「おはよう。」
「おはよう。顔色良くなったじゃん。しっかり寝れたみたいだな。」
「ええ、お陰様で良く眠れたわ。早速、お嬢様の食事を作るわ。手伝って。」
「りょーかい。」
手伝ってくれと言われても、俺は実際に作る訳では無い。基本的に食器の用意や洗い物を洗うぐらいだ。俺は料理なんてした事無いしね。たまに野生の動物を狩って、バラして適当に焼いたのぐらいしかした事無い。あとは、ホテルとかで料理出てくるし。
咲夜はテキパキと料理を並べていく。子供には重いだろうフライパンを軽々持ってフライパンを振る。あと、背の届かないところは飛んで移動したりしている。
なんで当たり前みたいに飛べるんだ?オーラが見えるから人間。でも念能力者ではない。なら、霊力か魔力で飛んでるのか。そういや、トルコであった超能力者も飛んでたな。霊力って便利だな。そういや、咲夜は結局何者なんだろうか?瞬間移動したり、飛んでいるから超能力者か?吸血鬼の従者だから、エクソシストでは無いし。
そういや、あの紫髪の女も良くわからん奴だな。オーラは見えないけど、精孔はあるし。そんな人間は見た事が無い。「絶」って感じでも無い。
良く考えれば、吸血鬼以外よくわからん奴らばっかりだな。
「じゃあ、お嬢様に料理を出してくるわ。今見たのを見様見真似でいいから私が戻ってくるまでに作っておいて。」
考え事をしている間に完成していた様だ。
「ああ、わかった。」
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コン、コン、コン。
部屋の扉からノック音が鳴る。
『咲夜です。』
「入りなさい。」
扉から入って来たのは、私の最高の従者。仕事振りも優秀。こちらが指示を出さずともなすべき事なす先読みの早さ。何より忠誠心の大きさは最も評価できる点であろう。
「お料理をお持ちしました。」
「ありがとう。」
私はテーブルの椅子に座る。テーブルに次々と並べられる料理。
「紅茶でございます。」
私の前には、いつの間にか瞬間移動したかの様に紅茶が出されていた。
この「時間を操る程度の能力」も咲夜の魅力だ。この能力で咲夜は私の障害を払ってくれた。
肉のソテーを口に運ぶ。
思わず、口角が上がる。
私は本当に良い拾い物をしたものだ。
「咲夜。」
「はい。」
「彼は上手くやっているかしら。」
先日、見つけた新たな宝石。磨けば輝く事間違い無いだろう逸材は、御するのに苦労しそうなのが、玉に瑕だ。だが、私の妹の為にも必要な事。
「はい、トラブルもありましたが、昨日は乗り越えて見せました。」
「そう。なら今日の就寝前に彼を呼んで来て。」
「....................」
「咲夜?」
「は、はい。かしこまりました。」
一瞬ぼうっとしていた様な。まあそんな事はどうでもいい。
彼を捕まえた本当の目的をさっさと完遂しよう。
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さて、こんなもんかな。
目の前には、咲夜の見様見真似で作った料理。味のチェックはメイド長がする。
「おい。できたぞ。」
「...................」
どうした?なんか行くときより明らかにテンション下がってるな。
「おい、咲夜。」
「え、ええ。早速食べましょう。」
なんだ?お嬢様に飯が不味いとでも怒られたのか?あのお子様吸血鬼の我儘は際限がなさそうだもんな。
「味は、まあまあね。見た目は完璧だけど。」
「さすがはメイド長だな。味のチェックが厳しいね。」
「お嬢様にお出しする料理ですもの。当然よ。」
「そうかい。」
ちなみにこのチェックが、俺達の食事を兼ねてたりする。
「そう言えばさ、この館やけに広くね?外からだとこんなに大きくは見えなかったんだけど。」
「ああ、それね。それは私の能力で広げているのよ。」
「能力?」
「ええ、『時を操る程度の能力』。それが、私の能力よ。」
咲夜の顔に表情と言う記号が消えた。
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私は物心ついた時、最初にこう呼ばれた。
「53号」
「教会」や「結社」、「機関」では物心ついていない子供を連れて来る事は日常茶飯事だった。もちろん、大人の
「教会」に連れられれば駒として、正規のエクソシストの盾または、捨て駒として扱われる。
「結社」と「機関」なら、モルモットとして一生を過ごす。
どちらが良いとかは無いだろう。きっとどちらも地獄だ。
そんな「教会」に連れてこられた一人が私だった。
私はただひたすら、人外を滅する戦闘技術を叩き込まれた。虐待の様な戦闘指導。食事も碌な物を食べる事はできない。時には薬ずけにされる事もあった。血反吐を吐いた事も一度や二度では無い。元々、金髪だった私の髪は色素が抜け、銀髪になった。
私以外にも、似た様な子供達がいたけど、耐えられずに死んで仕舞う子供もいた。そんな子供達の脳を取り出して能力を保存し、解析して武器に付与する。エクソシストの「宝具」の製造法の1つの例だ。
なぜ、私はこんな目に合うの?何かいけない事をしたの?いや、何もしていない。こんな能力を持っているから?そもそも、神様って本当にいるの?いるなら、なんで助けてくれないの?神様がいないのなら、神の使いって何なの?
