騒がしい声が耳に入り、目を開ける。腕どころか体中が真っ青に変化している俺を殴った人と、心配そうに見る狐耳の少女。そして、なぜか俺を膝枕しているヴァーリの姿が目に入った。
「……何、この状況」
「あ、起きたんだね!もう、心配したんだから‼」
耳元で大きな声を出すヴァーリ。その五月蠅さで思わず、立ち上がる。立ち上がる時にヴァーリの顎に俺の頭が当たって、二人そろってドタバタしていたのはご愛敬という物なのだろうか。
「うぅ…痛いよぉ」
「………大丈夫?」
「うん…大丈夫だよ?」
そろりと立ち上がり、ほぼ全身を真っ青に変わっている九尾の狐の下に近づいていく。狐耳の少女は俺を母親だろう九尾の狐に近づけまいと立ちふさがる。震えながらも、必死に近づけさせないようにする心意気はすごくいいと思う。でも、今回の場合はただの邪魔ものに過ぎない。
「……どけ」
「きゃ、きゃああああ‼」
「く、九重‼貴様、こんなことをしてただで済むと思うな‼」
ヴァーリに宥められている狐耳の少女は九重というらしい。…覚える必要はないな。
「……ま、そんなことはどうでもいい。とりあえず、寝ておけ」
俺の毒とは違う、ただ眠らせることに特化した毒を九尾の狐に飲ませる。数秒もする頃には深い眠りについていた。…第一段階はクリアしたといってもいいかもしれない。次の第二段階に入るのだが…。
「……ハサン、いける?」
―――――――多分、いけるかも。一誠の意思次第だよ。
「……なら、いけるな」
深い眠りについた九尾の狐に近づき、俺を殴った腕に触れる。既に毒されている腕に触れても、これ以上ひどくなることはないようだ。九尾の体の中を回り続ける俺の毒を回収する。これが第二段階。体の中を巡り続ける俺の毒を回収する。
「……どうにかできた」
――――――お疲れ様。彼女の毒の回収は無事に終わったよ。
「……そう。じゃあ、このまま悪人になったままにいるとしようか。彼らから見れば、俺は悪人だからね」
生まれた時から化け物。勝手に触ったくせに、死んだ瞬間、俺は悪人だった。だから、今更一つ悪が増えようが気にしない。きっと、それが俺の運命だから。
――――――悲しいね。
「……別に気にしないさ。ヴァーリ、ルナさんを回収して帰る」
「うん!」
「……
髪の毛の一部を見えない手のような形に纏め、気絶しているルナさんを持ち上げる。九重と呼ばれた少女が親の仇を見るような顔で睨みつけるため、振り返り一言…
「……もし、それが死んだらいつでも復讐しに来なよ。俺はいつでも歓迎するから」
柄にもないことを言いながら、京都っぽい場所から出る。目の前にあったのはサーゼクスホテルだった。ベッドにルナさんを寝かせると、明るい月を眺める。
「……あぁ、また一つ悪に浸かっていく」
二人が眠った後の静かな部屋に俺の声が微かに広がるのだった。