駄天使の英雄譚   作:100¥ライター

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思いの外UAが伸びていて、嬉しいです。
とりあえずネタが尽きるまでは頑張ってみます。


2話 気まずい1日と負けられない1日

落ち着け…落ち着いて現状を整理しろ。寮に行ってみたらルームメイトは先ほどステラを殺そうとした張本人黒鉄珠雫だった。

 

 

一応話は既に聞いてあった。この学園は超実力主義で切磋琢磨できるようにと寮のルームメイトすら強さが同じくらいの者同士にするらしい。そう、男女関係なく。クラスとかで言われている序列に興味なんてなかったし、破軍学園1年で3位だと聞かされた時にもしやと思ったが。

 

 

「…白銀刀夜。よろしく。」

 

 

 

「白銀…刀夜?そういえば中学の大会で見たような…もしかしてあの駄天使と呼ばれていたCランク騎士…」

 

 

 

「はぁ…そうだが。今ではワンランク上になったがな。」

 

 

不名誉なことだが事実だから仕方ない。中身が駄目だから駄天使になったか、あるいは顔が可愛い訳でもイケメンな訳でもないから駄天使になったのか、はたまた両方、それとももっと他の理由なのか…色々推測は出来るが、どれが正解かなど皆目検討も付かない。

 

 

 

「なるほど。それでは。」

 

 

それ以降は一切会話をせず一日が終わった。

 

 

 

そして自宅謹慎が始まった。正直何を話せばいいかなど分からないし、不用意に話しかけれは彼女の逆鱗に触れるリスクがあることも考えると話しかけることもままならない。

 

 

朝ご飯はお互い予め買っておいたコンビ二弁当である。

 

 

「…」

 

 

「…」

 

 

いただきますの一言すらない最悪の朝食である。聞こえるのは寮にあるテレビから流れているニュースアナウンサーの声のみ。普通ならもうこの時間生徒達は学園に向かっているはずなのでお隣さんの声なんてもちろん聞こえない。

 

 

「そういえば飯とか自分で作ったりしないのか?」

 

 

 

「別に…一応私の家は名家ですからそのようなことをしたこともありましたけど。」

 

 

 

「へぇ、名家ねぇ…」

 

 

 

「狂気的なまでに美味しいと評判だったんですよ。」

 

 

 

「そ、そうなのか…」

 

 

絶対ヤバいやつだろそれ。こいつに料理を作らせてはいけない。もしそのような時が来れば全力でフォローしなくては。

 

 

 

 

他にも兄に対して聞きたくなったが地雷を踏みそうで怖かったため好奇心を抑えて止まった。だがこれは判断ミスだったかもしれない。

 

 

 

「…」

 

 

 

「…」

 

 

 

再び無言の時間が続いた。よくある話を一つしたはいいがそっから話が広がらなかったという人と接することに慣れていない俺のような人間にありがちなことである。

 

 

 

「昨日のあれほぼ最初から見ていたんだがお前、一輝のこと好きか?」

 

 

 

「えぇ、好きですよ。愛しています。一人の男性として。」

 

 

 

「やっぱりマジか。」

 

 

そりゃ、兄として好きだったら舌入れたりしないわな。なんとなく分かっていた。

 

 

「実の妹が兄に対して恋心を抱くことはおかしいことだと思いますか?」

 

 

 

これはまたストレートに来たな。こんな真剣な目での質問に対して嘘はつけないな…もちろんはぐらかすのも論外だ。

 

 

 

「…側から見たらそう思うやつがいるかもしれないが俺は別にそんな偏見はない。少なくともあんなにも人を愛するってことは悪くないことだと思うよ。それにお前みたいな妹がいることを一輝だって嬉しく思っているだろうし。」

 

 

正直こんなことを言うとは思わなかった。今まで誰かをあんな風に愛したことも愛されたこともない俺にとっては珠雫達のことが少し羨ましく写っているのかもしれない。

 

 

 

「そうですか。」

 

 

 

「ちなみに俺のことは?」

 

 

 

「嫌いです。」

 

 

 

ノータイムで即答ですか。ズバッと言うなこいつ。冷静沈着っぽい見た目をしているのに感情表に出しすぎだろ。

 

 

 

「俺、お前と会うのは昨日が初めてだと思うんだがお前に何かしたか?」

 

