決して【クズの〇〇】ではないのであしからず。
文章が滅茶苦茶なので期待せずに読んで下さい。
それではどうぞ
ジーン…ジーン…と耳元で何かが這いずり回るような感覚が、じっとりと耳介を犯していく。
身体を圧迫する柔らかな重圧は、一抹の心地よさを残しては解けて、全身へと広がっていく。
じわり…じわり…と這い寄ってくるそのナニかに、得体のしれない恐怖と好奇心を抱いている自分がいる。
襲い掛かってくる衝動に、自分はただ身を任せるしかなかった。
そして_____
_____永遠のような一瞬が突如、終わりを告げる。
身体の奥底で弾けたソレは、言葉にならない程の衝撃で、自分の見ていた世界を一色に染め上げる。
身体が震える。
呼吸ができているのかも分からない。
自分という存在が何処までも希薄になって、そうして溶け合っていくような…そんな感覚。
このような経験は初めてだった。
知識なんて自分には、ほとんど無い。
それでも、このような感覚に名前を付けるのだとしたら…。
それはきっと______
◇◇◇
目が覚めた。
…が、瞼が開かない。
身体も動かない。
俺の視界は依然として暗闇に囚われたままだ。
これは、夢なのか?…と自身の状態に対して多少訝しみもしたが、体にまとわりつく重力の気怠さから、俺は現実への直視を余儀なくされていた。
(ここは…病院か?)
鼻腔に送り込まれた空気は、仄かな消毒液の香りを漂わせる。
全身を包み込んでいる暖かく柔らかなこの感触は、俺がベットに寝かされているためだと判断する。
(それにしては外が騒がしいな………カキーン?…なんだ?野球か?)
耳に届いたのは金属バットの打球音。
それに続いて、威勢のいい野郎どもの野太い声が響き渡る。
…本当に唐突で理不尽な要求かもしれないが敢えて言わせてもらう。
ナイバッチー!!…って言うのやめて欲しい。
つーかやめろ。
アレだ。
なんか「ハイぼっち!!」って言われてるような気がするから。
なんだよ、ハイぼっちって?
「こんには!!ぼっち!!」
…っていう意味か?
それとも、ハイエルフみたいな、ぼっちの上級者って意味か?
どっちにしろ殺意しか湧いてこねえな…。
(最悪の目覚ましだ…)
気分はジェットコースター並みに急降下したが、今の情報で自分の現在地は把握できた。
恐らくここは学校の敷地内にある医療機関の一角。
つまりは保健室だ。
……………で?
それでだ。
仮に、俺の予想通りだったとして…。
なぜ俺は保健室で寝ている?
どのくらい眠っていた?
一体何があったんだ?
そもそも、俺は今日の放課後何をしていた?
…………………ダメだ、思い出せん…。
俺は何か、忘れてはならないものと、忘れなきゃならないものを順番に見てきたような…そんな気がする。
そうだ…あれは確かに人だった。
じゃあ誰だ?
あれは一体誰なんだ?
_あの人の名前が思い出せんの!
あの人は誰?
忘れたくない人!
忘れたくなかった人!
忘れちゃダメな人!!
君の名前はっ…!!!
…っ…名前はっ…!!!!_____
_____『高橋』か!!!!!!?
そうだ。
俺はあの時、あの変態教師に襲われかけたんだ…。
だから俺は、折れている足を使ってまで懸命に駆けだして…!(※人はそれを逃走という)
それから俺はどうした?
思い出せ…。
思い出すんだ、比企谷八幡!童貞16歳!
お前は何のために『君の〇は』を脳内再生してまで記憶を漁っている!
…今気づいたんだが…『君の〇は』って、伏せるとこミスるとなんかエr…(自重)
ダメだ!!
童貞の弊害がここまでとは…!?
一度落ち着こう。
普段の俺なら素数を数えるところだが、ほとんど効果がないことは今までの経験から織り込み済みだ。
よって、今回は円周率を数えよう。
よし、いくぜ!
3.14………………………
ダメだ!!
俺3.14までしか知らねえ…。
そもそも円周率とか
パイ…ぱい…ぱい?___おっ(食い気味に自重)
くそ…動揺が収まらない…!!
