俺は生まれてきたころから、ほかの子たちとは変わっていた。俺が生まれたその日、母は他界。俺を抱き上げようとした父も同様に他界。俺は布に包まれ孤児院へと捨てられた。それから、俺の肌に触れようとする者たちは次々に死んでいった。
化け物を見るような目で俺を見る子供、殺意むき出しで今にも殺そうとする大人たち。どこにも居場所がない。俺がいてもいい場所を探すために、孤児院を出る。ボロボロの布で体を覆い、彷徨い歩く。森を抜け、湖を泳ぎ、町を過ぎる。俺を保護したいという大人たちもいたが、肌に触れた瞬間、等しく平等に死んでいく。それを見られればさらに逃げなければならず、悪循環が続く。
「……あぁ、本当にもう…」
死んでやろうかな。その言葉を紡ごうとするが、目の前に突如現れた光景によって口に出ることはなかった。白い機械的な翼を生やした銀髪の少女。彼女が地面に降ってきた。非現実的、意味が分からない。わかってはいるが、現実として目の前に現れた以上現実として受け止めるしかないだろう。何かから逃げようとする彼女は何故か動けずにいた。右足を怪我しているようだった。逃げたくても逃げることが出来ない彼女は、逃げることをあきらめたような表情をした。
『GYAAAAAAAAAAA‼』
不快な気分にさせる何者かの声が周囲に響き渡る。その声の主はすぐに姿を現した。様々な生物が混ざったような姿をきた奇形。俗に言う合成獣と呼ばれるものだった。それが彼女を殺そうとしている。正直言えば、どうでもいい。誰が死のうが生きようが。目の前で死のうがね。でも、不思議なんだよね。この少女だけは助けたいって、そう思うんだよね。
少女と合成獣の間に入り込む。俺がいたことに気が付いていなかったのか、逃げるように言う銀髪の少女。一度振り返り、ニコリと笑うと常に頭に浮かんでいた言葉を紡ぎ始める。
「……熱く、熱く、蕩けるように。あなたの体と心を焼き尽くす…『
合成獣に近づき、接吻をする。もがき苦しみ暴れだす合成獣。数秒もする頃には動くことのない屍と化していた。体が猛毒である原因の『
「……それ、じゃ」
初めて自分の意思で守った少女に別れを告げ、またどこか遠い場所を目指す。きっとその場所には俺に触れても大丈夫な人がいる、そう思えるから。
「待って、ください‼」
倒れていた銀髪の少女は俺の腕をつかみ、動きを止めさせる。もう一度言うけど、俺の、『腕をつかみ』動きを止めさせる。俺の腕を掴めば、死ぬはずの少女が死ぬ様子を見せない。振り払おうとするが、逆に腕を強く捕まれる。骨のきしむ音が聞こえてきても尚、強く握る。
「……離して」
「お礼を言わせてください‼」
「……いらない。離して」
「でも…」
「……邪魔」
無理やり手を払いのけ、目的もなく移動を始める。少しでも遠くに行けるように、少しでも彼女から離れられるように。気が付けば、海の見える崖まで来ていた。どこまでも蒼い海、意味もなく飛び込む。
バッシャーン。大きな水しぶきを作りながら、海を漂う。体が冷えて、心地よい。…あぁ、このまま遠い場所まで漂っていきたい。そう思いながら、目を閉じた。