 

 

「いえ、何も…ただお兄様以外の人間は皆等しく平等に嫌いです。」

 

 

 

ルームメイトだろうと心を開こうとは粉微塵も思っていないようである。だがこれはまた予想外な返しだな。どうしてこのような人間に育ってしまったのか。人様の過去を無理に聞き出すような人間ではないがこいつに何があったのかは気になるところである。

 

 

「…謹慎というのも暇ですね。」

 

 

 

「お前がそれを言うか。」

 

 

あれはステラと珠雫、そして俺が校舎を破壊したとして処罰されたが一番最初に剣を抜いたのは紛れもなく彼女である。あまりこういうことは言うべきではないのかもしれないが主に珠雫のせいである。

 

 

 

だが今更自分が割り込んだことを悔もうが珠雫を責めようが仕方のないことなので大人しく読書などで時間を潰すことにした。

 

 

 

適当に時間を潰し、夕食を食べていると…

 

 

 

「明日、謹慎が解けたら全力で戦ってみますか?」

 

 

 

珠雫は突如不敵に笑い、俺に提案してきた。

 

 

 

「あぁ…?まぁ、別に構わないが…」

 

 

 

確かにルームメイトの実力を知っておくことは悪いことではないし、同じくらいの強さ…と言うのなら互角の戦いが期待出来るはずだ。

 

 

 

「でも普通に戦うのもなんですし…賭けでもしてみますか?」

 

 

 

「おっ、何だ?」

 

 

 

「そうですね…負けた側は勝った側に服従…とかどうです?」

 

 

 

ステラは一輝の下僕だと言っていたがもしかしてあの戦いは今俺に突きつけられたような賭けをしていたのだろうか。

 

 

 

「おいおい…それはお前が負けた場合も想定して言ってるのか?」

 

 

「あら?そちらこそ自分が勝てるおつもりでいるのですか?」

 

 

 

俺も珠雫も声こそ妙に明るいが、顔は全く笑っていない。

 

 

 

 

「せっかくの機会だし、俺が次席になるとしよう。」

 

 

「知っていますか?何故私が次席と呼ばれているか。それ以下の者とは圧倒的な差があるからですよ。」

 

 

 

この後も不毛な言い争いが小一時間続いた。このやり取りのおかげか煽り耐性のなさは反省するべきだと思い知った。

 

 

 

そして翌日。訓練室の一つを貸し切ることが出来たたのでそこで戦うことにした。これでギャラリーは来るにせよ、邪魔は一切入らない…はず。

 

 

「ついに来たか。」

 

 

「ふふっ、手加減なんてしたら…ここが貴方の死に場所になるかもしれませんよ?」

 

 

 

「おいおい…代表選抜戦でもあるまいし…訓練中は幻想形態だよな?」

 

 

 

「えぇ、もちろんですよ。」

 

 

さすがにこんな模擬試合でルームメイト命のやり取りなんざしたくないし、高校生である内は公式大会や緊急時以外での戦闘以外は幻想形態で行うものだがそれでも珠雫が言うと本気に聞こえるので怖い。

 

 

「輝け!《明けの明星》!」

 

「飛沫け!《宵時雨》!」

 

 

お互いがデバイスを出現させ、珠雫が白銀の刀身を持つ《宵時雨》を。そして俺が刀身も柄も真っ白な剣《明けの明星》を握った瞬間。その試合が始まった。

 

 

「《天使の矢》(エンジェルスナイプ)!!」

 

 

「《水牢弾》!!」

 

 

開幕は俺も珠雫も距離を維持したまま遠距離から攻撃を放った。

まずは腹の探り合いというわけか。

最初の攻撃はまず相殺された。やはり能力値的には大きな差はないらしい。

 

 

「《天からの過剰光》(オーバーレイ)!!」

 

 

 

「《血風惨雨》」

 

 

接近することは俺にとっても恐らく珠雫にとっても勝ち筋を捨てることを意味している。俺は大量の光の刃を珠雫に向かって照射した。珠雫は生半可な技では崩せないと判断したのか針状にした水を大量に狙いも付けずに乱射し始めた。あれだけの弾幕を張れるのはあのステラすら上回る彼女の魔力制御の高さによるものだろう。

 

 