いつしか、私は自身が置かれている状況を呪う様になった。己の能力に憎しみを抱く様になった。
神の使い?冗談じゃ無いわ。悪魔の使いの間違いじゃ無いの?いつか必ず、お前達を皆殺しにしてやる。
エクソシストが身に付けている十字架を見ると、心の中にドス黒い感情が渦巻く。
それでも、私は己の能力を成長させ、妖怪を殺し続けた。そんなある時、私に命令が下った。
『森の吸血鬼の暗殺』
私にとって何の変哲も無い命令。私はいつも通りボロボロの黒いローブを羽織り、首から十字架を下げる。
十字架を見ると殺意だ漲る。
これで、いい。この憎しみをいつも通り敵にぶつければ、それで終わり。
私はナイフ片手に吸血鬼の館を目指す。
見えた館は夜なのに鮮明に見える程、紅が主張する館。
門番がいる様だが、関係ない。
私は時を止め、門番を素通りして館に入る。
吸血鬼はどこだ。
私は館の中を気配を消して歩く。
窓の無い館だが、室内の証明のお陰でよく見える。だが、それは相手にも同じ事。さっさと始末しよう。
私は再び時を止めて移動する。そして、1番上の階の大きな扉の前に着く。明らかにここだけ違うという感じがわかる。
部屋に入る。中には誰も居ない。留守か?
「ようこそ、紅魔館へ。」
ゾワッ
私の目の前には、10歳位に見える幼女が居た。しかし、その背中に生える翼を見て、吸血鬼だと確信する。
いつの間に目の前に!?
「ぐっ!」
いつ、不意を突かれたのか思考しようとしたが、すぐに中断した。いやさせられた。
吸血鬼の少女から強烈なプレッシャーが放たれたからだ。
全身から血が抜けていく様な感覚だった。気がつくと、私は膝をついて居た。そして、確信する。生物としての格の違いを。絶対に超えられら無い壁を。
ああ、私はここで死ぬのか。
意外とすんなりと受け入れてしまった自身の死。
いつまでも地獄が続くのなら、ここで終わってもいいかもしれない。あいつらを殺せなかったのは心残りだけど、それでもこんなくだらない世界にいるよりはマシだ。
「潔いわね。死ぬのが怖く無いの?」
「わからないわ。でも、あなたなら殺されてもいいかもと思ってる。」
私は目瞑る。私の心は完全に折れていた。
しかし、いつまでたっても何も起こらない。
目を開けると、吸血鬼の少女が私の目を覗き込み笑っていた。
「あなた気に入ったわ。その潔さ。その濁りきった瞳。神の使いでありながら、神を憎む精神。全てを気に入ったわ。」
「その時を操る力、このまま殺してしまうのはとても惜しいわ。かと言って、せっかく今は私がその命を握っているのに人間に返すのも癪。」
少女は私の頭に手を置く。
「私は誇り高き吸血鬼。レミリア・スカーレットよ。あなたは?」
「...............私に名前は無い。53号ってナンバーはある。」
吸血鬼の少女は少し考えこんで、
「十六夜咲夜。」
「え?」
「十六夜とはほんの少し月の欠けた日のことよ。咲夜はすなわち、その昨夜……つまりは満月を指している。あなたにその名前を授けるわ。だから、私の元で働きなさい。」
「あなた神を嫌っているのでしょう?なら良いじゃない。今、あなたの目の前には神の敵である悪魔がいる。私がお前を苦しみから解放してやろう。だから今、私の目の前でその十字架を捨てなさい。」
私は十字架を引きちぎった。迷いは無かった。私が仕えるべきは、神という偶像ではない。このお方にこそ仕えるべきだと思った。
『苦しみから解放してやろう』
この一言が決定的だった。
「よろしくお願いします。レミリアお嬢様。」
「ふふっ、よろしくね。十六夜咲夜。」
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「だから、私はお嬢様にお仕えするのよ。」
館の広さについて質問したのだが、かなりの大事になったな。
「何で、そんな事を教えてくれたんだ?」
咲夜は手を顎に持って行き、目を瞑る。
「...............わからないわ。きっと、貴方も話してくれたからかもしれないわね。」
違う。
直感でそう感じた。確かに産まれについて話したが、能力やどの様に成長したかを話した訳ではない。そして、俺では咲夜の気持ちを理解する事はできない。
そう、理解する事ができない。なぜなら、俺はじーさんやノヴ、モラウに囲まれて育った。咲夜は、ここに来るまで一人だ。
持っている人間では、持っていない者の気持ちは理解できない。
「そうか。」
これしか、俺が言える事は無い。下手な同情を挟む余地すら無い。でも、聞きたい事がある。
「咲夜は、ここに来た事に後悔は無いんだろう?」
「ええ、もちろん。ここに来た事はきっと間違いでは無かったと思っているわ。」
そう言って、咲夜は紅茶を飲む。
咲夜。お前は自覚しているかどうかわからないけど、お前の瞳は少しの後悔の色が見えるぞ。
「話が逸れたわね。この能力で空間を広げているの。時間と空間は密接に関わっているからね。」
「なるほどね。」
不思議だ。今までの俺なら、そんな能力を聞いたら、間違いなく戦いと思っていたけど、全然戦いって気分にならないな。
「この後、庭を案内するわ。下で待っていて。」
「ああ。」