たなければならないというタイミングを自ら生み出せば、それは立派な大義名分となり、俺の行動は正当な行為へと昇華する。

 

 自分が物事のタイミングに合わせるのではなく、目的を操作することでタイミングの方を自分に適合させる。

 

 まさに完璧な計画…!!(※親はおろか、妹にも弁当作ってもらえなくなっただけです)

 

 俺は制服を翻し軽やかな足取りで購買部へ向かう。

 

 いつもより授業が5分早く終了したということもあって、戦場に赴く者達(他クラスの生徒)の姿はない。

 

 俺は悠々とコロッケパンと焼きそばパンを手に取りレジへと向かう。

 

 そして、何気なく財布を取り出すためポケットへ手を入れた時_________

 

 

 

 

 

 

「………………………ぁ」

 

 財布を教室に忘れてきたことに気が付いた…

 

 絶望に打ちひしがれる中、僅かな希望を抱いて俺は教室に戻る。

 

 俺の席は無慈悲にも女子たちに囲まれていた…

 

 

 

 

 

 午後の授業では、周期的に誰かの腹が鳴る音が聞こえた。

 

 その度に聞こえるクスクスという笑い声。

 

 その日から俺は財布をポケットに入れるタイミングに気を付けた。

 

 ………な?

 

 タイミングって大事だろ?(涙声)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 扉に激突しかけた俺は何とか体を捻って、顔面衝突だけは避けた。

 

 とは言っても、背中を強かに打ちつけたせいか全身が痛みを訴えている。

 

 ダメージが抜けるのを待ってる場合じゃねえ、俺の貞操がかかってんだ…!と痛みの走る体に鞭を打ち扉に背を預けながら立ち上がろうとする。

 

 すると急に背中の支えが無くなった。

 

 中途半端な体勢で支えを取り払われた俺は、重力に引かれるまま再び転倒する。

 

 幸いにも今回は受け身をとれたので、後頭部を強打せずに済んだ。

 

 来訪者の登場は完全に予想外の出来事だったが、扉を開く手間が省けたのは僥倖(ぎょうこう)だ。

 

 そのまま逃げようと視線を上へと向けると________凄かった。

 

 いや、他に言い方があるんだろが…とにかく…凄かった。

 

 JKってあんなの履くんだな…知らなかったぜ…。

 

 男の(さが)というのは悲しいかな。

 

 なんか、色々と元気になった。

 

 …なにがとは言わないが。

 

 悪いとは思っても後悔は全くしてない。

 

 寧ろ「ありがとう」と言いたい。

 

 しかし、相手からすれば「はいそうですか」というわけにはいかない、当然だ。

 

 スカートを押さえ後ろに飛び退いたことで初めてその子の表情が窺えた。

 

 髪は金髪。

 

 顔は整っていて普通に可愛い。

 

 真っ赤に染まった頬に、火花でも出そうな程噛み締めている八重歯。

 

 (まなじり)は吊り上がり、瞳は血走っている。

 

 うん。ぼっちの俺でも流石に分かります。

 

 …彼女は今怒ってます。

 

 激おこです。激おこプンプンm(自重)

 

 俺は上手く回らない口を必死に動かす。

 

 人は話し合えばきっと分かり合える。

 

 …まあ、俺はぼっちだからまず話す相手がいないんだけどね。

 

 自虐的な笑みを浮かべるとその子が足を振りかぶるのが見えた。

 

 …凄いのもチラッと見えた。

 

 叫び声と同時にその子の足が振り下ろされる。

 

 そして、俺は謎の幸福感と共に意識を手放した____

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近の俺、意識手放しすぎだろ…。

 

 もうちょっと意識大切にしろや…。

 

 そんなことを思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 暗闇の中、一人の老人がフッと笑みを浮かべる。

 

 顔に刻まれた皺と膝丈まで伸びる長い髭は老人の積み重ねてきた人生の証、そのもののように思えた。

 

「…来たか…我が___よ」

 

 ただその老人の呟きだけが、暗闇に木霊していた____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、九条明日香です。

まずは今回の第三話で、話が全く進んでいないことをお詫び申し上げます。

(どうしても八幡視点から書きたかったんです…。)

次回からは話が進むと思います。

読んでくれてありがとう。

感想待ってます。

それではまたの機会に
(八幡が事故で軽傷だった理由は第四話で必ず…!)
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