魔力制御の能力が高ければ常人と同じ行動をとったにせよ、魔力消費量を半分以下に抑えることが出来たり、敵に魔力を感知されない迷彩を張ることも可能だ。火力だけで言えばステラが圧倒的に勝るが、珠雫の場合は策や駆け引きで相手と戦うといったところだろう。

 

 

「《天界の鏡》(ミラーフォース)!!」

 

 

「《障波水連》!」

 

 

そしてお互いの流れ弾をバリアを張ることで完全シャットアウト。ここからは弾幕とバリアの張り合いになる可能性が高い。

 

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 

俺は横へ走り、珠雫の周囲にオーバーレイで弾幕を張り続けた。

 

 

「能力値だけで言えば確かに私と大差がないのは分かりました。ですが…頭の方はどうですかね…?」

 

 

「《凍土平原》!!」

 

珠雫は障波水連は維持したまま、ここ一帯に氷を張った。これなら先ほどと同じ速さでは走れないし、機動力を奪いにかかったか。

 

 

「ならこちらもお前の機動力を奪う!」

 

 

彼女が障波水連を解除したのでそれを見計らい、足元に光の刃を複数放つがどれも回避されてしまった。どうやら発動者は自由に動けることが分かった。

 

 

「動きを止めましたね。」

 

 

「!?」

 

珠雫の声でようやく自分の左足が氷により拘束されていることに気づいた。

 

 

「くそっ!」

 

 

迷彩をかけられていたのかこの氷の魔力を感じることは出来なかった…珠雫はこれを狙っていたのか。自分の剣で素早く氷を砕こうとするが一向に砕ける様子はない。

 

 

 

「間抜けですね。」

 

 

ミラーフォースが血風惨雨を反射していたことを見ていたのか珠雫はこちらの方へ向かい始めた。

 

 

「いや、お前程じゃないな。《天使の悪戯》(クレイモア)!」

 

 

俺が先ほど機動力を奪うために地面に仕込んでおいた光の刃が無数に飛び出した。珠雫は宵時雨で跳ね返そうとするがわずかに擦らせることは出来た。最初の被弾は珠雫。微々たるダメージだが優位に立った。このアドバンテージは大きい。

 

 

「っ!」(あの剣の柄が黒に…?)

 

 

「やれやれ…天使の羽《エンジェルウィング》」

 

 

急いで氷を砕いた後はすぐさま翼を生やし、氷に足を取られないように浮いて移動することにした。

 

 

「《白夜結界》!」

 

 

珠雫は凍土平原が機能しなくなったと判断したのかそれらの氷を気化させ、辺り一面を濃霧で包み込んだ。

 

 

「くそっ!」

 

 

恐らくこの濃霧の中だろうと珠雫は自分の位置把握だけではなく、俺の位置も把握されていてもおかしくない。自分だけ視界が潰されているという事態は避けたい。俺はすぐさま飛翔し、濃霧の範囲外へと出た。だが…

 

 

「ふふ、そう来ると思いましたよ」

 

 

珠雫が放ったいくつもの氷の弾丸がクリーンヒットし、地面へと墜落した。してやられた。落ち着いて翼で霧払いをすればこのような事態にはならなかったはずなのに。完璧に油断していた。

 

 

「ぐぁっ!」

 

 

「さて、一発一発の威力はそんなに高くなかったはずですがあれだけの数がクリーンヒットしたのですから貴方には効いているはずです。そろそろ幻想形態とはいえ、大ダメージを受けたので意識が朦朧とし始めたのではないですか?」(むっ、今度は刀身までもが黒くなって…)

 

 

そろそろか…この剣が黒く染まるまで…

 

 

「フラッシュ!」

 

 

 

「しまーッ!!」

 

 

不用意に接近した珠雫のに目くらましをしてやった。わずかな時間稼ぎ程度にはなったはずだ。その隙さえあれば十分…この剣は黒く染まる。

 

 

「《堕天使の一裂き》(デモニックスラッシュ)…」

 

 

俺は黒く染まった剣で辺り一面を薙ぎ払った。

 

 

「っ!?」(斬撃が全く見えなかった…?まさかそんなはずは…)

 

 

珠雫がわずかにフラフラし始めた。さっきの分と同じぐらいは返せたはず。

 

 

「さぁ、どうした?堕ちてからが本番だぜ…」

 

 

 

