パチパチパチ。火花が散るような音が耳に入ってくる。その音で目を覚ます。
「生きていたんだね、よかった」
ホッと息を吐き、安堵を見せる銀髪の少女。なんで俺を海から引き上げたんだ。あの引き込まれるような海でずっと漂い続けていたかったのに。深く、深く、そこにゆっくりと沈んでいく。その感覚に浸りたかったのに。
「……なんで、あのまま沈ませてくれなかった」
「お礼も受け取ってもらえてないのに、死なせるわけにはいかないから」
「……じゃ、お礼は受け取った。これでいいでしょ」
「いいわけないじゃないですか‼」
この子はなぜそこまで声を荒らげているのだろうか。他人に過ぎない存在など、どうでもいいと思うはずなのに。こんなに声を荒らげるなんて、バカらしい。俺みたいな化け物は素直に死なせてくれればいいのに。なんで、死ぬことすらさせてくれないんだ。
「……俺、化け物なんだ。わかるだろ。触れたらみんな死んでいく。だって、全身が猛毒で出来ているから。やろうと思えば数キロ先の人間だって動かずに殺せる。化け物なんだ。俺みたいなやつ、死んだ方がいいに決まってる。家族も、触れた瞬間に死んだんだ。こんな俺は生きていても」
「そんなことない‼」
バシッ。
意味がないと最後までいうことが出来なかった。銀髪の少女の声とビンタによりかき消されたのだった。頬が痛い。今までの痛みとは違う痛みが心の中に現れだす。痛い。頬が痛い。胸が痛い。今の俺はきっとぐちゃぐちゃな顔をしているだろう。それくらい痛かった。
「どうしてそんなことを言うの!簡単に死ぬなんて言わないでよ。私とは違って人は簡単に死ぬんだよ!私が本気で殴れば、キミは簡単に死んじゃうんだよ。儚い一つの命、簡単に捨てないで‼」
目を見て、本気の顔で話す少女。そういえば、今までこんな風に怒られたこと、無かったっけ。まともに人と話すのも久しぶり、いや、初めてかもしれない。この時、初めて彼女の目を見た。水色のような、灰色のような瞳。一切の曇りがないその瞳には俺が映っている。
今まで見たことのないほど、純粋な目に思わず一歩下がる。
「……見ないで」
「え?」
「……見ないで‼気持ち悪い、視線を向けないで‼」
「だ、大丈夫?」
「……近づかないで‼」
純粋な視線から逃げるように、動こうとする俺。少女は逃がさないとばかりに、回り込み、拘束する。じたばた暴れても逃げ出すことはできなかった。
「……あ、れ。おかしい、な。眠い」
「ゆっくりとお休み。私はキミを守ってあげるから」
その言葉と共に、意識はなくなったのだった。