(何が悲しくて自分の思考で死にたくなってんだ…)
まさに自虐的な思考へと陥っている俺は、何とか体を動かそうと脳から身体へと電気信号を送り続ける。
しかし、無情にも俺の身体はベットに横たわったままピクリとも動かない。
それでも、心臓が絶えず血液を全身に送り、肺が収縮と拡張を続けていることにはちょっとした安心感を得ている。
人は何かを失ってから、初めてその物の大切さを知るというが、それは案外間違っていないらしい。
よし。
もう正直に言おう。
現実から目を逸らすのはもうやめる。
だから、早く解けて欲しい…。
この_____
_______金縛りから
◇◇◇
「___えー、以上で本日の会議を終了させて頂きます。皆さんお疲れさまでした」
校長の一声で他の先生方が席を立ち始める。
教師という道を選び、それなりに教壇で勉学を振るってきた自分な訳だが、どうにも慣れないことがある。
この学校は兎に角、規模が大きい。
敷地面積もそうだが、今まで地方の学校での勤務がほとんどだったせいか、単純に人の多さに圧倒されている。
生徒の絶対数に比例して、教師の数もそれだけ必要となってくるのは自明の理だ。
まだ入学式から数日しか経っていないので、これは時期尚早なのかもしれない考えだが、それにはどうしても思うところがあった。
今日の職員会議では、簡単な自己紹介と学校内のルールや教育方針などの情報の共有化が行われていた。
長くこの学校に勤務されている先生も大勢いらっしゃって、勉強になることも少なくなかったのだが、彼らの言葉の端々から感じられるニュアンスに一抹の違和感を覚えた。
考えすぎかもしれないが、彼らは生徒をただの数字や記号として見ているような気がしてならなかった。
確かに、組織運営において個人の情報は軽視されがちだがここは学校であって戦場ではない。
生徒は紛れもない子供たちなんだ。
長い年月をかけて得てきた経験のある我々大人と違い、生徒はまだ人生というものを深くは見れていない。
見られるだけの知識も経験も足りていない。
自分という枠が不鮮明な彼らにとって、社会の中で生きている大人とは憧れと同時に恐怖を感じる存在であるはずだ。
感情を理性という名の嘘で覆い隠し、薄っぺらな笑みを浮かべては良好な関係を演じきる。
物事に折り合いをつけると言えば聞こえはいいが、要は嘘を吐くのが少しばかり達者になっているだけのことだ。
それはただ、自分の心の弱さに慣れてしまったということなんだ。
…かと言って、そういう自分は嘘を吐かないのか?と問われれば、閉口することを禁じ得ないだろう。
こうしてどれだけ良心的な理論を模索しようが、実行できなければそれはただの偽善、欺瞞になり果てる。
だから俺はせめて、生徒の気持ちに寄り添えるような教師になりたいと思った。
成績の優劣、素行の良し悪しだけでは、その
教師としての俺が彼らに教えられるのは、知識という道具の使い方…それだけだ。
俺はそのことにずっとコンプレックスを感じていた。
こうして亜人についての文献を漁っている行動の裏には、もしかしたらそういったことが理由な部分があるのかもしれない。
彼らを知ることで、今までとは違った視点から物事を視られるのではないか。
そうすれば、彼らだけでなく様々な人たちと本当の意味で語り合える…そんな未来がくるのではないのだろうか?
そう思えば、不思議と足取りは軽くなった。
だからまずは実践あるのみと、ウィル・オー・ウィスプの亜人である、とある男子生徒と話をしてみたわけなのだが…
「どうしてこうなった…?」
当たり障りのない会話で場を和ませてからの多少の下ネタ。
同性ということで、多少は砕けた話題の方がいい筈だ。
高校生にもなればその辺りのことは多感なはずだから間違いなく話題に喰いつき、いい具合に話が膨らむと思っていたんだが…。
比企谷は何か言葉を返すわけでもなく、急に走り出して扉にぶつかり、偶然にも生物準備室を訪ねてきたひかりに踏みつぶされたわけだ。
(アレは俺にも何か原因が?…いや、しかしそれでは比企谷の突発的行動に説明がつかない。そもそも怪我人があれだけの瞬発力を発揮できること自体不可解だ。だとすると…)
「…比企谷は見た目以上に思い込みの激しい性格…または、何らかの亜人の特性に由来した発作のようなものがあるのか…?」
両手を後頭部に当て、背もたれに体重を預けて背骨を伸ばす。
ポキポキと軽快な音を奏でる背骨に対して、俺の脳はぐつぐつと考えに煮詰まる音が聴こえていた。
こうして考えていても仕方がない。
そう結論付けて席を立つと、二人の女性職員が会議室の掃除をしているのが見えた。
このまま退室してしまうのはなんとなく気後れしたため、二人を手伝うことにした。
