特典を貰った純粋な男がいつの間にかチーレム作るだけの話。 作:冷めたフライドポテト
うす。
朱璃side
絶対に朱乃は渡さない。たとえ死んだとしても。
「朱乃は絶対に渡しません!」
「そうか……だったらお前を殺してでも渡してもらう!」
目の前の男はそう言うと、手に魔力を貯めだした。
「お母さん?大丈夫?」
朱乃が心配そうにこちらを見上げてくる。その朱乃の顔を見て、少しだけ生きたいと思ってしまった。
「死ね!」
ごめんね、朱乃、あなた。
目を瞑り、覚悟を決める。
「させるかよ」
ガキン!という金属同士をぶつけ合ったような音とともに心地よい少年の声が聞こえる。
何事かと目を開けると高校生くらいの少年が、男の攻撃を受け止めていた。
***
「させるかよ」
ポケットから手ぬぐいを出し、息を止めて鉄に変える。ガキン!という音がして、手に衝撃が伝わる。
「誰だ!?」
目の前の男は驚きの表情で声を上げる。
怖いよ、やめて、俺ただの一般人だからそんなに睨みつけられたら死んじゃうよ?
「答えると思うか?」
手のひらに一枚のカードを出してそれを握りつぶす。カードは砕け散ると、その破片が宙に舞う。その破片は段々と集束していき人の形になっていく。
「やれ『ヨシツネ』」
「八艘跳び!」
四方八方から、斬撃が相手の男に向かって飛んでいく。相当な速さで飛んでいく斬撃を躱せるはずもなく、相手の男は叫びながらも横に倒れた。
「ぐっ、くそっ!何なんだよお前は!」
攻撃を終えたヨシツネは俺の後ろに付き、スタンドのように佇んだ。
ヨシツネは相手の男をじっと見つめ、その瞳には少しだけの殺意があった。
「死にたくなければ失せろ。二度とこの親子の前にその汚い面出すな」
「く、くそおおおおおお!」
あれ?殺意的なもの混ぜたつもりなんだけど、効いてない?
男は半ばヤケクソの様子で、自分に向かって突っ込んでくる。だが、自分にとっては止まっているような攻撃の速度。危なげなく回避して後ろに回る。
「なぜだ!なぜ当たらない!」
「はぁ…まだ分かんないのか?弱いんだよお前」
「黙れ!これで決めてやる!『魔槍』!」
いつの間にか手に貯めていた魔力で槍を作り出し、こちらに向かって投げてくる。
へえ、飛び道具か……だったら俺も飛び道具で対抗してやる。能力の殆ど飛び道具だけど。
「"
前に出した手から槍のような形をした
ピシッ、と何かにヒビが入るような音が鳴る。
「ふはははははは!貴様もここで終わりだ!」
男は勝ったと確信して、小馬鹿にするように見下しながら笑いとばす。
だが、そんな余裕綽々の表情も一瞬で驚愕した表情に変わる。
「な、なぜだ!なぜ俺のありったけの魔力を練って創り出した魔槍が負けている!?」
確かに、転移したばかりの元一般人がそんな芸当出来るはずがない。
「冥土の土産に教えてやるよ、俺の能力の一つに『理想』を『現実』に変える
「まさか…!?」
「ああ、さっきのはその能力で創った『絶対に貫く』理想の
「そんなのありかよぉ!?」
うん、俺もそう思う。
男の腹に百鬼夜行が突き刺さり、血が噴き出る。男は苦しそうに腹を抑えて何処かに消えていった。
逃げれる程の体力あったんだ。
「はぁ……まあ、どうせもう来ないだろうしいいか」
ていうか冥土の土産にってなんだよ!あいつ死んでないじゃん!あぁ…恥ずかしい。
今すぐ布団に入って悶えたい気持ちを抑えていると、後ろから声がかかる。
「あ、あの」
「はい」
「その、ありがとうございました!私と朱乃を救っていただいて感謝してます!」
いきなり頭を下げて謝り始めた女性の人に困惑してしまう。
「ちょ、いいですって!困ってる人見つけたら助けるのが普通ですよ!」
「ふふっ、ありがとうございます」
『すまんの〜また間違ったようじゃ』
突然頭の中にお爺さんの声が響いた。うん、もう二回目だけどね。
『はぁ…次は失敗しないでくださいよ?』
『うむ、今度はしっかり主人公たちと一緒の時代に転移させるぞ!』
するとまた自分の体が光に包まれ始めた。
「お兄さん!その…名前教えて?」
女性の人の娘さん?がこちらに近づいてきて、見上げてくる。
「柊 瑞希だ。君は?」
「朱乃!姫島朱乃だよ!」
「そっか、じゃあ朱乃ちゃん。お母さんのこと大切にするんだよ?」
「うん!」
そこまで会話したところで目の前の景色が歪み出した。三回目は無いだろうと祈り、目を瞑った。
***
「やっと、来たか……」
『ほんとにすまんかったの。頭の中にお前さんの家までの道を送っておるからそれを頼りに行ってくれ』
お爺さんの言う通りに、頭の中に浮かんだ地図を頼りに自分の家に向かった。
歩くこと数十分。ついたのはいいんだけど……。
「でかすぎない?」
目の前には、まるでアメリカのホワイトハウスをそのまま日本に持ってきたかのような家だった。
お爺さん……そこ力入れるとこちゃう…。
「取り敢えず入るか……」
バカでかい扉を開けて、家に入ると外見と同様高級感漂う玄関があった。
これ、大理石か?
「ニャー」
「ん?猫?何でこんな所に?」
お出迎えのように猫が出てきたが、その様子はどこか焦っているような感じもする。
というかこの気配、人間じゃないな。
「ニャー?」
「猫か……飼うか」
「ニャー♪」
黒の毛色をした猫を抱き、寝室に向かった。
かなり疲れていたのかベットに入ると直ぐに眠気が襲ってきた。
「おやすみ、クロ」
「ニャ〜」
勝手につけた名前で呼んだが黒猫は眠そうに返事をしてくれた。
うん、やっぱり猫は可愛いな。
最後にそんなことを思い、意識は闇の中へと落ちていった。
***
???side
「ん!?この気配は……瑞希君!?」
とある場所で眠そうにしていた女性は、久しぶりに出てきた反応によりいっきに眠気がかき消える。
「ふふっ♪やっと会えるね私だけの瑞希君♪」
女性の手には髪飾りがあり、その女性はその髪飾りを大切そうに見つめていた。
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