鋼の心   作:モン太

1 / 68
HUNTER×HUNTERをイメージした戦闘描写は疲れる..............

今後、念能力者どうしの対決は控えようかな...............


旅の始まり
プロローグ


1988年3月18日。イラク北西部のクルディスタンのハラブジャに私は来ている。ここはイラン・イラク戦争で2日前に毒ガス攻撃が行われた地だ。この地の調査を『組織』に依頼され、私が派遣された。

 

今だに毒ガスは残っており、ガスマスク無しでは村に入る事は困難だ。町はゴーストタウンと化し、至る所に人間の亡骸が転がっていた。口を開き虚空を見つめたまま動かない少年。赤ん坊を抱いたまま地面に伏す母親。四肢を投げ出し、仰向けに倒れている老人。本来なら胸を痛めるところだが、今は仕事中だ。

的確な状況判断や分析、時には冷徹な決断を下さなければこの世界では生きて行けない。残酷だがこれが現実だ。

 

私以外にもこの村に入って来ている者がいる。恐らく毒ガスを放ったイラク兵であろう。私は見つからない様に『絶』を使い身を潜める。イラク兵を警戒しながら、村の様子を写真に収める。今回の依頼主は東ドイツだ。東ドイツがイラクに毒ガスの技術を提供したらしく、毒ガスの成果を確認したい様だ。『組織』は依頼があれば、物事の善悪関係無く任務を行う。今回は明らかに非人道的な依頼だがそれでも金さえあれば、任務を行う。また、『組織』内であろうが、別の任務を行なっている者と鉢合わせして、目的の物や人物の取り合いになる場合は、たとえ友人や恋人でも関係無く殺しあう。例えば、今目の前にいるやつとかね。

 

私の前に現れたのは、ガスマスクで顔がわからないが、大きな煙管を背負っているガタイのいい男。モラウだ。

 

『よう、ノヴ。お前も依頼か?』

 

『マスクで声が聞こえにくくてね。よく聞き取れないな。何方さんだ?』

 

『おいおい。冗談はよせよ。俺とお前はよく組んでたんだ。俺がお前のオーラを間違えるはずねーだろ。』

 

『........................』

 

『こちらも調査なんだが任務内容に調査中に誰かと鉢合わせ、または発見した場合は可能であれば抹殺するようにと言われてるんでね。』

 

『残念ながら、この環境なら私に分があると思うが?』

 

『そうか?むしろ俺の方が有利だぜ!』

 

『っ!』

 

オーラを纏った煙管を叩きつけて来る。私はそれを地面に潜ってかわす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(まあ、ノヴなら地面に潜って躱すよな................。全く、厄介だぜ。この狭い空間じゃあ、四方八方からの攻撃が可能。イラク兵の目をかいくぐる為に周りの建物壊すこともできねぇ。『円』と『凝』と反射神経で対応するしかねぇ。)

 

(この狭い空間なら、私の能力での奇襲は行い易いが、狭いという事はモラウの感が当たればこちらが手痛い反撃を受ける可能性がある。だが、躊躇いのある攻撃は結局相手に悟られやすくなる。躊躇はできない。回数も余り繰り返せない。こちらの癖が読まれる可能性がある。)

 

(なかなか出てこないが、逃げたという事は恐らくない。向こうも俺を抹殺する事は依頼の中に含まれているはずだ。あいつが逃走に全力を注ぐと追いかける事は不可。また、追跡能力も他の能力者の追随を許さない。だが、まだどちらも負傷していない状況。あいつは恐らく隙を見せたくないから、攻撃手段は奇襲の一撃で仕留めに来る様な技、窓を開く者(スクリーム)で俺の首や胴体を跳ねに来る可能性が高い。)

 

