某所で性別反転するとあまりにも酷いよね……という話をしてて読みたくなりハーメルンに見当たらなかったのでもういい俺が書く! となりました。
反転アクア様は脳内CV杉○智和さんです。
頭痛ぇ……昨日飲み過ぎたか。
重く、ずきずきとした鈍痛を訴える頭を押さえながらベッドから身を起こす。
陽はまだ高くない、結構遅くまで飲んでいたはずだが眠りも浅かったか。二度寝したいが喉の渇き、そして何より排水が必要だった。のろのろと部屋を出てトイレへ。
「あー……?」
扉を閉め、便器の前に立ってジャージのズボンとパンツを下して自分のホースを手に……あれ?
手に馴染んでいるはずのブツがない。ないったらない。
「夢か」
あまりにも非現実的なことであるからしてこれは夢だ。しかし尿意は限界を迎えているので、便座を下して腰かける。起きたらシーツに世界地図を描いているかもしれないが構わん。
「……はぁ」
一息つく。しかしなんて夢だ、俺はTS願望なんてないはずなのに。ズボンと一緒に卸したパンツは女物だ。よくよく自身の身体を観察するとジャージも女子の着る赤、胸も控えめながらにある。即揉む。
……何の感動もねぇ……やっぱ男性的欲求も愛息子と共に消え去ってしまうのだろうか。ただの脂肪を揉んでいるくらいの感覚だ。夢がねぇなぁ……夢なのに。
尻を拭く感覚で股間にも紙を当てて拭くが、それも当然の感覚という感じで何も感じない。うーん、せめて自分のTSじゃなくダクネス辺りの身体だったらもう少し楽しいのかもしれんが……。
とにかく、喉の渇きはまだ癒されていない。トイレを後にして台所に向かうことにする。夢の中で飲んだからといって癒されないだろうが……そういや妙に生々しい夢だな。
「おはようカズハ……二日酔いか? 酷い顔だな」
酷いのはお前だ。というか誰だお前。そして誰だよカズハって。
台所にいたのは金髪マッチョの変態だった。
金髪のポニーテール、青い瞳に整った顔立ち。膨らんだ上腕二頭筋に逞しい胸板、割れた腹筋。下半身もきっちり鍛え上げられている。そんな身体を惜しげもなく……惜しんでくれ、黒のボクサーパンツ一枚に前を肌蹴た白シャツという姿で晒している。やめろぉ! 俺に見られて頬を赤くしながらはぁはぁするのをやめろぉ!!
「おはようございます、カズハ」
そして後ろから更に『俺』をカズハと呼ぶのがもう一人。もしかしなくてもカズマさんが女の子になったからカズハさんですか。安直すぎだろ。
こちらはパジャマ姿の少年。というかショタっこ。黒髪の短髪に赤い瞳、小柄な身長……元とあんまり変わらねーな……本人に言ったら殺されそうだが。
この辺で大体把握した。
全員、性別が反転している。
……とりあえず悪夢以外の何物でもないので頬を抓る。結果は大抵のアニメや漫画がそうであるように、夢から覚めることはない。めぐみんはほとんど変わらないからいいが、ダクネスはダメだ。あまりにもダメ過ぎる。
こうなるとあの駄女神にも恐怖を覚えるが……何時も通り、あいつが朝起きていることはないようだった。
「……おはよう」
どうしたものか、と思いつつ返事をする。混乱する俺へ心配そうな目を向ける二人。
適当に誤魔化して三人で朝食を取ることになった。
自身を俺、と言いかけたことを更に様子がおかしい、熱でもあるのかと心配されたので私、と言い直す。え、これ夢覚めるまで女の振りしなきゃならんの? いや今この身体は女なのだが。実際、今視線はちらちらとダクネスの筋肉に向かってしまっている。やばい筋肉エロい。いや何考えてるんだ俺、男だぞ今のダクネスは。
脳まで女体化したのか、晒された、認めたくはないが男性的な肉体美に性的興奮を喚起させられている……やめろ、チラ見されてるのを気づかない振りしつつドヤ顔するのをやめろダクネス。とにかくまともな服を着ろ痴漢。
「カズハ、朝食の後行きますよ」
「ん? あー、分かった」
ダクネスの方を見ないようにしているとめぐみんからのお誘い。
行く、とは日課の爆裂魔法を撃ちに行くことだ。ダクネスの性格もそうだが、めぐみんの一日一爆裂も変わらないらしい。うーん、外見もほとんど変わらないし癒されるわー、めぐみんさんが変わってなくてよかったわー。
「……どうしたのです?」
変わらないめぐみんに怪訝な顔をされつつ、非日常にあった変わらないモノに癒された。めぐみん本人には絶対に秘密だ。
「――エクスプロージョンッ!!!」
87点。そこそこだな。
何時ものように町から離れたところまで歩き、めぐみんが爆裂魔法を撃って俺が採点、倒れためぐみんを負ぶって帰る。女体化したことでただでさえ体力があまりない俺が負ぶっていけるか不安だったが、やはりめぐみんは軽かった。しかし女におんぶされる男は絵面がちょっと悪い気もするが……ショタっこだし許されるか。
平和そのものの、晴れた空の下のんびりと何時も通り歩く。背中の感触は何時もとほとんど変わらないことをここにご報告しま……ん?