「平塚先生、佐藤先生。会議お疲れさまでした。私にも手伝わせて下さい。何かできることはありますか?」
声をかけると佐藤先生が身を強張らせて俺から盛大に距離をとる。
彼女はサキュバスの亜人で、異性を催淫する特性を持つためこうして物理的な接触、及びオシャレなどの行為を控えているのだが、こうまで露骨に避けられると少し悲しいものがある。
「おい、早紀絵…。高橋先生に失礼だろ」
「す、すみません、先輩…。…ですが…」
「謝る相手が違うだろ。…まあ、お前の気持ちも分からんではないが…」
溜め息を吐きながら佐藤先生を窘めたのは、一年生の国語の授業を担当している平塚先生だ。
入学式の際に少し話をする機会があったのだが、彼女は非常に漢らしい女性だと思った。
スタイルも良く、男装が栄えそうな美人だ。
口調もラフで男女区別なく気楽に接することができる。
生徒たちにも信頼され、とても面倒見の良い素晴らしい教師だ。
平塚先生は俺に向き直ると頭を下げて謝罪をしてきた。
「すみません高橋先生。…アイツにはあとでしっかり言い聞かせておくので」
平塚先生が拳を握りしめると佐藤先生の顔が余計に強張った。
俺はすかさずフォローをいれるために口を開く。
「いえ、大丈夫ですのでお気になさらず。佐藤先生のご事情は予め伺っておりますので」
「そうですか…寛大なご配慮に感謝致します」
平塚先生がほっとした表情で顔を上げる。
心なしか顔が赤い気がしたが、恐らく空調が効きすぎているせいだろう。
壁際にあるコントロールパネルに手を伸ばし、温度を調節していると佐藤先生が平塚先生に耳打ちしていた。
「先輩…なんかいつもと口調が違いますよ?どうしたn…グエッ!!?」
急に佐藤先生が床に崩れ落ちた。
「え!?だ、大丈夫ですか?佐藤先生!」
すると、平塚先生が怖い程の綺麗な笑みで俺に退室を促してきた。
「高橋先生、ありがとうございます。ですが、お気持ちだけ結構ですのでどうぞお先に」
「え?でも、佐藤先生が…」
「どうぞお先に」
「………………で、ではお先に失礼させていただきます…」
速やかに退室し、廊下を歩く俺。
微かに聞こえてくる女性の悲鳴…。
俺はそっと耳に蓋をした。
俺の選択したこの行動は、果たして間違いだったのだろうか?
いや、考えるのはよそう…。
これはきっと考えても仕方のないことなんだ。
そうやって、大人は嘘を吐く。
偽善と欺瞞の満漢全席。
でも、考えてみて欲しい。
人を救う嘘もあるのだと。
きっと、それが今なのだ___________
すまない…佐藤先生…
そうして俺は保健室へと向かう歩調を速めた。
人間関係とは一言では言い表せない、酷く複雑なものなのだ____
◇◇◇
金縛り発動から数分。
俺は言葉にならない恐怖と闘っていた。
(まずい!!このままじゃあ、間違いなく高橋に喰われる!!?それだけは死んでも嫌だ!!!動け!!動けよ!!…動いてくれ!!!)
しかし、体は全く言うことを聞いてくれない。
手足がビリビリと痺れて、まるで四肢が痙攣しているかのように錯覚する。
心の焦りとは裏腹に、呼吸は一定のリズムを刻み続ける。
暗闇の静寂の中、時計の響きが遠のいて、俺の精神に少しずつ圧力がかけられていく。
こわい。
怖い。
恐い。
不安で泣きそうになる。
気が狂いそうになる。
そんな時だった_______
ふと、花のような甘い香りが鼻腔をくすぐる。
頬に触れた手は乱暴に扱えばすぐに壊れてしまいそうなほどにその柔らかさを鮮明に訴えてくる。
僅かに身体が揺れ、温かな吐息が額を撫でる。
瞼に遮られ見えないはずの目に、光が差し込む。
凍えきっていた胸に、熱が灯る。
心の中で涙が零れた。
クスッ…と、笑い声とは言い難い小さな小さな囁きが、心に響きわたる。
俺にはそれが_____
___女神の微笑みのように思えた
どうも、風邪から復帰しました九条明日香です。
鼻が詰まると酸素が頭まで行かなくてボーっとしちゃうんですよね…。
おかげさまで更新が半月も遅れてしまいました。(今度は花粉症の症状が出てきそうで恐ろしい…)
さて、第六話なんですが…全然青春してねえじゃねえか!!
紛らわしい冒頭の文章は何だったのか…半月前の私を問い質してやりたい気分です…!!
何故か勝手に本作に登場してきた平塚先生。
彼女に対しては特に何も考えて無かったので作者は絶賛混乱中です…(汗)
行き当たりばったりのこの作品は果たしてどこまで持つのでしょうか?
お先真っ暗なような…(フラグ?)
三月も色々と用事があって、中々執筆時間が取れないかもしれませんが、なるべく早く更新できるように頑張ります!
皆様も風邪には十分お気を付けください。
今回も読んでくれてありがとう。
感想待ってます。
それではまたの機会に