(俺が首を跳ねる事は、恐らく読まれている。首への攻撃は危険。また、『円』で警戒されているだろうから、仮にモラウの反応速度を超えても『硬』で首を守られる可能性もある。だが、モラウの能力はガスマスクを外せないこの環境では使えない。操作系能力者が長時間、煙管と肉体の強化を行い続けるのはかなりの消耗を強いる。しかし、私のこの能力も無敵ではない。この空間を創り、維持するのはかなりのオーラを消費する。結局お互い時間はかけられない。)

 

(ノヴは俺が能力を使えないと思っている。だが、甘い。この村に入る前に紫煙拳(ディープパープル)を毒ガスに擬態させている。だから、ノヴに俺が能力を使える事をギリギリまで悟られない様に立ち回る。長期戦はお互い不可能。ならば、最初の1回目の奇襲を乗り越えれば、活路は見いだせる!)

 

今、ノヴとモラウの2人の体は相手の動きを捉える為に一分一秒も隙がなく、活性化している。時間の感覚がわからなくなる様な集中の中、緊張の糸が張り巡らされる。イラクの砂漠地帯の高温の環境でモラウの肉体からは止めどなく汗が滴り落ちる。相手の見えないモラウに対し、温度も湿度も快適で相手の様子が見えるノヴ。受け身のモラウに対し、いつでも攻撃のタイミングをかけれるノヴ。この忍耐の戦いでは圧倒的にノヴが有利である。

 

(時間をかけたいところだが、こちらのオーラの限界ギリギリでの奇襲は相手に察知され易い。なら、速攻で決める。条件はこちらが圧倒的有利。躊躇わずに覚悟を決めろ!)

 

ノヴはオーラを纏わせた両手を合わせてモラウの後方に表れ、最速でもって首を狙う。

 

(獲った!)

 

しかし、モラウも首に来る事に賭けていた。結果

 

『っち!』

 

モラウは煙管で防ぐ事に成功する。そして、異空間から引きずり出す事にも成功する。

 

『ふう。危ない賭けだったぜ!これでやっと同じ土俵に立てたな。』

 

(実際、危ない賭けだった。もし、首では無く脚などを狙われていたら防げなかった。また、本来有利な長期戦では無く、短期決戦で来るだろうという賭け。そして、俺の能力が使える事を悟られなかった賭け。この三つの賭けに勝った!さあ、ようやくスタートラインだぜ!)

 

(最初の奇襲はモラウに軍配が上がったか。もう地面に潜る事はできない。できるはするが、緊急用のオーラは残しておきたい。お互い多量のオーラを消費したが、俺は4次元マンション(ハイドアンドシーク)にいた為、体力的には有利。これからは肉弾戦になるが、体格ではモラウが有利。だが、こちらには窓を開く者がある。これで留めを刺す。)

 

(一見、こちらが優っているのは体格だけの様に見えるが、こちらには隠している能力がある。この苦境を逆転してやる!)

 

モラウの逆転の覚悟をオーラの力に変える。

 

(念能力者の戦いはオーラの戦い。オーラは生命エネルギーだが、実際オーラの量を増やす要素は覚悟、要は気合だ。100%勝つ気で闘る‼︎それが念使いの気概ってもんさ!)

 

(オーラが増えた?覚悟を決めたという事か。ならば、こちらも命懸けで対応しなくては。この有利な状況でも命を落としかねん。)

 

ノヴもモラウに呼応するかのようにオーラが跳ね上がる。

 

ノヴは両手に、モラウは煙管にオーラを纏わせる。

 

今度はノヴから仕掛ける。ノヴは一撃で決めていく様な攻撃では無く、細かいジャブで相手の体勢を崩そうと狙う。

 

(こちらが大振りの煙管だからな。細かい動きはキツイぜ。)

 

だが、モラウも長年愛用している煙管を巧みに捌き、ノヴの攻撃に対処する。

 

(流石はモラウだ。簡単には切り崩せない。だが、こちらの攻撃を捌くので手一杯なのは確実。他に気を回す余裕は無い。ならば!)