「…………はぁ」
とても、小さく洩らされた吐息。背後のめぐみんによるものだ。何か、気持ちよさそうな息。
背中、その下の方では『何時も』と違う感触。
さすがにぞわり、と悪寒が走るが指摘できない。
ご起立なされている。
気づいた瞬間悲鳴をあげそうになるが堪える。耐えろ俺。紳士……今は淑女だが紳士的に気づかない振りをしてあげるべき……やめろ、座り位置を直す振りをして背中に擦りつけるのをやめろぉーッ!!
必要以上に疲れながらも何とか屋敷に帰った。めぐみんは屋敷に着くと不完全燃焼な顔で、のろのろとトイレへと向かっていった。途中で完全燃焼していたらその場で張り倒すつもりだったので幸いだ。
昼食を食べた後、心労も相まってリビングでだらだらしていると漸く奴が起きてきた。
「……カズハぁ……おなかすいたぁ……」
大体予想通り、青の長髪、パジャマ姿の男……駄女神、いや駄目神アクアが情けない声で話しかけてくる。無駄にイケメンなのが腹立たしい。昼食の残りでぱぱっと拵えてやる。昼に起きてきてわざわざ人に飯作らせるとは相変わらずらしい。昨日飲んだ酒がおいしかったと食いながら報告するアクア。性格は全員据え置きか畜生。
「午後からはウィズの店に行くぞ! 茶菓子をたかりに行くのだ!」
「……付き合えってか」
そして、ウィズの魔道具店。
あのウィズがどうなっているのか、その好奇心に抗い切れずアクアと共に訪れてしまった。
「いらっしゃいませー……あ、カズハさんにアクア様」
「来てやったぞウィズ! さぁ俺をもてなせ茶菓子出せ!」
ちょっとクズ過ぎないかアクア。
女の時もアレだったか男になってさらにアレだ。真の男女平等主義の俺からすると頂けないことだが、女性同士、それも見た目だけは美少女なアクアとウィズだから許される部分があったとは。
で、肝心のウィズだがなんというか、凄くイイ。
どこか儚げな表情、背も高く優しそうなのが凄く、イイ。いや待て、ウィズは今男だ、何ときめいているんだ俺。でも背が高いのにどこか保護欲をそそるのが凄く――。
「ウチの店主にムラムラしている小娘よ、また来たのか」
いたー!?
