旅行を頭の中で計画し始めてから、十日後。俺達は今…京都にいる。初めての遠出ということで、普段よりも数割増しで機嫌のいいヴァーリ。普段の場所とは違う場所にいるため、オロオロとしているルナさん。滞在する旅館は既に予約を取り、その旅館の前まで来ていた。
「……サーゼクス、ホテル?何、この店の名前。…センス無い」
「そんなことを言っちゃだめだよ、一誠?この店の名前を考えた人だって、きっと、一生懸命考えたと思うからね」
「…サーゼクス?どこかで聞いたことがあるような気がします」
サーゼクスという名をどこかで聞いたことがあるというルナさん。ルナさんは謎の交友関係を持っているから、きっとどこかで出会ったことがあるんだろう。
最近、ルナさんは喫茶店を始めた。なんでも、大学の友人たちと一緒にこういう仕事をしてみたかったらしい。ルナさんの友人たちが皆、ルナさんのような体質の人が多く、夜は町の平和のために化け物退治をしているらしい。
っと、話がそれた。サーゼクスホテルの三階にある大部屋にいる。三人どころか六人いたとしても余る部屋なのだが、この部屋しか開いてなかったため、この部屋に宿泊することになった。
「……えーっと、どこか行きたいところでもある」
「一誠たちと一緒ならどこでもいいよ!」
「私はこの町について詳しくないので、一誠君の行きたい場所に行きましょう」
と、言われてしまったため、なんとなく行きたいと思っていた金閣寺に向かった。今日が晴れていたためか、水の上に浮かぶ金閣寺と水に映る金閣寺という二つの金閣寺を見ることが出来た。
金閣寺をでて、龍安寺に向かおうとしたとき、体に何かが纏わりつくような感覚に襲われる。ヴァーリ達の方を見ると、不快そうに顔を歪めている。同じような感覚に襲われているのだろう。
視界がおかしくなる。歪み、平衡感覚を失ってしまったようだった。視界がクリアになる。今までいた京都とは違う雰囲気を纏った場所に来てしまったようだ。人の姿をした別の存在が町を歩き、狐のような耳を持った少女がこちらを睨みつける。
「……なんでさ」
「それは一誠のセリフじゃないはずだよ!」
「わぁ、狐だぁ!」
モフモフさせろと言わんばかりに狐耳少女に襲い掛かるルナさん。…あ、最近大丈夫だったからすっかり忘れてた。
「……ルナさん、可愛いものには目がないんだった…」
「あの子を助けないと!」
ルナさんは可愛いものに目がない。特に狐が好きである。これだけなら問題はないのだが、可愛すぎる物の一部をコレクションしたい時がある。現在のルナさんの部屋には大好きな犬の首や猫の手などが飾られている。普段はきちんと隠しているようなのだが、普段一緒に過ごしている俺達には気づかれている。
そして、今のルナさんは狩る者の目をしている。…本格的にまずい。
「そこの娘、逃げなさい!」
「な、なんじゃお主らは」
「とりあえず、どこでもいいから逃げて。アルビオン‼」
『Vanishing Dragon Balance Breaker‼』
白い龍の姿をした鎧を身に纏い、少女姿のルナさんを止めにかかる。流石はルナさんと言ったところだろうか。少女形体だというにも関わらず、ヴァーリの禁手化状態と互角だ。
「な、なんなんじゃ!」
未だ状況が分からずにオロオロしている狐耳の少女。逃げることをせずにその場で立ちすくんでいた。
「……身内にこんなことをしたくなかったけどね。しょうがないかな。火力を抑えて…
髪の毛を自在に伸縮させ操ることが出来るのがこの業。本来は数キロ離れた相手を殺すことが出来るのだが、今回はルナさんを固定することに使う。髪の毛を操り四肢を固定し、地面に磔にする。
「……ヴァーリ」
「うん!」
『Divide』
機械的音声が一度あたりに鳴り響く。わずかにヴァーリを押す力が弱まった気がするが、まだ足りない。
「もっと行くよ!」
『DivideDivideDivide』
計四回目の半減により、動きが停止したルナさん。…ふぅ、疲れた。
「……あぁ、ごめんn「私の娘に何をしているんだゴルアァァ!」…うぐっ」
狐耳の少女に謝ろうと振り返った瞬間、何者かの拳が頬に当たり…吹き飛ばされる。気絶しそうになる寸前に見えたのは、俺を殴った腕が青紫色になった九尾を持つ狐耳の人だった。…なんで俺なのさ…。