 

ノヴは足にもオーラを纏い蹴りも攻撃に含める。徐々に攻撃を捌ききれなくなり追い詰められるモラウ。

 

(かなりキツイが。限界のギリギリまで諦めない。いつか隙を見せてくれると信じて耐えてやる!)

 

更にオーラを増すモラウ。膠着状態を嫌ったノヴが一気に勝負にでた。

 

(これを待ってたぜ!)

 

ノヴが足に全てのオーラを貯め、蹴りを放つ。

 

(勝った。)

 

ノヴの蹴りがモラウの煙管を弾くかに思われた。しかし、モラウはその蹴りに煙管で迎撃するのでは無く左手にオーラを纏い強化して蹴りを迎撃する。

 

ゴキィ!とモラウの左腕が折れるが、見事ノヴの蹴りの起動をそらす事に成功する。そして、それはそのままノヴの大きな隙となる。

 

(ここだ!)

 

ノヴの顔に驚愕の色が浮かぶ。

 

モラウは渾身の一撃をノヴに向かって放つ。勝負はモラウに軍配があがる様に見えた。だが................

 

(掛かった。)

 

ガスマスク越しにノヴの顔が驚愕から、勝利への冷徹な笑みへと変わる。

 

弾かれた反動を活かして、モラウの煙管をノヴの左腕が弾く。今度はモラウが大きな隙を見せる事になる。

 

(勝ったと確信した時が、人間が1番油断する瞬間。追い詰められていた状態から、1発逆転の瞬間を得る。その瞬間こそが最大の油断。モラウ、お前の敗因だ。)

 

これまでの肉弾戦は全て、ノヴの手の平の上であった。手数が多く、素早い攻撃ができ、更に窓を開く者という一撃必殺を持つノヴの攻撃を紙一重で躱し続けて、精神的にも追い詰められていたモラウ。そこに蹴りを混ぜて更に手数を増やされ、絶対絶命の状態。モラウの精神状態は限界に達する。そこに留めの大振りな攻撃はモラウの唯一の反撃のチャンスであり、逃せば敗北。そして、掴んだチャンス。ノヴの驚愕の表情から勝利を確信したモラウは、その実、己が最大の隙を晒す事となった。

 

窓を開く者(スクリーム)!』

 

両の手のひらを合わせて、両手の間に念空間への入り口の「窓」を創り出し、その窓に触れた敵の体を念空間に飛ばすことで、敵の部位を切断する。

 

(首は狙わない。この至近距離ならば、胴体を切断する。これで終わりだ!)

 

ノヴはモラウの胴体に両手を開いて挟み込もうとする。しかし、

 

『何!』

 

一向に両手が開かない。いや、開けない。よく見ると白い煙がロープ状になって、ノヴの両手を手錠の様に拘束していた。

 

(能力は使えないはずじゃ!)

 

ノヴの瞳に焦りの色が浮かぶ。

 

『くらえ!おらああああぁ!』

 

モラウのオーラで強化された回し蹴りがノヴの顔面にヒットする。ノヴは吹っ飛ばされ、壁に激突する。

 

(正直、終わったと思ったが、最後の最後で賭けに勝ったな。今回は本当に賭けに勝ってるな。もう一生分の運を使い果たしてしまったかもな。だが、もうオーラが限界だ。)

 

息が切れそうになるが、平静を装うモラウ。壁に激突したノヴの様子を注視する。

 

(渾身の蹴りは決まったが、ギリギリでオーラでガードされてちゃってたからな。)

 

案の定、ノヴは血を流しているが大きなダメージはない様子で、すぐに立ち上がった。

 

『能力が使えないものと思っていたが、とんだ見当違いだった様だな。』

 

『お前の窓を開く者(スクリーム)は、即死だからな。こっちは隠し球の一つや二つは用意してるってな!』

 

(まあ、もうオーラも体力も無いからただのハッタリだが。ハッタリついでにこいつも出しておくか。)