もしかして、と思ってはいても実際目にすると驚愕する外ない。
不意打ちにあまりにも失礼な言を吐いたのは仮面の奴だった。仮面のメイドだった。そうきたか。
黒のロングスカートに白のエプロンドレス、ホワイトブリムに黒髪ロングストレートというオタク特攻の姿だが何時もの仮面で台無しになっている。言うまでもなく女版バニルだった。
「出たな悪魔! 今日こそ祓ってやる!!」
「ぬははは、神を自称する可哀相なヒモ男よ、かかってくるがいい!」
そしてその登場にいきり立つアクア、挑発するバニル。
「ゴッドブロー!!」
「バニル式殺人光線!!」
炸裂する両者の必殺。必殺の拳で挑むアクアは、バニルの光線をゆらりと巧みに回避し……おい、こっちに――。
「お久しぶり、ですね……」
非常に気まずさそうに告げる銀毛のイケメン。
もう何度目になるのか、黒の空間、白い床。対面するのはこの世界を管理する女神……ではなく男神であるエリス。
「なんというか、ホントすみません……」
恐らく何度か死を体験しているのだろうか。またか、というのがエリスの顔からありありを分かる。うーん、巻き添えで死亡とかもう本当に申し訳ないが、まさかのエリス男版を見れたことに若干の喜びを感じる。
修道士のような衣服を着たエリス、銀髪で顔は整っていて、その、とても美しい。
目鼻はまさしく神がかって整っており、同じく整っているがアホ面のアクアとは違って知性的な顔はとても格好いい。何というか胎の下にクる……いや待て、俺は男俺は男俺は男。
そうとなるとクリスの方も気になるのだが……アホ面の方の駄目神が、俺を呼ぶ声を既に上げ始めている。
「あっ……その、では……」
「ホントっ! すみません!!」
ゆっくりと身体が天井の光へ吸い込まれるように浮上しつつある中、とにかく謝罪する。椅子から立ち上がり、俺を見送るエリスにふと気付く。気付いてしまう。
……ブーツ、めっちゃ上げ底してる。
そ、そっちかー。上げ底エリスってそっちかー……。
悲しくなりながら、天へと吸い上げる光へと身を任せた。
「カズハっ、カズハーっ!」
「ごめっ、ごめんねぇーカズハぁー!」
「あぁ……よかった……」
目覚め。例よってアクアのリザレクションで蘇生したのだろう、意識が覚醒する。
どうやら屋敷の自室、ベッドの上らしい。頭の下は固い感触。アクアが膝枕していてくれているらしい。何時ものアクアの膝枕と比べあまりにも固い太腿。あぐらをかいた上に頭が載せられていて、お世辞にもいい感触ではないはずなのだが……妙に安らぐ。
母性、ではなく父性を感じるのだろうか、たくましさに安心感を覚えるというか。いや待て。何男の膝枕を喜んでいるんだ俺。
意識を取り戻した俺にすがりつく二人、めぐみんとダクネスにも何かときめくモノがある。不味い、毒されている。俺は男俺は男俺は――。
「なぁなぁカズハさんカズハさん」
「どうした?」
猫撫で声のアクア。こういう時は大抵ロクでもないことを言い始めるのだが、膝枕されているためか聞いてやってもいい気分になっている。
「その、ね……カズハさんの匂い嗅いでたら」
「――ッ!?」
何か言いにくそうなアクア。ふと横に視線をやると、アクアのズボン、その股間にテントが張っていた。
「あ、ぼ、僕も……」
俺に抱きついたままもじもじするめぐみん。
「わた、私もだカズハ! 蘇生してすぐで悪いが相手をしてくれ!!」
二人の様子に慌てたようにダクネス。
待て。え、そういう関係だったの俺達?
いやそういう問題じゃない。三人の男達は目をぎらつかせてこちらに迫っている。待てって! 夢だ、夢なんだろ!? 早く覚めてくれ、今すぐお願い!!
「「「カズハ……」」」
童貞より処女を先に失うのは嫌だァァァァァァァアアアアッ!!!
「――さま、お客様……っ!」
「嫌だァァァァァァァァァァ……あ、れ……?」
「はぁ……」
早朝、人気の少ない道を屋敷目指してとぼとぼと歩く。
夢だったらしい。本当に良かった。本当に、良かった……。
悪夢から起こしてくれたのはサキュバスだった。昨夜、俺はサキュバスサービスを頼んで邪魔が入らないようアクセルの宿で一人眠っていたのだった。
しかし別の客が書いたアンケートと俺のとが取り違えられてしまい、あんな悪夢を体験することとなってしまったそうだ。気づいた別のサキュバスが担当のサキュバスに急いで知らせに行き、何とか直前で止めて貰うことができた。誰だよあんなアンケート書いた奴……サキュバス達からはとても謝られ、お詫びとしてサービス券まで貰ってしまった。
屋敷まで辿り着く。悪夢のせいか寝不足だ、寝直すことにしよう。
「……おはようございます、カズマ。また朝帰りですか」
玄関に入ると、めぐみんがもう起きていたようだ。先ほど夢の中で俺に迫っためぐみんとその顔が重なる。というより本当に性別が変わっても外見はほぼ変わってない。不安になる。
「……めぐみんって、女だよな?」
「喧嘩を売っているなら買おうじゃないか」
この後めちゃくちゃ殴られた。