(雰囲気が明らかに変わった…警戒を強めなければ…)

 

 

 

「《障波水連》!!」

 

 

「《悪魔の咆哮》(ディアボリックブラスト)!!」

 

 

先ほどの水の防壁に対し、俺は剣をタクトのように持ち、闇を纏った巨大なエネルギー波を放った。

 

 

「な、なんて威力…!!」

 

 

その巨大なエネルギー波は障波水連すらも穿った。だが、珠雫は破られると素早く判断したのかダメージはない。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

「貴方、面白いですね…私も全力を出しますよ…」

 

 

 

この時、俺も珠雫もただ目の前の相手を倒すことしか考えていなかったので気づいていなかったがかなりの数のギャラリーがいたらしい。

両者全く遅れを取らず、互角で熾烈な戦いを行なっているのを誰かが見て、広まっていったらしい。だが、その沢山のギャラリーも少ししたらいなくなったらしい。

 

 

 

「ふっ、どうした!?まだ俺は立ってるぞ…かかってこいよ…それともそろそろ限界か?」

 

 

黒鉄家の血統は負けず嫌いなバトルマニアばかりなのだろうか。そろそろ幻想形態特有のブラックアウトが起こってもいいはずなのに。今そんな状況である俺も人のこと言えないかもしれないが。

 

 

「そちらこそまだ倒れないのですか?ふふ、往生際が悪いですね…」

 

 

ギャラリーがいなくなった理由はとてもシンプルで俺達が訓練場を破壊しまくったせいである。所々凍っている床、斬撃の跡や大量の瓦礫。他にも例を挙げればきりがないが、こんな事態になっても未だ戦いをやめないのは賭けのせいかただの意地の張り合いか。幻想形態であるためお互い傷などは全くないが幻想形態で破壊されないのは人のみである。高レベルな《抜刀者》(ブレイザー)が戦えばこうなるのは必然だったかもしれない。だが、そろそろこの戦いも終わる。終止符を打つか。

 

 

 

『くたばれぇぇぇぇぇ!』

 

 

お互い相手を殺すつもりで剣を握り、斬りかかった。だがどちらの剣も相手にはとどかなかった。

 

 

「そこまでだ。」

 

 

ある声が聞こえた時には両者共に地面に組み伏せられていた。

 

 

「あ、貴方は…」

 

 

 

「理事長の新宮寺黒乃先生…」

 

 

 

新宮寺黒乃。彼女は今では引退してはいるものの現役時代はプロの大会で世界ランキング3位だった《抜刀者》である。

能力は時間を操る能力。時間をわずかに戻したり、止めたり、はたまた特別な許可がないと使用出来ない技には時空間を滅茶苦茶に捻って消し飛ばすなんてことが出来る破軍学園教員の中でも1位2位を争う《抜刀者》である。

 

 

 

「生徒から通報があって来たのだが…どうしたらこうなるんだ?」

 

 

 

『全力で戦ったらこうなりました。』

 

 

 

「やれやれ…今回は生徒に被害があったわけではないし、警告で留めておくが…今後このようなことがないようにするんだぞ。」

 

 

 

「はい、すみません。反省します。」

 

 

 

「ありがとうございます。二度としません。」

 

 

 

俺と珠雫は魔力を著しく消耗し、疲れ果てながらも寮へと戻った。

 

 

 

「全く…今日はやけに疲れました…」

 

 

「お前が大人しく降参していればああはならなかったんだがな。」

 

 

「貴方の実力は認めますが、あのまま戦っていれば私が勝っていました。」

 

 

 

「いや、俺だろ。あの状況から判断すれば絶対俺だって」

 

 

ここから更に不毛な争いが続くと思っていたが…

 

 

「まぁ、いいでしょう。あの決着は幻想形態なしで戦える代表選抜戦か七剣武祭で。」

 

 

 

「あぁ、その時が来ることを俺も楽しみに待っているよ。」




このすばの小説も書いているやつが何言ってんだって話になりますが、バトルの描写ってやっぱり難しいです。
あと技名のセンスが皆無な件について。
基本原作キャラが技名を言ったものは原作やアニメで使用しているものです。ネーミングセンスがないので原作キャラにはオリジナルで技名を作ったりはしない予定です。
次回はあのキャラが登場します!
それでは、最後まで閲覧していただき、ありがとうございます。
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