 

モラウの周りに三体の紫煙機兵隊(ディープパープル)が現れる。

 

『どうだ?まだやるか?』

 

(ダメージはこちらはオーラでガードしたから、ほとんど無し。相手は左腕骨折。だが、4対1。依頼内容は調査で可能であれば、他の調査員の抹殺。つまり、情報を持ち帰る事の方が優先度は高い。イラク兵にもそろそろバレる可能性が高い。仕方がない。ここはあいつの"ハッタリ"に引っかかってやろう。)

 

『仕掛けて来たのは、そちらの方だ。』

 

『お前が早く見つけていれば、仕掛けていたのはお前の方だっただろ?』

 

『...............まあいい。これ以上はやめておこう』

 

ノヴは再び地面に潜り込んだ。

 

(ふう。あいつこっちの"ハッタリ"に気付いていたな。ここは、なんだかんだ優しいあいつに感謝だな。4対1といっても、オーラがほとんど無い、文字通りのただの案山子だ。俺は左腕骨折で、ノヴはほとんどダメージ無し。あのままやりあっていれば、死んでたな。全く、こちらから仕掛けておいて、最後はハッタリで追い返すのがやっととは.............。今度はもう少し有利な場所で戦いたいもんだね。)

 

『とりあえず、帰るか。』

 

モラウは『絶』を使い、気配を消し村の建物の陰に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

オーラが尽きかけて堪らずに地面から出てくる。

 

恐らくあのまま戦い続ければ、モラウが倒れていただろう。あの場所では、やはり私が有利だ。もし、こちらが早く見つけていれば、一瞬で終わっていただろう。だが、今は情報を持って帰る事が大事だ。

 

オーラが足りない私は、4次元マンション(ハイドアンドシーク)では無く『絶』を使って歩く。歩いていると

 

「オギャー、ギャー!」

 

泣き声が聞こえてきた。赤子か?だが、毒ガスが撒かれた環境で2日経っているんだぞ?

 

最初は聞き間違いかと思ったが、声の方向へ歩くとより声は大きくなる。

 

毒ガスを逃れた建物のでもあったのか?だが、ここの建物では、毒ガスの侵入を防ぐ事は出来ないはず。

 

そして、建物の前でついた。泣き声は相変わらず聞こえる。やはり機密性が高い様には見えない。罠は無いか確認しながら、ゆっくり覗く。そして、私は驚愕する。

 

中は母親であろう死体。そして乳児。生後数ヶ月であろう。2日も飲まず食わずで生きている事が奇跡だ。いや、普通あり得ない。しかも、元気よく泣いている。

 

だが、何より目を引くのが乳児の体からオーラが出ていた事だ。それもかなりの量だ。しかも、そのオーラを全身に纏い安定させている。

 

この赤子は生まれながらにして『纒』を無意識で行なっている。毒ガスから身を守り、2日間を生き延びる生命力はこのオーラと『纏』によるものであろう。この赤子の才能は凄まじい。

 

『組織』はどんな依頼でも受ける。善悪関係なく。だが、表の社会での顔は慈善団体という事になっている。イラク兵やマスコミに見つかった場合、今回はこの村の救助活動が目的という事になる。

 

私はこの赤子を抱き上げ、走り村を出る。

 

私個人の表の思惑は慈善活動を行なった証拠が欲しいと言ったところ。そして、裏の思惑はこの天武の才を持った赤子を育てたいという気持ちだった。




今回登場したノヴとモラウは、能力と容姿が同じだけの別人だと思ってください。2人の能力も少し弄ってます。「こんな性格じゃ無いだろ」というツッコミを持った方もご了承ください。

また、ハラブジャ事件についてもネットで調べた程度の知識しか無く、大部分を私の脳内妄想で補完してあります。実際のハラブジャ事件との差異が有るかと思いますが、どうかお許しください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告